対人地雷は人道的? 禁止条約から脱退した欧州5カ国 深刻な背景とは
毎日新聞 2025/12/5 05:00(最終更新 12/5 05:00) 有料記事 3208文字
ロシア軍が設置した地雷=ウクライナ南部ヘルソン州プラブディネ村で2023年2月11日、宮川裕章撮影
一般人を被害に巻き込むリスクが高く、影響が長期間にわたる恐れがある対人地雷。
1997年にカナダの首都オタワで調印され、99年に発効した対人地雷禁止条約(オタワ条約)は、その削減と被害者の減少に大きく貢献してきた。
だが今年6月以降、欧州の5カ国が、相次いで条約からの脱退を国連に通知した。
一体どのような事情があるのか。許される行為なのか。
ドイツ連邦研究・技術・宇宙省が支援する研究プロジェクト「防衛技術と倫理」を主導するネイサン・ウッド研究員に聞いた。【聞き手・ブリュッセル宮川裕章】
<主な内容> ・ロシアの脅威 ・地雷の「価値」 ・CCWとは
・オタワ条約の今後
――エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国とフィンランド、ポーランドがオタワ条約からの脱退を国連に通知しました。この5カ国は、なぜ対人地雷を必要としているのでしょうか。
◆ロシアによる侵攻の脅威が高まっているからだ。
軍事力でロシアに劣る5カ国には、対戦車地雷や他の兵器だけではロシア軍の侵攻を阻止できないとの懸念がある。
特にロシアはウクライナ侵攻の当初、戦車や装甲車両による作戦で苦戦したこともあり、歩兵を中心とした戦術を採用している。
対人地雷の目的は、敵兵の通過を阻止するか、その代償を大きくするか、あるいは敵がその地域を目標として選択しないようにすることにある。
大量の地雷だけでは敵を必ずしも止められないが、敵の移動速度を低下させることで、反撃の準備時間を稼ぐことができる。
地雷使用の是非
――5カ国による対人地雷の使用は、倫理的に正当化できるのでしょうか。
◆まず、脅威の対象となっているロシアはオタワ条約の締約国ではない。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW…