フジテレビ問題は新局面入りか?:ダルトン案の否定が意味するもの

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フジテレビ問題に動きが出てきそうです。6月25日の株主総会までひと月強となる中、フジ側が株主総会に向けた次期取締役候補を発表、ダルトンからの株主提案を真っ向から否定した形になっています。

フジテレビHPより

フジメディアホールディングスは3月27日に次期役員の入れ替えを発表、また清水賢治氏の代表取締役社長就任を発表しています。一方、ダルトンは4月16日に独自の株主提案としての12名の役員候補を発表し、SBIの北尾吉孝会長をトップとする案としました。メディアはこれを受け、北尾氏の経営姿勢や堀江貴文氏、村上ファミリーの動向を探る展開となっていました。

その後、フジの金光氏や社外取締役が候補から落ちたこともあり、今回新たに4名を選任、その中には元ファミリーマート社長の澤田貴司氏や元森ビルのCFOの堀内勉氏などが名を連ねる形となり、ダルトンが掲げた候補12名は一人も入らない提案となりました。

一言で言えばフジと株主が完全に離反し戦いに挑むことを宣言したようなものです。

ダルトンのジェームス ローゼンワルド氏が近いうちに来日し、対策を練ると発表しています。北尾氏は剛腕とされ、相手が戦う気ならこちらも戦うと本気の姿勢を示しています。また北尾氏はフジ問題とは別としながらもSBIネオメディアHDという会社を立ち上げ、メディア事業に本格参入することを発表しています。プロキシーファイトになる可能性も指摘されています。

これをどう見るか、です。

あくまでも個人的直観に近いのですが、フジ側は相当の自信があるからこそ、ダルトンの株主候補を全員却下したのだとみています。つまり、フジは既に一定の株主への説得工作は終わっており、過半数を取れる見込みがあるという勝算故のダルトン案の否定だとみています。

ダルトン側が仮に村上ファミリーの持ち分を味方につけても過半数には遠く及びません。フジの安定株主がフジ側についても、読めないのが個人株主などの浮動層ですが、浮動層が求めるのはプロキシーファイトであり、それにより株価が刺激されることを期待しています。ダルトン側は既に高値になってきているフジへ更なる追加出資を迫られ、正直厳しい戦いになるはずです。

北尾氏は「あと5%ぐらいは買える」と言ってますが、金融事業をしている北尾氏が直接それをするのは株価操縦とみなされないこともなく、北尾氏の金融事業という基盤に傷がつくリスクを取るのは正しいとは思えないのです。とすればダルトンによるプロキシーファイトのみが正当化されるわけで果たして勝算がどこまであるのか、その計算次第だと思います。

ではダルトンは一体フジに何をどこまで求めているのか、ここが今一つわからないのです。フジそのものの体質改善なのか、業績のテコ入れなのか、はたまたメディア改革でしょうか?フジの体質改善については清水氏を除き、総入れ替えになっているし、同社も体質改善の具体案の発表はしています。

業績のテコ入れとなればメディアの事業環境への挑戦になりますが、日本は地上波無料放送という社会であり、北米とは全く相違しています。私は日本の地上波放送はほとんど見ないし、どの放送局も似たような番組を似たような時間に押し付けてくることに辟易としているのですが、影響力は大きく、そこに広告主との蜜月の関係があり、総務省もそれを簡単に変える気がないという強固な構造問題が立ちはだかります。よって業績の根本的な立て直しはたやすくないとみています。故に不動産事業がないと困るというのがフジの言い分かもしれません。ダルトンが不動産事業を切り離したい意向を持っていることは個人的には賛成ですが、いばらの道であることもこれまた事実なのであります。

私はメディア業界が既に戦国時代に突入しており、世論や人々の興味が変化する中でオールド メディアの地上波放送がどう対応できるか、真綿で首を絞められている状態から何時覚醒するかだろうと思っています。最近ネットフリックスで新幹線大爆破の映画を見たのですが、こんなレベルのものをポンポン作られてしまうとエンタメに限って言えば、テレビを見る価値は半減します。またフジの往年の大ヒット「101回目のプロポーズ」も今なら海外版でネフリで見られるのです。Youtubeもレベルが高いものが増え、テレビを見る世代は確実に上の年齢になってくるでしょう。その変化にフジがどう対峙できるのか、それ次第だと思いますが安定株主は変わりたくないと思っているのかもしれません。

あとひと月で何が起きるか、実に興味深いところですが、私にはこの戦いにもはや妙味がなく、ダルトンは引くとみています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月20日の記事より転載させていただきました。

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