妊娠中の女性、銃による殺人の発生率37%上昇 米研究
新たな研究によれば、妊娠中の女性は妊娠していない女性に比べて、銃器による殺人の被害率が37%高いことがわかった/SDI Productions/iStockphoto/Getty Images
(CNN) 2020年4月9日、シャーリー・スカボローさんはいつものように祈りの電話をかけた後、勤務先へ向かうと、別の電話がかかってきた。バージニア州リッチモンドの警察からで、末娘のフランチェスカ・ハリススカボローさん(31)が前夜、殺害されたという知らせだった。
警察が見つけたフランチェスカさんの車はエンジンがかかったままだった。妊娠3カ月だったフランチェスカさんは心臓を2発撃たれていた。
「心の準備ができていなかった。何もコントロールできなくなった」とスカボローさんは語った。「頭の中が真っ白になった」
フランチェスカさんは米国で広がる深刻なトレンドの一例だ。調査によると、妊婦の死因の第1位は殺人だが、新たな研究では、特に銃が関わる場合、妊婦は他の出産可能年齢の女性よりも危険にさらされていることがわかった。
今回の研究は米医学誌「JAMAネットワーク・オープン」に掲載されたもので、18年から21年にかけて出産可能年齢の女性7000人超の殺人事件を分析した。その結果、妊娠中の女性は妊娠していない女性に比べて銃による殺人の発生率が37%高く、妊娠に関連した殺人の3分の2以上に銃が使われていた。
銃の存在は親密なパートナーによる殺人の主要な危険因子として知られている。今回の研究では、州レベルの銃所有率が1%上がるごとに、全死因殺人率が6%増加し、妊婦における銃による殺人率が8%増加することが示された。これは他の要因を調整した後でも変わらなかった。
「銃の入手しやすさが少しずつでも増加すれば、妊婦の殺人リスクが目に見える形で増加する可能性がある」と研究者は指摘した。
論文の共著者で、ハーバード大学医学部の小児科・救急医療の准教授、ロイス・リー博士は「考えてみれば驚くことではない。銃が手に入りやすくなれば、一般に殺人の危険性が高まるのは当然だ」と述べた。「そのため、銃をなくすか、少なくとも数を減らせば、妊娠中の死亡者も大幅に減る可能性が高いと考えられる」
妊娠中の女性の殺人事件の割合が最も多かった年齢層は20~24歳。妊娠していない女性では25~29歳が最多だった。被害者の多くは、妊娠の有無にかかわらず黒人だった。
「これらの研究結果は、妊娠中の殺人のリスクが個人の要因だけでなく、より広範な不平等や構造的な人種差別のシステムによって形づくられていることを示唆している」とリー氏は述べた。「したがって、必要なのは個人レベルの解決策だけではなく、政策レベルでの緊急の変革だ」
論文の著者は、安全な銃の保管法や家庭内暴力に関与した人物の銃器の所持禁止を勧めている。
多くの州では、最終的な保護命令を受けた人物の銃器の購入や所持を禁じている。ジョンズ・ホプキンス銃暴力解決センターの法律・政策ディレクターのケリー・ロスカム氏は、緊急保護命令が出た場合にも銃器を引き渡すよう義務づけるべきだと述べた。ロスカム氏は今回の研究に関与していない。
「通常、その命令手続きの初期段階が、親密なパートナーや家族からの暴力を受けている人々にとって最も危険な時期であることが多い。なぜなら、それは通常、個人が加害者から離れようとしていることを示す最初の兆候だからだ」とロスカム氏は語った。
スカボローさんは、もっと多くの女性がフランチェスカさんと同じ運命を避けられるよう独自のプログラムに取り組み、家庭内暴力や虐待を受けた女性の支援を目的とする非営利団体を設立した。
スカボローさんは亡くなったフランチェスカさんの日記を読むうちに、フランチェスカさんが成功して幸福そうに見えても、若いころから自信を持てない問題を抱えていたことに気づいたという。そのため、12歳以上の少女を対象に、自己肯定感と自信を育むためのプログラムも立ち上げた。
スカボローさんは毎年、フランチェスカさんの命日が近づくと少女と女性のためのプログラムを開催している。
「こうすれば彼女は決して死なずに済む。私たちはいつでも誰かを助けようと努力できる。娘の死は、私にとっての教師になった。私の人生を変えた。もう以前のようには戻れない」(スカボローさん)