人の動きをまるごとコピーするヒューマノイドロボットを開発、遠隔操作で同時再現

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 人がしゃがめばロボットもしゃがみ、手を上げればロボットも同じように動く。

 スタンフォード大学とサイモンフレーザー大学の研究者たちが開発した「TWIST」システムは、人間の全身の動きを遠隔操作でリアルタイムにそっくりそのままヒューマノイド(人型)ロボットに反映させる新しい技術だ。

 まるでコピーロボットのようで自分が2人いるかのよう。脚や足、腰、肘といった全身の関節を細かく制御し、人間のような器用さを再現できるのだ。

 将来的には、こうした操作データを大量に集めることで、ロボットが自律的にスキルを学ぶ足がかりにもなり得るという。

 スタンフォード大学とサイモンフレーザー大学の研究者たちは、人間の全身動作をリアルタイムでロボットに再現させる遠隔操作システム「TWIST(Teleoperated Whole-Body Imitation System)」を開発した。

 TWISTでは、操作者の動きをモーションキャプチャ(人の動きをセンサーやカメラで計測・記録する技術)で精密に記録し、それをAIが処理することで、二足歩行のヒューマノイド(人型)ロボットが同じ動きをそのまま実行できる。

 モデルとなる人が腕を伸ばしたりしゃがんだりすれば、ロボットもそれに合わせて同じ動作を行う。まさに“コピーロボット”のような動作が可能となる技術だ。

 研究の第一著者であるヤンジエ・ゼ氏は、「人間の動作を正確に取得し、それをロボットが実行可能な命令に変換する。我々のシステムは従来の技術に比べ、全身制御の精度がはるかに高い」と述べている。

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 研究チームは中国のUnitree Robotics社のヒューマノイドロボット「Unitree G1」で、実際にTWISTを動作させ、リアルタイムの遠隔操作に成功した。

 この実験により、操作者の全身動作データだけで脚、足、腰、膝、肘といった全身の部位を制御できることが確認された。

この成果は、他のヒューマノイドロボット、たとえばBooster Robotics社の「BoosterT1などにも応用可能とされている。

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 TWISTは理論上、通信回線が安定していれば遠隔地からでも操作可能だが、リアルタイム性を重視する以上、通信の遅延が課題となる。

 都市内や同一国内での使用には適しているが、国際通信のように遅延が大きい場合は動作の精度に影響が出る可能性がある。

 さらに、現時点では大型のモーションキャプチャ装置を必要とし、操作者への視覚・触覚のフィードバックも備えていない。

 これらの課題を解決するために、今後はRGBカメラを用いた姿勢推定への移行や、より頑丈なロボットハードウェアの開発が進められる見込みだ。

 研究チームは今後、TWISTを使って人間の動作データを大規模に収集し、それをもとにロボットが自律的にスキルを学ぶ「基礎モデル(ファウンデーションモデル)」の訓練に活用する方針だ。

ゼ氏は「我々は人型ロボットを真に知的な存在にし、現実世界で実際の作業をこなせるようにしたい」と語っている。

 この研究は論文プレプリントサイト『arXiv』(2025年5月5日付)に掲載された。

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