ソフトバンクG、AI投資で借り入れ中心の資金調達を検討-関係者

ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏は数週間前、トランプ米大統領の横に立ち、オープンAIとの人工知能(AI)合弁事業「スターゲート・プロジェクト」の発表に立ち会った。孫氏は今、5000億ドル(約76兆円)以上と見積もられる同プロジェクトのコストを賄う方法を見つけようとしている。

  事情に詳しい複数の関係者によると、孫氏はプロジェクトファイナンスと呼ばれる手法を検討している。石油・ガスのプロジェクトで用いられることがある手法だ。この戦略は、アラスカ横断パイプラインのような資本集約的な大規模インフラプロジェクトに利用され、通常はアンカー投資家の初期投資が少なめで済むことや、プロジェクトの予想キャッシュフローに基づく長期ファイナンスを利用できるといった大きな利点がある。

  ソフトバンクGは、そうした資金調達構造の幾つかの側面をスターゲートに取り入れる方法を探っている。複数の関係者が非公開情報を理由に匿名を条件に明らかにした。スターゲートは、複数のデータセンターと発電プロジェクトにまたがる見込み。議論されているシナリオの一つは、ソフトバンクGとオープンAI、オラクル、アブダビ首長国の投資会社MGXが全体のコストの約10%に相当する分を拠出し、残りの大部分をデット市場で調達するといったものだと、関係者2人は述べた。

  1月に大々的に発表された同プロジェクトで、ソフトバンクGとオープンAIは数十ギガワット相当のデータセンター容量の構築を推進する。計算能力の導入としては史上最大規模となり得る。米テキサス州アビリーンに最初のデータセンター用地を確保したことに加え、同州内で追加用地の選定にも近づいており、さらに十数余りの州でのプロジェクトも視野に入れている。

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  孫氏はトランプ大統領に対し、1000億ドルを直ちに支出する計画だと伝えた。しかしスターゲートの大部分について、ソフトバンクGは必要な資金をどこから調達するかまだ固めておらず、追加の投資家を募るため協議を行っている。

  話し合いは、まだ初期段階にある。そうした中で、中国のスタートアップ企業、DeepSeek(ディープシーク)が開発した低コストでオープンソースのAIモデルの出現により、今後は競争がはるかに激しくなり、収益性の低下も予想される。オープンAIを巡っては、同社を統括管理する非営利組織にイーロン・マスク氏率いる投資家グループが買収案を提示した報じられている。

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  理論上では、合わせて10%のスターゲート株式は約500億ドルに相当することになる。ソフトバンクGとオープンAIの出資額は、両社が均等に出資し、オラクルとMGXの拠出はそれより小さくなると仮定すると、それぞれ約150億ドルから250億ドル弱の範囲となる。

  ブルームバーグは以前、ソフトバンクGがオープンAIに最大250億ドル投資することで協議していると報じたが、関係者1人によれば、そうした協議はまだかなり初期の段階にある。この協議については英紙フィナンシャル・タイムズが先に報じていた。

  しかし実際には、スターゲートは数十億ドル規模の複数プロジェクトの集合体となる。株式資本のプールに加え、資金調達の大部分はプロジェクトごとに実施されると一部の関係者は説明。ファイナンスの構造は非常に複雑になるとした。

  日本経済新聞の報道によると、データセンターや発電施設を利用する事業者らにも出資を募ることで事業総額の1割程度を確保し、残りはプロジェクトごとに外部投資家から資金を調達する構想だという。

  スターゲートの資金調達を担当するソフトバンクGは、優先株式やメザニン債、シニアバンクローンを活用して必要な資金を調達する可能性がある。優先株式とデットの割合は、それぞれのプロジェクトにどれだけの投資家が参加するかに左右されるが、半導体かサーバーのみに照準を定めたプロジェクトになる可能性もあると、関係者1人は述べた。

  プロジェクトファイナンスをモデルとすることで、一つの可能性としては普通株10%、優先株とメザニン債20%、シニア債70%とする案が考えられると、別の関係者は述べた。もう一つのシナリオとしては、優先株とメザニン債を40%、シニア債を50%とする案も考えられるという。いずれも、パイプラインや発電所、橋、通信ネットワークなどのインフラプロジェクトで用いられてきた高レバレッジ構造だ。

  ソフトバンクGは、日本の超低金利へのアクセスおよび個人の債券投資家の間での人気で負担を軽減できる可能性がある。

  まだ決定は下されておらず、協議は流動的だ。ソフトバンクGはより多くのパートナーに呼び掛けを行っており、市場の状況次第ではアンカー投資家が最終的に他の資金調達方法を選ぶ可能性もあると関係者は述べた。こうした資金調達構造が実行可能かどうかについては疑問が残る。プロジェクトファイナンスの条件は、事業のキャッシュフロー予測に基づいて一部決定されるが、AIサービスからのキャッシュフローは依然として仮定に基づいたものだ。

  ソフトバンクGの広報担当者はコメントを控えた。オープンAIのサラ・フライアー最高財務責任者(CFO)は最近のブログ投稿で、「段階的で構造化された投資アプローチ」を取る予定だと説明。オープンAIとソフトバンクG、オラクル、MGXが最初の株式出資者となるが、さらにパートナーを呼び込む計画だとし、「われわれは強固で弾力性のある資本基盤を構築するため、多様な機関投資家グループと積極的に関与している」と述べた。

  孫氏とオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は先週、石破茂首相と面会し、その後の韓国訪問でサムスン電子の李在鎔会長と面会した。

  ソフトバンクGがどのようにスターゲート・プロジェクトの資金を調達かは投資家や債権者にとって最大の関心事だ。

  同社は12日に10-12月(第3四半期)決算を発表する。ブルームバーグが集計したアナリスト3人の予想平均では、純損益は約1550億円の赤字となる見通し。

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原題:SoftBank Explores Debt-Heavy Financing for $500 Billion AI Push(抜粋)

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