トランプ米大統領、ゼレンスキー氏は「モスクワを標的にすべきでない」と

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画像説明, 記者団の質問に答えるトランプ米大統領(15日、ホワイトハウス)

ドナルド・トランプ米大統領は15日、ウクライナはロシアの首都モスクワを標的にすべきかと記者団に質問され、「標的にすべきでない」と答えた。また、ロシア国内の奥深くを攻撃できる長距離兵器をウクライナに提供するつもりかという質問には、「いや、そのつもりはない」と答えた。

記者団に「ゼレンスキー氏はモスクワを標的にすべきか」と質問されると、トランプ氏は「いいや、彼はモスクワを標的にすべきでない」と首を振った。

トランプ氏は、ペンシルヴェニア州へ向かう前にホワイトハウスで記者団の質問に答えた。このやりとりに先立ち、15日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、トランプ氏が今月4日にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で会談した際、ウクライナにロシア攻撃を激化させるようひそかに働きかけていたのだと伝えていた。

同紙はさらに、複数の匿名情報筋の話として、アメリカがウクライナに長距離兵器を提供すれば、ウクライナはロシア攻撃を激化できるのかと、トランプ氏が質問したのだと伝えた。

これについてホワイトハウスは同日、トランプ大統領はゼレンスキー大統領との電話で、モスクワ攻撃を促したわけではなく、「ただ単に質問しただけで、これ以上の殺害を促したわけではない」とBBCの取材に答えた。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官はさらに、「大統領は、殺害を止めさせて、この戦争を終わらせるため、休むことなく取り組んでいる」と述べた。

トランプ氏は14日、ウクライナに兵器を供与する方針を発表するとともに、ロシアが50日以内にウクライナとの停戦合意に応じなければ、追加関税を課すと警告した。また、ロシアと取引を続ける国々に対し、100%の二次関税を課す方針も示した。

今回の兵器供与には、防空ミサイル「パトリオット」を含む「すべて」が含まれるとトランプ氏は述べたが、詳細は明らかにされていない。

北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は、アメリカ、ヨーロッパ、ウクライナが合意内容の詳細を詰めている段階だと述べた。

フィナンシャル・タイムズによると、トランプ氏がゼレンスキー氏に、ウクライナはモスクワを攻撃できるか質問したのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との「悪い」電話会談の翌日だったという。

同紙は、トランプ氏がゼレンスキー氏に「ウォロディミル、君らはモスクワを攻撃できるか? (中略)サンクトペテルブルクもたたけるか?」と尋ねたのだと伝えた。

ウクライナは今年、アメリカやイギリスから供与されたミサイルでロシア国内の奥深くにある複数の標的を攻撃している。

今年1月にホワイトハウスに復帰して以来、トランプ氏はロシアによるウクライナ侵攻を終わらせると公約してきた。しかし、予想以上に難航する中でトランプ氏は、ロシア側の対応に対する苛立ちを強めている。

トランプ氏は14日、BBCに対し、プーチン氏に「失望しているが、まだ見限ってはいない」と話した。また、ウクライナでの流血を止めるようプーチン氏を相手に「取り組んでいる」とも述べた。

そして、「素晴らしい会話になるだろう。『いいね、もう少しでまとまりそうだ』と思った矢先に、彼はキーウの建物を爆破するんだ」とも述べた。

今年初めには、ロシアとウクライナの間で2回の停戦交渉が行われたが、それ以降の協議は予定されていない。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は15日、トランプ氏が関税とウクライナへの兵器供与を発表したことについて、「和平へのシグナルではなく、戦争継続のシグナル」と受け止めていると述べた。

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