米州議会議員銃撃で4人が死傷 政治家を狙ったテロ米国で相次ぐ #エキスパートトピ
米中西部ミネソタ州で、州議会議員が自宅にいるところを相次いで銃で撃たれ、議員一人が死亡、もう一人の議員も重症を負うという衝撃的な事件が起きた。米国ではここ数年、政治家を狙った暴力事件が相次ぎ、民主主義が揺らいでいる。背景には何があるのか。
ココがポイント
ミネソタ州で14日、民主党の州議会議員の自宅が銃撃され、議員と夫が撃たれて死亡出典:テレビ朝日系(ANN) 2025/6/16(月)
ミネソタ州のウォルズ知事は(中略)「政治的動機による暗殺とみられる」との見方を示した。出典:CNN.co.jp 2025/6/15(日)
Americans believe that political violence may be justified出典:the Guardian 2023/10/25(水)
エキスパートの補足・見解
米国では近年、著名な政治家への暴力事件が相次いでいる。2020年にはミシガン州知事に対する誘拐未遂事件が起き、民兵組織などに属する十数人が逮捕された。その後も、トランプ氏の支持者らが起こした2021年1月の連邦議事堂襲撃事件、2022年10月のペロシ連邦下院議長宅襲撃事件、昨年のトランプ氏銃撃事件など、社会を揺るがす事件が続いている。
背景にあるのは政治家への暴力を許容する風潮の広がりだ。非営利組織RRRIが2023年8月に行った世論調査では、23%が「状況が進むべき方向から大きく外れた場合は、親の愛国者は国を救うために暴力に訴えるのもやむを得ない」と回答。同調査で過去最高の割合となった。ワシントン・ポスト紙とメリーランド大学による2021年12月の共同世論調査でも34%の米国人が「場合によっては政府への暴力は正当化される」と答えている。
いずれの調査でも共和党支持者やトランプ支持者のほうが暴力を許容する割合が高い傾向が見られることから、米メディアは、政敵に対し「処刑されるべきだ」などと平然と言い放つトランプ氏の過激なレトリックが、政治家への暴力を誘発する一因になっているのではないかとの見方を示している。
米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。