AI時代に求められる「論理力」――ハーバード大『オレオ公式』で鍛える思考と文章の力

文章生成AIを使えば、メールや会議資料はあっという間にできる。

仕事効率化ができて、苦手な文章作成もしなくていいから一石二鳥――しかし、本当にそれでいいのでしょうか?

文章を書くこと(ライティング)には、自分の思考をまとめたり相手に伝わるよう論理的に組み立てたりと様々な作業が含まれます。

つまりライティングは、ビジネスに必要な思考力を鍛えるためのトレーニングになるのです。

とはいえ、ライティングに苦手意識をもつビジネスパーソンが多くいるのも事実。

そこで本記事では、ライティングに力を入れるハーバード大学が考案した「オレオ公式」という作文術をご紹介します。

簡単に論理的な文章を作ることができ、ビジネスシーンでも活用しやすい方法です。

ハーバード大学も重視するライティング

「文章はAIが考えてくれるから、人間がわざわざ書く必要はない」

「AI時代のいま、ライティングの能力は無駄じゃないか」

このように考える人もいるでしょう。

しかし、ハーバード大学では1872年から現在に至るまで、150年以上にわたってライティング教育に力を入れています。学部に関係なく、1年生の必修科目として学術ライティングの基礎を教えているのです。*1

では、なぜ自分の力で文章を書くことが大切なのでしょうか?

テキサス大学オースティン校の歴史学教授であるスティーブン・ミンツ氏は、ライティングが「私たちに内省、思考、分析、そして推論を促すプロセス」だと述べています。

だからこそ、どの分野であってもライティング課題を出すことが重要なのです。ライティングは、学生の思考力や分析力を高めてくれます。たとえば、データや証拠の評価、仮説の立て方、予測や一般化といった力が養われます。 *2

※Chat GPTにて翻訳

つまりライティングは、正しい文法や魅力的な文章を書くことではなく、分析したり考えをまとめたりすることに意味があるといえます。

文章におこす過程で考えるという作業が、思考力や分析力のトレーニングになるのです。

とはいえ、忙しいビジネスパーソンがいちから文章を考えるのは時間がかかり過ぎるという現実的な問題もあるでしょう。

「オレオ公式」とは?

そこでおすすめしたいのが、「オレオ公式」です。

「オレオ公式」は、先述したようにライティング教育に重きを置くハーバード大学で受け継がれているメソッドです。

「オレオ公式」を使えば誰でも「論理的かつ説得力のある『伝わる文章』」が書けるようになります。*3

📌 4つの項目で成り立つオレオ公式

  1. Opinion(意見の主張)
  2. Reason(理由や根拠)
  3. Example(具体例の提示)
  4. Opinion(意見の強調) *3

4項目の頭文字をつなげると「OREO」となります。

理由と具体例を自分の意見ではさむ構図を、クッキーにクリームがサンドされているお菓子のオレオになぞらえて「オレオ公式」と呼ばれているのです。

スッキ氏は、「頭の中にある考えをオレオ公式の順番に当てはめて並べていくと、客観的で、具体的に」なるため、文章を書くときや書きたいことを整理したいときに使えると述べています。

また、「先に要点をまとめ、結論(主張)から書き始めるため、情報を的確な場所に並べることができ、すっきりとしてわかりやすい」文章になる点もメリット。*3

文章を書くときに何から書けばいいかわからない人や、言いたいことがうまくまとめられず悩んでしまう人は、オレオ公式を活用すると解決しそうです。

「オレオ公式」ビジネスシーン活用例3選

オレオ公式は、メールや企画書などのビジネスシーンにも幅広く応用できます。

ここからは、ビジネスにおけるオレオ公式の活用例を3つご紹介しましょう。

【例1. メール】社内の周知事項を一斉メールで送る文面

Opinion:業務の引継ぎ方法をドキュメントで統一します。

Reason:従来は口頭やチャットが中心でしたが、抜け漏れや認識のズレが起こりやすいためです。

Example:先日も、納期に関する引継ぎ情報の漏れがあり、対応が2日遅れました。

Opinion:再発防止のためにも、ドキュメントベースでの引継ぎにご協力ください。

【例2. プレゼン】社内で新企画をプレゼンする文面

Opinion:当社の専門性を活かした、サブスクリプション型のオンライン講座企画を提案します。

Reason:教育・スキルアップ系の需要が高まっており、定期的な収益とブランド強化が期待できるからです。

Example:たとえば、A社は自社ノウハウを活用した月額制の講座を展開し、わずか半年で登録者1万人・月商5,000万円を達成しています。

Opinion:収益性を高め、ブランド強化につなげるためにも、我々の知見を活用したサブスクリプション型オンライン講座が有効だと考えます。

【例3. 提案】クライアントへWebサイト全面リニューアルを提案する文面

Opinion:Webサイトの全面リニューアルをご提案します。

Reason:現状のサイトではスマートフォンでの表示に最適化されておらず、離脱率が高い傾向にあるためです。

Example:先日サイトの分析を実施しましたが、直近3ヶ月のモバイル離脱率は72%に達していました。

Opinion:集客につながるWeb活用のためにも、今がリニューアルの好機と考えます。

このようにオレオ公式を使えば、自分の考えを論理的にわかりやすくまとめることができます。前出のミンツ氏が述べるライティングの肝「内省、思考、分析、そして推論」を行ないながら、スピーディに文章を組み立てられるでしょう。*1

AIも上手に活用しよう

自分の力で文章を書くことは大切ですが、生成AIがまったくの「悪」というわけではありません。付き合い方が大切なのです。

ライティングでは自分の考えをまとめ、伝わるように整理するという思考の過程が重要なので、それ以外の部分でAIの力を借りるといいでしょう。

技術ライターで『エンジニアのためのChatGPT活用入門 AIで作業負担を減らすためのアイデア集』(インプレス)などの著書をもつ大澤文孝氏は「生成AIの良き使い方は作業をさせること」だと述べています。

具体的には、「データの整形や加工、生成」、「要約や書き換え」などです。*4

ライティングにおいては、具体例として提示するための他社のデータをまとめたり、論文を要約したりといった作業をAIに任せられそう。

また自分で自分の文章をチェックするのは意外と難しいので、文法的な間違いや表現の重複に関してはAIに確認させてもよさそうです。

AIを上手に活用して、思考や分析にじっくりと時間を使いましょう。

***ビジネスに必要な思考力を鍛えるためにはライティングが必須。文章を書くのが苦手だと感じている人は、ぜひ「オレオ公式」を活用してみてください。作業面ではAIを上手に活用しつつ、ライティングに力を入れて思考力を上げていきましょう。

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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