狙われた6億円、盗難車で逃走 背景に暴力団など組織か 「カネ」と「人」追い実態解明へ
東京・上野と羽田で多額の現金を運搬中のグループが襲撃された事件の発生から、5日で1週間。警視庁は、別々の方角に逃走したとみられる2つの襲撃犯の行方を追うが、羽田と同じ被害者が渡航先の香港でも襲われるなど、背景には国境を越えて暗躍する犯罪組織の存在が浮かぶ。執拗(しつよう)に狙われた現金の性質も徐々に明らかになってきており、捜査当局はカネと人の動きの両面から実態解明を急ぐ。
夜更けの「襲撃」
「4億2千万円を、3つのスーツケースに分けて運んでいた」
中国籍の40代男性は1月29日午後9時半ごろ、東京都台東区東上野の路上で、仲間とともにスーツケースや、リュックサックなどに入れた現金を車に積み込んでいたところ、3人組に突然、催涙スプレーを噴射されるなどして襲われた。襲撃犯の1人は「リュック、リュック」と片言の日本語を話し、荷物の取り合いになったという。
3人組はスーツケースに入った約4億2300万円を強奪。軽乗用車に乗り込んで現場を離れたが、50代男性をはねるひき逃げ事故を起こした。その後、白のアルファードに乗り換えて逃走。車にはそれぞれ運転手がおり、少なくとも5人で逃げたとみられる。
その約2時間半後の30日午前0時10分ごろ、羽田空港第3ターミナル付近の駐車場でも、約1億9千万円を運搬中の50代男性が、4人組に催涙スプレーを噴射される事件が起きた。4人組は何も取らずに姿を消したが、同日午前、香港に渡った男性らは両替店付近で再び襲われ、5千万円超を強奪された。関与したとして20代の日本人らが現地当局に逮捕、起訴されている。
捜査線の疑問
上野、羽田の2事件は当初、同一犯の可能性もあるとされていたが、逃走経路などから別々の襲撃犯による犯行とみられる。
羽田事件の4人組が乗った白のセダンは、横浜経由で神奈川県座間市方面に逃走。30日正午ごろ、厚木市内の河川敷で同型車が乗り捨てられているのが見つかった。襲撃時につけていた偽造のナンバープレートは外され、車両全体に消火剤が散布されていた。指紋を消すなど証拠隠滅を図ったとみられる。車両は1月下旬、埼玉県春日部市の月極駐車場から盗まれたものだった。
上野事件で逃走に使われたアルファードは、千葉や茨城を経由し、栃木方向に走り去ったという。この車は暴力団関係者の名義だった。
別々の方角へ逃走した襲撃犯だが、いずれも多額の現金を運搬するグループの動きを把握していたとみられ、催涙スプレーを使う手口も共通する。警視庁は、逃走車両の特徴などからいずれも暴力団などの組織が関与しているとみて、協力者も含めた関係者の洗い出しを進めている。
狙われたカネどこから
2事件で狙われた計約6億円超もの大金は、どこから来て、何のために運ばれていたのか。
羽田事件の被害者の1人で、両替商の30代男性は「ゴールドを売却して得た現金を、両替のため毎日のように香港に運んでいた」と説明。上野事件の被害者も、「貴金属店から預かった日本円を香港に運び両替をする仕事をしていた」としており、いずれも香港を目的地としていた。
なぜ、香港なのか-。外貨両替に詳しい一般社団法人「全国両替商防犯連絡会」の遠藤智彦代表理事によると、香港は「世界の金融市場が集約されるエリア」。為替レートを選んで差益を得やすく、「香港ドルをはじめとする外貨や暗号資産など、より高額なレートの資産に換えたりして、利益を積み重ねていたのではないか」とみる。
近年は金の価格が高騰する中、消費税がかからない海外から日本に金を不正に持ち込み、日本国内で売却することで消費税分10%の「利ざや」を稼ごうとする動きもみられるという。遠藤氏は「一連の流れに、複数の業者や組織が介在している可能性もある」と分析した。(海野慎介)