USスチールのアクティビスト、新鋭電気炉売却の意向-全米鉄鋼労組
- 株主アンコラ、ビッグリバー製鉄所売却目指す-高炉更新の資金確保
- 全米鉄鋼労組はアンコラの計画を精査-USスチールは批判を強める
全米鉄鋼労働組合(USW)は、米鉄鋼メーカー、USスチールのアクティビスト(物言う株主)が同社の新鋭電気炉を売却したい考えだと明らかにした。米実業家アンドルー・カーネギー氏の時代にさかのぼる組合操業施設の大幅更新に向け、資金を確保する意向という。
この株主は米アンコラ・ホールディングス・グループ。USスチールはアンコラに対する批判を強めた。同社は日本製鉄による141億ドル(現在のレートで2兆1100億円)規模の買収計画を6月半ばの期限までに完了させることを目指している。
USWのデービッド・マッコール会長とマイク・ミルサップ交渉委員長は組合員宛ての書簡で、アンコラの計画を精査していると明記するとともに、日鉄による買収に反対する立場をあらためて表明した。アンコラはUSスチール株保有比率が1%に過ぎないが、経営立て直しに向け取締役会刷新と最高経営責任者(CEO)交代を強く求めている。
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書簡には、アンコラの計画通りとなればアーカンソー州のビッグリバー製鉄所を売却し、それで得られた資金をペンシルベニア州モンバレー、インディアナ州ゲーリー、イリノイ州グラニットシティにある高炉に投じると記されていた。書簡はブルームバーグ・ニュースが確認した。
アンコラがビッグリバー製鉄所売却で想定する資金額は書簡に言及がないが、日鉄は昨年、同製鉄所と一部採掘事業について、92億ドルの評価額で買収を提案した。
ビッグリバー製鉄所は電気炉で自動車用の製品を生産しており、同社の従来型の一貫生産施設より高効率で低コストとされる。
書簡では「アンコラは、ビッグリバー製鉄所を売却する意向を表明した。同施設は最初からこれまでも現在も、組合操業施設の脅威になっている」とし、「組合が唯一懸念しているのは、組合操業施設の長期的な存続だ。それによって、強力な国内鉄鋼産業が将来にわたって確保される」と指摘した。
原題:USW Says Ancora Aims to Sell Big River to Fund US Steel Revival(抜粋)