ラブホテル面会で相次ぐ苦情、異例の対話集会開催 小川晶・前橋市長が招いた2カ月の混乱

前橋市の小川晶市長=前橋市議会庁舎

前橋市の小川晶市長が市幹部職員の既婚男性とホテルで複数回面会した問題で、市議会は27日、小川氏の同日付の辞職に同意した。2カ月前に週刊誌報道で問題が明るみに出てから、小川氏は「不適切な行為」と認めつつ、男女関係を否定して続投を訴えてきたが、市議会の不信任決議案提出を前に方針転換を余儀なくされた。この問題に関する小川氏と市民の公開対話集会開催など混乱に見舞われた前橋市政の2カ月を振り返る。

釈明の1週間

ホテルでの面会に関する一報は9月24日夕、インターネットで流れた。同日午後7時半からの臨時記者会見に現れた小川氏は憔悴(しょうすい)しきった表情で事実を認め、謝罪した。ただ「男女関係はなかった」と繰り返した。翌日から市役所には苦情と問い合わせの電話が鳴りやまず職員は対応に追われた。

9月定例会終盤を迎えていた市議会では26日の本会議で小川氏が謝罪。その後、全議員が集まり小川氏の説明を聞いたが、質疑のない20分ほどの説明に納得する議員はいなかった。

小川氏は昨年2月の市長選で現職を破って初当選し、市政初の女性市長となった。当時、国政は政治資金パーティー収入不記載で自民党に逆風が吹き、市政では元副市長らが逮捕される談合事件があり、政治不信を募らせていた市民に小川氏は清新さで「市政刷新」を印象付けた。それだけに、今回の問題は「クリーンな市民目線」で築いてきた信頼を、著しく傷つけた。

小川氏が面会相手の男性職員との「相談場所」に選んだのは車で乗り付ける典型的なラブホテル。面会回数も10回以上に及び、群馬県の山本一太知事は「男女関係がないと言われても誰も信じない」と繰り返した。市議会も30項目に及ぶ質問・意見書を提示し、10月2日に小川氏を呼んで改めて説明を受けたが、納得できず、翌日、進退決断を迫った。

もっとも、この時期は小川氏への敬意から、「辞職勧告」や「不信任決議」まで踏み込まず小川氏に判断を委ねた。だが小川氏の意向は支援者らの意見も入れて「続投」へと傾き、市議会は態度を硬化させていく。

続投表明、深まる溝

発覚後に自らの意思で異動していた男性職員が10月10日、市議会に詳細な経過の説明文を提出。「さすがにマズイかと思ったが、人目を避けるためラブホテルを選んでしまった」「男女関係は一切なかった」などと述べ、14日には職員の妻も「夫の説明を信じる」とのコメントを寄せた。男女関係を否定する当事者のコメントが揃い、小川氏は17日、自身の給与を50%減額して続投する意向を表明した。

だが、市議会は納得しない。苦情電話に対応した職員の延べ人数や人件費、苦情の総数や中身など市政の混乱ぶりをデータとして市にまとめさせ、21日、小川氏を再び呼んで続投表明の理由などをただした。そして22日、ただちに辞職するよう求める勧告書を主要7会派が提出。「給与の50%カットで信頼回復はできない」とした。

しかし小川氏は続投の意向を変えず、「対話集会で市民の意見を聞き、私の意見も聞いていただいて判断したい」。溝は深まった。

商工会議所も進退決断要請

11月に入り、小川氏サイドは地元FMラジオ局主催の形で公開対話集会を計画。一方で、前橋商工会議所が10日、市政の混乱が前橋の都市ブランドを損ない企業活動に悪影響を与えているとの懸念を表明し、小川氏に進退決断を要請した。

経済界からの異例の行動に市議会も動き13日、7会派が市長に再度の辞職を勧告。さらに27日に開会する定例議会までに決断しない場合、不信任決議案を提出すると迫った。7会派の議員数は市議会の8割以上を占め、提案されれば可決される。

直後の14、15の両日、公開対話集会が開催され、参加者からは辞職を求める声や「男女関係がなかったと証明できるのか」といった厳しい意見が出た。続投を求める支持者と口論する場面もみられ、問題が市民の間に分断を生んでいることを印象付けた。

市民の批判や市議会の勧告を「重く受け止める」とするだけで具体的判断を避けてきた小川氏。不信任決議案には「可決したら考える」としてきたが、定例議会開会2日前の25日、市議会の富田公隆議長に退職願を提出した。自身のX(旧ツイッター)には「市議会からいただいたご意見、市民との対話でいただいたお声を真摯(しんし)に受け止め、悩み抜いた末の判断」とつづっていた。(風間正人)

「けじめをつけることが最善と判断」 小川晶・前橋市長が辞職理由を説明

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