ガザの援助配布拠点に群衆が殺到、少なくとも20人死亡と運営団体が発表

画像提供, Reuters

画像説明, この出来事での死者は、ガザ地区南部ハンユニスのナセル病院に搬送された(16日)

アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」は16日、パレスチナ・ガザ地区南部の援助配給所で「混乱と危険を伴う殺到」が発生した中で、食料を求めていた少なくとも20人が死亡したと発表した。

GHFによると、ガザ南部ハンユニスにある同団体の配給所で発生した「悲劇的な出来事」で、19人が次々と折り重なり倒れて死亡したほか、1人が刺されて死亡したという。大勢が一気に殺到して次々と倒れた事態についてGHFは、「群衆の中にいた複数の扇動者が引き起こした」と考えていると説明した。また、この扇動者たちは、ガザのイスラム組織ハマスの関係者だと思われると、GHFは述べた。

GHFが自分たちの配給所で死者が出たのを認めたのはこれが初めて。

一方、ハマスが運営するガザの政府メディアオフィス(GMO)は、GHFの説明を否定し、GHFが犯罪を「隠蔽(いんぺい)」しようとしていると指摘した。

これらの発表について、現時点で独立した検証は行われていない。

ハンユニスにあるナセル病院は、催涙ガスを吸い込んだことによる窒息や圧迫によって配給所で死亡した21人の遺体を受け入れたと明らかにした。

同病院でけがの手当てを受けていたマフムード・フォジョさん(21)は、GHFの配給所に到着した時、契約業者らが「ゲートを閉じる」のを見たと、ロイター通信に説明。人々は押し合いになり、倒れて踏まれる人もいたとした。

アフメド・アブ・オムラさんは、群衆を誘導する狭い通路の近くに立っていた武器を持った契約業者が、「トウガラシ爆弾」を発射したと話した。

ハマスが運営するGMOは、狭い通路に何千人もいた状態で契約業者がゲートを閉じ、人々に向かって催涙ガス弾と実弾を発砲したことで、圧死が引き起こされたとした。

一方、GHFの広報担当は、この主張は「まったくの虚偽」だとし、「催涙ガスは使わず、群衆への発砲もなかった。限定的にトウガラシスプレーを使ったが、人命損失が増えるのを防ぐためだった」と述べた。

また、刺された人物は、武装した「ハマス関係者」に対処しようとした医療関係者だったと付け加えた。

GHFが5月下旬に活動を開始して以降、援助を求めるパレスチナ人が殺害される出来事が、毎日のように報告されている。目撃者によると、犠牲者の多くはイスラエル軍によって銃撃された。

国連人権高等弁務官事務所の報道官は15日、過去6週間で、ガザ南部および中部にあるGHF拠点4カ所の周辺で、少なくとも674人が殺害されたと明らかにした。また、国連やその他の支援団体の車列が通る道路でも、さらに201人の殺害が確認されているという。

GHFはこれまで、拠点周辺で致命的な事件が発生したことを否定しており、国連が、ハマスが運営するガザの保健省から得た「虚偽かつ誤解を招く」数字を使用していると非難していた。

GHFは、イスラエル軍の管理区域内に設置された拠点から援助物資を配布するため、民間の警備会社を利用している。

一方、国連は、その運営体制に倫理的な問題があるとして、GHFとの協力を拒否している。

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