優待投資:イオン、ソフトバンク…長期で持ちたい7銘柄と四つの注意点(窪田真之)

 株主優待制度は、個人投資家にとって、とても良い制度だと思います。なぜでしょう。それは、小口で投資する個人投資家を優遇する一方、大口で投資する機関投資家に不利な内容となっているからです。

 買い物をするとき、たくさん買うほど、割引などのメリットを受けやすくなるのが普通です。そこから連想すると、株主優待制度も、たくさん株を保有している大株主に手厚い制度であるはず、と勘違いしてしまいます。

 しかし驚くべきことに、優待制度は、大株主を冷遇、小口の個人投資家を優遇する内容となっています。そのため、機関投資家には、株主優待制度に反対しているところが多数あります。

 機関投資家にとって不利な内容になっていることを、具体的に見てみましょう。以下は、典型的な優待の一例です。

<A社の優待内容>

 期末の株主名簿に記載されている株主に以下の自社製品を送る。

保有株式数 株主優待の内容 100株以上1,000株未満 1,000円相当のグループ商品詰め合わせ等 1,000株以上 2,500円相当のグループ商品詰め合わせ等 出所:筆者作成

 こちらの優待内容から、100株当たり、どれだけの金額の優待を受けられるかを計算したのが、以下の表です。

保有株式数 100株当たりの優待 計算方法 100株 1,000円相当 1,000円 200株 500円相当 1,000円÷2 500株 200円相当 1,000円÷5 1,000株 250円相当 2,500円÷10 10,000株 25円相当 2,500円÷100 100,000株 2.5円相当 2,500円÷1,000 250,000株 1円相当 2,500円÷2,500 出所:筆者作成

 ご覧いただくと分かる通り、100株当たりの経済メリット享受額は、最小単位(100株)を保有する株主が1,000円で最大です。保有株数が大きい株主は、100株当たりのメリット享受額が小さくなります。

 このように、優待制度は、少額投資の個人株主を優遇する内容となっています。個人株主数を増やしたい上場企業が、優待制度を積極活用して、個人株主にアピールしているわけです。

 小売、外食、食品、サービス業では、個人株主がそのままお客さま(会社の製品やサービスの購入者)になることもあるので、広報宣伝活動の一環として自社製品を優待品に積極活用する企業が多数あります。

 個人投資家には、とてもうれしい制度なので、有効活用したらよいと思います。

優待投資で失敗しないための四つのポイント

 優待投資も株式投資である以上、優待内容だけを見て、株価や業績をまったく見ないで投資するのは、問題です。

 優待投資を満喫するためにも、優待投資の魅力とリスクについて、これだけは知っておいてほしい四つのポイントを、解説します。

【1】業績不振や不祥事によって株価が大きく下落する場合は「売り」 【2】配当利回りも見て総合的に有利なものを選ぶ 【3】権利取り直前に株価が大きく上昇しているものは投資を避ける

【4】優待券はぜひ使いたい、使いやすいものから選ぶ

 それでは、以下、一つずつ詳しく説明します。

【1】業績不振や不祥事によって株価が大きく下落する場合は「売り」

 優待魅力に惹かれて投資する人の一部に、株価をまったく見ない人がいます。優待投資といっても「株式投資」です。株価がどんどん下がっていく銘柄は放置すべきではありません。投資した後、業績・財務が急激に悪化する銘柄は、いったん売却すべきです。

 ただし、一時的に業績が悪化して株価が下がっているならば、話は別です。

出所:筆者作成

 構造不況に陥ってリストラを始めた銘柄や、財務が痛んでいる銘柄は売るべきです。といわれても、「一時的に悪化しているのか構造的にダメになっているのか、どうやって判断したらいいか分からない」という方が多いかと思います。そういう方にオススメは、機械的な損切りルールです。以下をしっかりやると良い結果につながると思います。

<リスク管理のための損切りルール> 投資した銘柄の株価が、買い値より20%以上、下がったら売却

 株価が買い値より20%以上下がるということは、一時的ではなく何か構造的な問題を抱えている可能性もあります。20%の損切りルールを持っておけば、半値になるまで放っておくというリスクを軽減することができます。

 20%も下がる銘柄を買ってしまったということは、買う時点で、何か重大な判断ミスをしていた可能性が高いということです。いったん売却し、頭を冷やしてから、別の有望銘柄を見つけて投資した方が良い結果につながると考えられます。

「優待目当ての投資は良くない」例として、2010年に破たんした日本航空(9201)があります。破たん前の日本航空は、業績や財務に問題がありましたが株主優待が人気だったので、優待券がほしくて投資している個人投資家が多数いました。

