任天堂がついに最高の「転売ヤー撃退策」を編み出した…企業を悩ませる「メルカリ転売」の酷すぎる有り様 無償配布のお薬手帳で儲けようとする不届き者も

人気グッズやチケットの転売が相次ぎ、企業や主催者が対策せざるを得ない状況になっている。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「転売の温床となっているのがメルカリやチケット転売サイトだ。不正に儲けようとする転売ヤーを撲滅するためには、供給側の対策はもちろん、消費者が転売品を買わないことも重要だ」という――。

コメが値上がりしている。例年は5キロ2000円ほどだったのが約2倍の値となり、下がる気配はない。

フリマアプリ「メルカリ」では、コメの転売が目立つ。もともと農家の方が出品することもあり、出品自体は原則OKだ。

しかし、値上がりと品薄によって高額転売が増え、外国人による出品なのだろうか、「タシヒカリ」という日本人には馴染みのないコメが3袋6万円で売れるという不思議な現象も起きるようになった。

メルカリに出品されていた「タシヒカリ米」

現在も、コシヒカリやあきたこまち、つや姫などのブランド米が多数販売されている。中には農家から直接買い付けたと思われる袋での出品もあり、着払いで5キロ5000円と高額なものが多いが、ほとんど売れていないようだ。

品薄だった時期に比べてスーパーなどで容易に手に入るようになった上、着払いでは割高になってしまうためだろう。なかなか売れないためか、値下げをしているものも多くなっている。

メルカリでコメを検索すると、「米の流通状況に関して、政府・行政機関の発表をご確認いただき、販売や購入については冷静なご対応をお願いいたします」と表示され、農林水産省の「令和6年度 米の流通状況について」の更新情報にリンク、注意を喚起する状態となっている。

転売されているコメ、買って大丈夫?

今年1月、茨城県結城市にあるJAの直売所に、玄米3トンを購入しようとする外国人客が訪れた。店は転売目的と考え、販売を断ったという。

見知らぬ外国人が、飲食店にコメを売りに来たという話も聞いたことがある。飲食店は米屋や食料品の卸業者に年間を通して依頼しており、その外国人からは購入しなかったようだが、転売目的で購入したコメだったと見て間違いないだろう。

転売で購入した場合、コメの品質については保証されない点には注意が必要だ。コメは生鮮食品であり、温度管理などを徹底しなければ品質が落ちてしまう。暖かくなってきたことで、コクゾウムシなどの害虫がわくことも心配される。

出所が信頼できないコメは、安いというだけで手を出すには非常にリスクが高いのだ。


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初めから転売目的で人気商品を購入する転売ヤーは、頻繁に問題となる。中には明らかに転売で生活している「プロ」がおり、組織だって行動するケースも目立つようになってきた。

東京ドーム開催のカブス対ドジャースの開幕戦シリーズと人気イラストレーター、ナガノ氏の「ちいかわ」のコラボグッズも即完売となり、転売の餌食となった。即座に定価の4〜5倍の値でメルカリなどに出品され、既に売れたものもあった。

ところが、オンラインストア「ちいかわマーケット」の公式Xアカウントが、その日の夜に、「『#ちいかわ×#MLB TOKYO SERIES』たいへんご好評につき受注生産が決定!詳細は後日おしらせ」と受注生産する予定を発表。転売しようとした出品者は軒並み値下げする羽目となった。

転売は、貴重で入手が困難なもので行われる。受注生産にすれば、メーカー側は必要量の販売ができ、ほしい人が適切な値段で購入できるようになる。転売対策としては、単純だが効果的な方法なのだ。

記名式チケット、マイナカード認証も登場

メルカリではチケット類の販売も可能だが、禁止事項として「転売目的で得たとみなされるチケット」「記名式チケットや、個人情報の登録のあるチケット」などが挙げられている。

日本三大花火大会の一つ、新潟県長岡市で毎年8月に開催される「長岡まつり大花火大会」では、このような条件を念頭に置いて、今年から有料観覧席チケットを購入者の名前を印字した記名式で販売する。観覧席は例年抽選で販売されるが、高額転売が問題となっており、対策として講じたものだ。

デジタル庁も黙ってはいない。マイナンバーカードを活用し、アイドルグループのライブチケットの不正転売を防止する実証実験を行っているのだ。マイナカードによる本人確認により、複数のアカウントによる大量購入等を防ぐことを目的としたものだ。

