小児敗血症性ショックにはアド?ノルアド?

 小児の敗血症性ショックにおいて、初期の昇圧薬の選択にはコンセンサスがなく実臨床では大きなばらつきが存在する。米・Boston Children's HospitalのMatthew A. Eisenberg氏らは、既知の心機能障害がない敗血症性ショック患児において、アドレナリンを初回昇圧薬として使用することがノルアドレナリン使用と比べ予後改善に関連するか否かを検討する後ろ向きコホート研究を実施。30日以内の重度腎障害イベント(MAKE30)などで比較した結果をJAMA Netw Open2025; 8: e254720)に報告した(関連記事「診断基準が大きく変化した小児敗血症」)。

生後1カ月~18歳の患児が対象

 対象は、救急外来(ED)受診から24時間以内に昇圧薬持続投与が必要な敗血症性ショックと診断され、アドレナリンまたはノルアドレナリンの投与を開始した、既知の心機能障害を有さない生後1カ月~18歳の患者。2017年6月~23年12月に小児専門病院であるBoston Children's Hospitalで治療を受けた患児のデータを収集し、傾向スコアによるマッチングを行った。

 主要評価項目はMAKE30とし、副次評価項目は30日以内の院内死亡、3日以内の死亡、腎代替療法の必要性または持続的腎機能障害、気管挿管、人工呼吸管理日数、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用、入院期間、集中治療室滞在期間とした。二値変数にはχ²検定、連続変数にはWilcoxonの順位和検定を用いて評価した。

MAKE30はアドレナリン6.1%、ノルアドレナリン3.6%

 最終的に231例が解析対象となった。年齢中央値は11.4歳(四分位範囲5.6~15.4歳)で、女児の割合は54.6%、既往歴に敗血症の素因がある児は142例(61.5%)だった。初回投与昇圧薬は、アドレナリンが147例(63.6%)、ノルアドレナリンが84例(36.4%)だった。

 アドレナリン群では、147例中9例(6.1%)がMAKE30に該当し、30日以内に6例(4.1%)が死亡した。一方、ノルアドレナリン群では、84例中3例(3.6%)がMAKE30に該当したが、死亡例はなかった。

 治療選択の逆確率重み付け後、主要評価項目であるMAKE30には両群間で有意差は認められなかった。一方、2:1の傾向スコアマッチングを用いた二次解析では、ノルアドレナリン群に比べアドレナリン群で30日死亡率が高かった(0% vs. 3.7%、リスク差 3.7%ポイント、95%CI 0.2~7.2%ポイント)。

 なお、いずれの群でも投薬を必要とする頻脈は発生しなかった。

 Eisenberg氏らは「アドレナリン投与群で30日死亡率が高かったが、MAKE30については両群間で差は認められなかった。小児敗血症性ショックにおいて、ノルアドレナリンを第一選択の昇圧薬とすべきかを判断するには、今後の前向き研究による検証が必要である」と結論している。

医学ライター・小路浩史

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