 破たん直前、株価が大きく下がっている時に、個人投資家の買いがたくさん入っていました。「20%下がったら売り」を徹底していれば、こういう場合でも損失を一定範囲に抑えることができます。

 なお、現在の日本航空は、財務も収益も良好で、長期投資にふさわしい銘柄と思います。ただし、航空各社がダイナミックプライシングを導入したため、航空会社の株主優待券の価値はかなり低下しました。詳細は別の機会に説明します。

【2】配当利回りも見て総合的に有利なものを選ぶ

 日本の個人投資家には、配当金よりも贈り物(株主優待)を好む傾向があります。ただ、それも度が過ぎると、非合理な行動につながります。配当金と株主優待を総合して、メリットの大きいところを選ぶべきです。

 株主優待の魅力的な銘柄と、優待はないが安定的に高い配当利回りの出ている銘柄を、両方持った方が良いと思います。

【3】権利取り直前に株価が大きく上昇しているものは投資を避ける

 魅力的な株主優待で有名な銘柄には、優待の権利取り直前に株価が急騰し、権利落ち後に株価が急落するものもあり、注意を要します。優待の権利取り前に、株価が急騰している銘柄は、投資を避けた方が良いと思います。

出所:筆者作成

 デイトレーダーで「億り人」になった人が話す投資手法に、「優待イベント投資」があります。以下の手順で、利益を稼ぐ手法です。

一、超人気の優待株を、優待の権利落ち日の2~3カ月前に買う。 二、権利落ち直前まで持つ。

三、権利落ち直前に売る(優待の権利は取らない)

 これを毎年淡々と繰り返すだけで、かなり安定的に利益が取れるといいます。つまり、権利落ち直前に株価の高い所で買った投資家が損をしていて、それを利用して稼ぐという手法です。なぜ、そんなことが起こるのでしょうか?

 優待株を権利取り直前に買うと「すぐ優待の権利が得られて得だ」と思う個人投資家が多いからです。それが分かっているため、トウシルを含めマネー情報メディアは、9月優待株を9月に特集し、12月優待株を12月に特集することが多いです。

 超人気の優待株でなければ、それでも問題ありません。また、権利取り直前に、コロナショックやリーマンショックが起こって、株式市場が急落している場合なども、問題ありません。

 優待株を買う時には、株価チャートを見ましょう。権利取りの直前に、明らかに優待人気で株価が上がっている場合は、投資を避けた方が賢明と思います。

出所:筆者作成

【4】優待券はぜひ使いたい、使いやすいものから選ぶ

 優待券には、有効期限(1年間の期限が多い)がついているものもあります。期限切れしないように注意が必要です。「ぜひ使いたい」ものから選ばないと、使わないままに期限切れしてしまうことがあります。

「ぜひ使いたい」優待券でも、「使いにくい」と期限切れになることが多いです。例えば、大好きな外食の食事券でも、近くにお店がないとなかなか使えず、気づいたら有効期限(1年間の期限が多い)が過ぎていた、となりがちです。食品の詰め合わせが自宅に送られてくる優待は無駄にすることが少ないので助かります。

 ネット上、あるいはチケットショップで売却できる場合もありますが、500円の食事券が400円でかなり割引されることが多いようです。また、汎用的ではない優待券では、チケットショップが買い取ってくれない場合もあるようです。株主優待割引券(たとえば1回の買い物が1割引になる券)には、売ることができないものが多く、その場合は、自分で使う以外にメリットを得られません。

 人気の株主優待割引券でも、有効期限までの期間が短いと、売れないことがあります。使うあてがない場合は、早めに売却した方がいいと思います。

優待を楽しみながら長期投資するのに理想的と考える7銘柄

 以上を踏まえた上で、私が優待銘柄として長期投資するのに理想的と考える銘柄は、イオン(証券コード8267)ソフトバンク(9434)KDDI(9433)JR東日本(東日本旅客鉄道:9020)JR西日本(西日本旅客鉄道:9021)JR東海(東海旅客鉄道:9022)JR九州(九州旅客鉄道:9142)などです。

 これらは収益基盤が堅固、財務に問題なく、優待廃止のリスクが低いと私が判断する銘柄です。

 ただし、これらの銘柄も経営陣の考えによっては優待が廃止されることもあり得ます。投資は、あくまでも自己の判断でお願いいたします。

 他にも、長期投資に良い優待株はたくさんありますが、今日は、代表的なものだけ7銘柄紹介しました。

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