実証実験は、「モーニング娘。’25 小田さくらバースデーイベント ~さくらのしらべ 14~」(3月21日)と「Hello! Project ひなフェス 2025」(3月29日、3月30日)で行われた。マイナカード情報を登録した来場者は、QRコードと顔認証で専用ゲートを通過して入場した。

ひなフェス自体はマイナンバーカードを使わない紙チケットでの販売もあったため、不正転売が発生。約300枚の不正転売があり、定価9600円のところ、最も高いものでは7万円となっていた。ところが、マイナンバーカードを使った電子チケットでは、初日の第1回目公演で不正はゼロだったという。


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今年3月18、19日には、6年ぶりの日本公式戦となるMLBドジャース対カブスの試合が東京ドームで行われた。ドジャース大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、カブス今永昇太、鈴木誠也という日本人選手5人が集結するため大きな注目を集め、プラチナチケットとなった。

入手困難となった結果、チケット転売サイトである「チケット流通センター」「チケジャム」などでは、バックネット裏の指定席のチケット(定価6万円)が150万円以上の値で出品されるなど、高額転売が話題となった。

ではメルカリではどうなっているかというと、何とこの時の開幕戦使用済みチケットが販売されている。SSS席の使用済みチケットは、1万5000円で売れていた。現地で試合を観られなかったファンが、使用済みでもチケットを入手してコレクションしようというのだろうか。

1万5000円で売れたMLB開幕第1戦の使用済みチケット

普段はアメリカに行かなければ観られないメジャーリーグの試合を、何としてでも一目観たいと考える気持ちは分かる。チケットが高騰するのはもっともだろう。しかし、使用済みのチケットまで売ろうと考えるのはなぜなのだろうか。

無償配布のお薬手帳もターゲットに

TVアニメ「薬屋のひとりごと」と日本薬剤師協会がコラボしたお薬手帳も転売の標的となった。3月から薬局窓口などで無償配布されているものだが、メルカリで出品が続出。元手がゼロなので、売れた金額がそのまま転売ヤーの利益となってしまう。

アニメ公式サイトでは3月5日に「今回の取組みは、お薬手帳の重要性の訴求を目的とし、薬局をご利用の方へお渡しをさせていただいております。コラボお薬手帳の転売はおやめ下さい。また、転売されているコラボお薬手帳の購入もお控えください。」と呼びかけたが、その後も多数出品されている状態で、1000円前後の値が付けられていた。

メルカリに出品された『薬屋のひとりごと』コラボのお薬手帳


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このように効果を発揮している対策もあれば、うまくいっていないものもある。

ディズニーランドとディズニーシーでは、限定グッズを大量に買い込む外国人転売ヤーの姿が目撃され、たびたびSNSで話題になっている。

そのディズニーシーで1月から行われている新イベント「ダッフィー&フレンズ・ワンダフルキッチン」では、関連する限定グッズを販売。転売対策として、当日入園済みのチケットがある人のみ、ディズニーリゾート・アプリ内で1つ購入できるという制限をかけたのだ。

ところが、転売ヤーは入園チケットをバイトに無料で配り、購入権を獲得して限定グッズを大量に購入。開演直後にはメルカリに出品され、定価よりかなり高額な値段で転売されてしまった。対策としてはあまり効果がなかったと言えるだろう。

4月8日から始まるダッフィー&フレンズ20周年「カラフルハピネス」でも同様の対策を講じることが発表されているが、またメルカリ内で高額転売が相次ぐことになる可能性が高い。

Nintendo Switch2の「神対策」

コンサートチケットの高額転売に対して、法的措置に踏み切る企業も出てきている。旧ジャニーズ事務所が設立したタレントマネジメント会社STARTO ENTERTAINMENTは、チケット転売サイトを相手に発信者情報開示請求を行い、転売ヤーの情報を開示させた。また、今夏にも公式リセールサイトを立ち上げる方針で、転売対策に力を入れていることが見てとれる。

そしていま注目を集めているのが、任天堂が6月5日に発売すると発表した新型ゲーム機「Nintendo Switch2」だ。

日本語のみに対応する「日本語・国内専用版」と英語などで遊べる「多言語対応版」で価格を分けており、国内版は4万9980円で、海外版は6万9980円となっている。この二重価格は転売対策の可能性があると言われている。

任天堂の公式通販サイト「My Nintendo Store」で、国内版・海外版のSwitch2の抽選販売を実施。国内の家電量販店や通販サイトで買えるのは国内版のみで、海外版は公式通販サイトのみで購入可能となっている。

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