クレアチン、脳にも効果の可能性 筋トレで人気のサプリ

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クレアチンというアミノ酸は、何十年も前からサプリメントとして、筋肉を増やしたいボディービルダーやアスリートたちに愛用されている。しかし新たな研究で、記憶力の強化や、睡眠の改善、メンタルヘルスの維持といった運動以外の効果も明らかになってきている。

「クレアチンは最も研究が進み、最も効果があるサプリメントのひとつです」と話すのは、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の運動生理学教授、アビー・E・スミス・ライアン氏だ。「クレアチンは魔法ではなく、実際に効果があります。そこに複数のメカニズムが働いている可能性があるので、運動以外でも注目されています」

クレアチンは筋トレマニア向けのものと思っているなら、考えを改めるべきかもしれない。その科学的根拠を見ていこう。

クレアチンは自然界にある物質で、体内で3つのアミノ酸から作られる。肝臓、腎臓、膵臓(すいぞう)で1日あたり1〜2グラム生成されるほか、赤肉や乳製品などのタンパク質が豊富な食品からも、同じくらいの量を摂取できる(1ポンド、約450グラムの牛肉に2グラムほどのクレアチンが含まれている)。

バランスのとれた食生活を送っていれば、十分摂取できているはずだ。しかし、動物性タンパク質が不足している場合は、3〜5グラムのクレアチンをサプリメントで取るといいという。

ほとんどのクレアチンは筋肉に蓄えられ、エネルギーを得るために使われる。しかし、脳や心臓といった組織のエネルギー源になることもある。

「クレアチンが細胞に入り込むと、クレアチンリン酸に変わり、すぐに分解されてATP(アデノシン三リン酸)になります。このATPが、細胞内の主なエネルギー通貨になります」。カナダ、ブランドン大学の体育学科准教授、スコット・フォーブス氏はそう話す。

一時的に活力をもたらすカフェインとは異なり、クレアチンは長期にわたってエネルギーを保持できる。「筋肉のエネルギーが増え、よりハードなトレーニングができるようになります」

効果があるのは運動中だけではない。2024年3月に学術誌「Nutrients」に発表された研究によれば、クレアチンを補給すると筋肉の損傷が減り、運動後の回復が早まる。

「クレアチンには、抗炎症作用や抗酸化作用もあるので、筋タンパク質が損傷しにくくなり、タンパク質の合成も促進されます」とスミス・ライアン氏は話す。トレーニングの量を増やせるようになるのはそのためだ。

フォーブス氏によると、体が激しい運動、睡眠不足、精神的な緊張などのストレスを受けると、細胞に余分なエネルギーが必要となる。クレアチンが活躍するのはそんなときだ。

2024年2月に学術誌「Scientific Reports」誌で発表された研究によると、疲れたときにサプリメントを1回摂取するだけでも、認知能力が向上する可能性がある。実験では被験者を睡眠不足にしており、それによるストレスで細胞に与えられた影響がクレアチンの摂取で解消されうることが示された。

2024年8月に学術誌「Nutrients」に発表された別の研究でも、クレアチンを摂取することで、総睡眠時間を改善できることがわかっている。高齢者の認知能力の低下を遅らせる可能性についての研究もある。

「眠れない、または脳が働いていないと感じている方には、何かが必要なのです。そこで一番役立つことが多いのが、クレアチンです」とスミス・ライアン氏は話す。

クレアチンは、メンタルヘルスの問題にも対処できる。2023年6月に学術誌「Sports Medicine」に発表されたレビュー論文によると、クレアチンによって抗うつ薬の効果が高まる。

また、2020年2月に医学誌「Translational Psychiatry」に発表された、米全国健康・栄養調査(NHANES)のデータによると、食生活の中でクレアチンを多く摂取している人ほど、うつになるリスクが少なかった。

特に女性には、筋肉の回復にとどまらないメリットがありそうだ。加齢に伴う骨密度の自然な低下への対策に役立つ可能性も示唆されている。骨粗しょう症のリスクがある閉経後の女性にとって重要なことだ。

さらに、血管を保護する効果もあるようだ。2024年に学術誌「Clinical Nutrition ESPEN」および「Nutrients」に掲載された2つの研究が、クレアチンと心臓血管系の機能の改善を関連付けている。

どんなサプリメントにも言えることだが、クレアチンは万能薬ではない。スミス・ライアン氏によると、サプリメントを取る前に、体がクレアチンを作れるだけの十分なタンパク質を取る必要がある。クレアチンは一般的に安全だが、腎臓に障害がある人は、まず医師に相談しよう。

「クレアチンはリスク対効果が優れています。安価で、吸収性が高く、これといった副作用もありません」と氏は言う。

特によく心配されるのは、体重の増加だ。スミス・ライアン氏によると、これは主に、エネルギーの生産に使う水分が細胞に蓄えられることによる。フォーブス氏は、「最近の報告では、平均で1キロ弱ほど体重が増えることがわかっています」と言う。「嫌がる人もいるでしょうが、私はこれを体組成の改善と見ています。脂肪が少し減り、筋肉が増えているからです」

クレアチンが脱毛を引き起こすという俗説もある。最近このテーマについての研究を終えたフォーブス氏は、「クレアチンが脱毛の原因でないことは確認できます」と言う。

クレアチンはどの年代や活動レベルの人にも有効だという点で、フォーブス氏とスミス・ライアン氏は同意見だ。スミス・ライアン氏は、「寝たいだけ寝られていて、心配になったり意気消沈したり頭がぼうっとしたりすることがないなら、クレアチンの効果をおそらく実感できないでしょう。そんな人は見たことはありませんが」と言う。

すぐに効果を実感したい人にスミス・ライアン氏がすすめているのは、5日間にわたって1日4〜5グラムを摂取する「準備期間」を設けることだ。その後は、5〜10グラムを毎日続けて摂取する。

フォーブス氏によると、脳に最適な摂取のしかたはまだ研究中だという。しかし、2017年に学術誌「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に発表されたレビュー論文によれば、少なくとも5年は1日30グラムまで摂取しても、十分許容範囲に収まるようだ。

文=Ashley Mateo/訳=鈴木和博(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2025年2月25日公開)

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