反トランプで団結のカナダ、保守牙城アルバータ州は例外-独立機運も

石油資源に恵まれたカナダ西部アルバータ州では、28日に実施される連邦総選挙を前に、悲願達成の好機が突然奪われたかのようなムードが広がっている。

  同州は最大野党・保守党の牙城で、カナダでは数カ月にわたり、同州カルガリー出身で保守党党首を務めるピエール・ポワリエーブル氏が次期首相の有力候補と目されていた。与党・自由党政権の気候政策に不満を募らせる同州住民は、規制緩和と石油産業支援を進める存在としてポワリエーブル氏に期待を寄せていた。

  ポワリエーブル氏が首相になれば、ようやく連邦政府が正当な敬意をアルバータ州に払うようになるとの思惑もあった。世界有数の埋蔵量を誇る石油資源で潤うアルバータ州はカナダ経済の主要エンジンで、輸出全体の25%を占める。一方で、比較的若く裕福な人口構成のため、同州は連邦政府から受け取る資金よりも支払う税金の方が多いとの不満が強い。 

  ところが、トランプ米大統領の一方的な関税発動と「51番目の州」発言で状況が一変。直近の世論調査によると、カーニー首相率いる与党・自由党が勝利する可能性が高まっている。カナダ国民が反トランプで団結する中で、アルバータ州だけが怒りを募らせる構図となっている。

  カーニー氏が勝利すれば、州内でくすぶる分離・独立運動に火をつけるとの声もある。アンガス・リード研究所の最近の世論調査によると、自由党が勝利した場合に、カナダから離脱して独立国家を形成することを望むアルバータ州民は30%にのぼる。

  「再び自由党政権が誕生すれば、この国にとって非常に不幸なことだ」と語るのは、カルガリーの投資会社オースピス・キャピタル・アドバイザーズを率いるティム・ピッカリング氏だ。「国家が一丸となるべき今、むしろ分断が進むだろう。私は分離主義者ではないが、多くの人が我慢の限界に達しているのは理解できる」と話す。

  フランス語圏のケベック州が分離をちらつかせることで連邦政府から譲歩を引き出してきたことを、羨望の眼差しで見る州民も多い。両州とも自治拡大を求めているが、その理由は異なる。

  マウント・ロイヤル大学の政治学教授デュエイン・ブラット氏は 「ケベック州の主張は主に言語と文化に関するものだ」と指摘する。「一方で、アルバータの問題は突き詰めればお金の話だ。多くの資金を有しているのだから、より多くの権限を持つべきだという根本的な概念がある」という。

  ポワリエーブル氏は自由市場と小さな政府を掲げる理念を持ち、これはアルバータ州で広く支持されている。一方、カーニー氏も同州都エドモントンで育つなど、地元と深い関わりを持つ。選挙戦では、北米プロアイスホッケーのナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)チーム「エドモントン・オイラーズ」への情熱を語るなど、地元への愛着をアピール。3月のエドモントンでの集会では「この街が今の私を形成してくれた」と語った。

原題:Anti-Trump Rage Unites Canada, Except in Rich and Upset Alberta(抜粋)

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