「今後は中国人を出禁にする」ラーメン店の投稿が波紋、外国人向けの”二重価格”は許されるのか?

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大阪のラーメン店が「中国人客が店内でトラブルを起こしたため警察を呼んだ」「外国人トラブルの9割が中国人なので、今後は中国人を出入り禁止にする」とXに投稿し、波紋を広げた。

この投稿を受けて、SNS上では「特定の国籍を名指しして入店を拒否するのは差別ではないか」との批判が相次いだ。一方で、トラブルの背景には、店側が外国人客に対して日本人客とは異なる価格を提示する、いわゆる「二重価格」を設定していたことが原因だとの指摘もある。

X上に投稿された店のメニューとされる画像を見ると、日本語表記で「チャーシューめん」の「並盛」が1028円とされているのに対して、英語表記の「Braised Pork Ramen」は「Normal」で1900円となっており、2倍近い価格差が確認できる。

このため、「英語と漢字の両方を理解できる中国系の客であれば、価格差に気づきトラブルになるのは自然だ」といった声も上がっている。

店側はその後、YouTubeに動画を投稿し、「日本語が理解できない方に複雑なメニューを説明することが難しい」と説明。日本語が読めない客には、別の内容と価格のメニューを用意していると説明して「外国人差別」を否定した。

では、こうした対応は、差別禁止や消費者法の観点から問題はないのだろうか。金田万作弁護士に聞いた。

外国人に対する「二重価格」には合理的理由が必要

──店側はYouTubeの動画で「外国人を差別したわけではない。日本語が理解できる人とできない人を区別した」と説明していました。ただ、結果としては外国人客と日本人客で価格が異なる「二重価格」になっていると考えられます。このような区別は法的に問題ないのでしょうか。

外国人であることを理由に入浴を拒否したケースで、外国人一律禁止は不合理な差別だとして、不法行為(民法709条)が成立し、慰謝料の支払いが命じられた裁判例があります。

そのため、合理的な理由がないまま、外国人に対して一律に高い価格で販売すれば、法的に問題となる可能性があります。

ただし今回のケースでは、店側が一定の理由を説明していますし、入店そのものを拒否しているわけではなく、単に価格が高く設定されているにとどまるのであれば、契約自由の原則や営業の自由の観点から、不法行為とまで評価されない可能性が高いと考えられます。

●二重価格を設定する場合は「その言語で理由の説明」を

──二重価格を設定する場合、日本語と外国語を併記するだけでは、価格差の理由がわかりにくいこともあります。こうした表示方法は、法的な問題になる得るのでしょうか。また、トラブルを防ぐためには、どのような工夫が望ましいでしょうか。

消費者法の規制として考えられるのは景品表示法ですが、同法が禁止しているのは、二重価格などによって一般消費者に著しく有利であると誤認させる「有利誤認表示」です。

今回のケースでは、あえて外国語メニューを高く設定することで日本語メニューを安く見せようとするものではないため、特に問題にはなりません。

ただし、トラブル防止の観点からは、外国語メニューを高く設定するのであれば、その外国語で、あらかじめ高くなっている理由や背景を明記し、メニューの冒頭などで説明しておくことが望ましいと思います。

●特定の国籍によって「出禁」は人権侵害になる可能性

──店側は「中国人とトラブルになることが多い」という理由で、中国人を出入り禁止にすると投稿しました。ただ、その後の動画では「現時点で中国人の方を出入り禁止にしているわけではない」「法律の問題などもあるのでこれから検討していく」と説明しています。仮に、特定の国籍を理由に入店を一律に拒否した場合、どのような法的問題が生じ得るのでしょうか。

先ほどの裁判例を踏まえると、特定の国籍を理由とする一律の入店拒否に、合理性が認められるか、社会的に許容されるかが判断基準になります。

公衆浴場のような公共性の高い施設と異なり、通常の飲食店ではより店主の意向がより尊重されます。しかし、安易に特定の国籍の入店を一律に拒否することは差別にあたり、合理性を欠くと評価されやすいです。

「中国人とトラブルになることが多い」という点についても、実際に国籍をどこまで正確に把握できているのか、他の外国人や日本人とのトラブルと比べどの程度多いのか、一律拒否以外の代替手段はないのか、といった点を慎重に検討する必要があります。

そうした検討を欠いたまま、特定の国籍のみを理由に排除すれば、人格権侵害として不法行為が成立する可能性があります。

【取材協力弁護士】金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。投資被害やクレジット・リース関連など複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセの情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成し集団訴訟を行った。事務所名:笠井・金田法律事務所

事務所URL:http://kasai-law.com

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