NASAの探査機ルーシー、フライバイ予定の小惑星を長距離から撮影
ルーシーとジョハンソンが揃うのおもしろい(映画『LUCY/ルーシー』でルーシーを演じたスカーレット・ヨハンソンの姓のスペルはJohanssonで、発音はジョハンソン)。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機「ルーシー」が、小惑星族の1つであるエリゴネ族に属するC型小惑星「ドナルドジョハンソン」の撮影に初めて成功しました。ルーシーは、最終的に木星付近のトロヤ群小惑星を探査するミッションを担っています。
ドナルドジョハンソンの撮影に初成功
ドナルドジョハンソンはトロヤ群小惑星の一員ではないものの、ルーシーが本来のターゲットに向かう前に立ち寄るにはちょうどいい位置にあります。
ドナルドジョハンソンという名称は、1974年に類人猿化石「ルーシー」を発見した人類学者(ドナルド・ジョハンソン)にちなんで付けられたそう。サイズは直径約4kmと、小惑星帯に存在する小惑星のなかでも小さめ。
右側のひし形で囲まれている光がドナルドジョハンソンImage: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APLNASAが新たに公開した上の画像には、ルーシーの高解像度モノクロカメラL’LORRIが捉えたドナルドジョハンソン(画像右半分のひし形で囲まれている部分)の姿が、ぼんやりとした光として映っています。
この画像は、ルーシーから7000万km離れた位置にあるドナルドジョハンソンを撮影したもの。今後この距離はどんどん縮まっていき、今年4月20日に予定されている最接近時には、ドナルドジョハンソンから960km以内を通過するそうです。960kmは直線距離で東京と長崎くらい。宇宙でこの距離はめっちゃ近い。
その後もルーシーの旅は続く
ルーシーは2021年10月に打ち上げられ、ミッションの初期段階で小惑星ディンキネシュとその小さな衛星を観測しました。
そして昨年末、ドナルドジョハンソンへ向けて加速するために、地球をスイングバイ(重力アシスト)しました。この地球を利用した2回目の重力アシストのおかげで、ルーシーの速度が時速2万5750kmもアップしたそうです。
ドナルドジョハンソンは、ルーシーのメインミッションに向けた前哨戦ではありますが、なかなか興味深い小惑星なのだそう。ルーシーの公式ミッションサイトによると、約1億3000万年前に起きた大規模な衝突で生じた破片の1つであり、エリゴネ族と呼ばれる小惑星群の一員と考えられているとのこと。
ドナルドジョハンソンのズームアップImage: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/Gizmodoルーシーは今後2カ月間にわたってミッションの光学航法プログラム(探査機がカメラで天体の位置を測定し、航路を自律的に調整する技術)の一環として、ドナルドジョハンソンの撮影を続ける予定です。
ただ、小惑星の姿がはっきり見えるようになるのはまだ先の話。4月20日のフライバイまでは、解像度の低いかすかな光の点として映るみたいです。
ルーシーが次に向かうトロヤ群小惑星はエウリュバテスで、ドナルドジョハンソンよりもはるかに大きく、直径は約64kmもあります。このフライバイは、トロヤ群小惑星がなぜ木星の軌道前方に集まったのか、そしてその組成の特徴を解明する重要な手がかりとなります。
さらに、エウリュバテスの観測中には、その小さな衛星ケータを捉えられる可能性もあるとのこと。フライバイは2027年8月12日に実施予定です。
ルーシーは今後数年間でトロヤ群小惑星を複数回フライバイし、最終的には2033年にパトロクロスとメノイティオスという2つの小惑星を観測する予定です。
でも、それでミッション終了というわけではありません。その後も安定した軌道を維持しながら、トロヤ群小惑星の間をフライバイし続ける見込みです。
このミッションは、太陽系の形成と進化に関する貴重な情報を提供し、科学者たちの理解を深めることが期待されています。