イスラエルの人権団体、自国のガザ攻撃を「ジェノサイド」と非難 国内初の動き

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画像説明, イスラエルの主要な人権団体「ベツェレム」と「人権のための医師団・イスラエル」は28日、エルサレムで記者会見を開き、パレスチナ・ガザ地区におけるイスラエルによるジェノサイド(集団虐殺)を非難する報告書を発表した

イスラエルの二つの主要人権団体は28日、パレスチナ・ガザ地区での戦争におけるイスラエルの行為は、パレスチナ人に対するジェノサイド(集団虐殺)に該当すると非難した。

人権団体「ベツェレム」と「人権のための医師団・イスラエル」はこの日、過去21カ月間のガザでの戦争に関する調査報告書を、それぞれ発表した。

長年にわたりイスラエル国内で活動してきた両団体は共同声明で、「この暗黒の時代において、物事をありのままに表現することが特に重要だ」とし、「この犯罪行為を直ちに停止するよう求める」と訴えた。

イスラエルに拠点を置く人権団体が、イスラエルをジェノサイド行為で非難するのは初めて。

イスラエル政府のダヴド・メンサー報道官は、2団体の非難を強く否定した。

「我々の防衛部隊が標的としているのはテロリストだ。民間人を標的にしたことは一度もない。ガザにおける苦しみの責任はハマスにある」と、メンサー報道官は述べた。

28日にエルサレムで開かれた記者会見で、ベツェレムのユリ・ノヴァク事務局長は、「我々がこの報告書を作成することになるとは、想像もしていなかった」と語った。

ベツェレムの88ページにおよぶ報告書は、「ガザ地区におけるイスラエルの政策とそれがもたらした恐ろしい結果、ならびにガザ攻撃の目的に関するイスラエルの高官や軍指揮官の発言を検証した結果、イスラエルがガザ地区のパレスチナ社会を意図的に破壊するための協調的な行動を取っているという明確な結論に至った」と指摘している。

「病院を標的とした攻撃や、医療支援や避難の妨害、医療従事者の殺害および拘束によって、ガザの医療・生命維持システムが意図的かつ体系的に解体されていることを示す証拠がある」と、報告書は指摘している。

PHRIの事務局長ガイ・シャレヴ博士は、「ジェノサイドを前にして、沈黙するという選択肢はない。強調しておきたいのは、ジェノサイドに立ち向かうことは、法的・政治的機関だけの責任ではないということだ。(ジェノサイドに)立ち向かうには、世界の医療コミュニティーからの緊急の行動が求められる」と述べた。

両団体は、2023年10月7日のイスラエルに対する「ハマスによる恐ろしい犯罪的な攻撃」が、イスラエル社会に恐怖と集団的トラウマを引き起こす引き金となったと指摘している。

しかし一方で、イスラエル政府はハマスへの報復として、「過激思想の促進と、ガザのパレスチナ人の非人間化」に基づく活動を展開してきたとも指摘した。

このことは、ガザの全てのパレスチナ人に責任があると主張する、政治指導者や軍指導者が地上で戦う兵士に向けて使用した言葉に表れていると、報告書は説明している。

PHRIは、同団体が特定した行為は「戦争に伴う偶発的なものではなく、パレスチナ人を一つの集団として標的にする意図的な政策の一部」であり、1948年採択の「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」(ジェノサイド条約)第2条に定義された少なくとも三つの行為に該当すると結論づけた。イスラエルは同条約の締約国。

同条約はジェノサイドを国民的、人種的、民族的、または宗教的な集団の全体または一部を破壊する意図を持って行われる行為と定義。それを防ぐことを国家に義務づけている。

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画像説明, 国連によると、ガザに36ある病院のうち、今も一部が機能しているのは18病院だという。画像はガザ北部ベイトラヒアのカマル・アドワン病院から避難するパレスチナ人(2024年5月21日)

多数の国際人権団体や国連の人権専門家、学者らもまた、イスラエルがガザでジェノサイドを行っていると非難している。

国際司法裁判所(ICJ)も、南アフリカが提起した、イスラエル軍がガザでパレスチナ人に対するジェノサイドを行っているとの訴えを審理している。

イスラエルは、この訴えは「まったく根拠のないもの」で、「偏った、虚偽の主張」に基づいたものだと主張している。

PHRIのガイ・シャレヴ事務局長は、今回の報告書の内容を受けて、PHRIとベツェレムの職員がイスラエル国内で言葉や身体的な暴力にさらされるかもしれないと懸念していると、BBCに語った。

「それでも、我々の訴えに耳を傾けてくれる人がいることを願っている」と、シャレヴ氏は付け加えた。

ベツェレムのノヴァク事務局長は、イスラエルがジェノサイドを行っているという結論に至るまでの過程は困難を極めたと述べた。

「自国や、自分たちが属する集団が実際にジェノサイドを行っていると真に理解することは、非常に困難な、精神的かつ個人的なプロセスだ」と、ノヴァク氏は述べた。

「それは、自分たちが何者であるかという基本的な理解を打ち砕くものだ」

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を攻撃し、約1200人を殺害し、251人を人質にとった。これを受けてイスラエルは、ガザで戦争を開始。ハマスが運営するガザ保健省によると、それ以降、ガザでは5万9900人以上が殺害されている。同省の統計は、国連をはじめとする国際機関が最も信頼できる死傷者数の情報源として引用している。

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