ロシアのキーウ攻撃続く ドローンやミサイルで多数死傷
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、ロシアが10日に首都キーウを大々的に攻撃し、少なくとも2人が殺害され、16人が負傷したと発表した。今回の夜間攻撃では、ミサイル18発とドローン(無人機)約400機が主に首都を標的としていたという。ロシアはこの前日にも無人機728機とミサイル13発による、過去最大規模の攻撃を実施している。 住民の睡眠は約3時間にわたって妨げられ、無人機とミサイルが首都に殺到した。キーウ市当局によると、ドローンの残骸が集合住宅の屋根に落下し、市内各地で火災が発生した。 国連によると、6月のウクライナにおける民間人の死傷者数は過去3年間で最多となり、232人が死亡、1343人が負傷した。 ウクライナ警察は10日早朝、ロシアのドローンがキーウ市内の8地区を直撃したと報告した。 キーウ市軍政責任者のティムール・トカチェンコ氏はメッセージアプリ「テレグラム」で、「集合住宅、車両、倉庫、事務所、非住宅施設が燃えている」と述べた。 イーホル・クリメンコ内相は、68歳の女性と地下鉄駅にいた22歳の警察官が死亡したと確認した。 ポジルスキー地区では、一次医療センターが「ほぼ完全に破壊された」と、キーウのヴィタリー・クリチコ市長が明らかにした。 キーウ市当局は市民に、空襲警報が解除されるまで避難を続けるよう呼びかけた市内に「煙が充満している」ため、帰宅後も窓を閉めるよう市民に指示した。 ウクライナ空軍は夜を通じて、複数地域でロシアによるドローン攻撃の脅威があると報告したが、キーウ以外での被害状況は明らかになっていない。 ロシア軍は今回の攻撃についてコメントしていない。 この攻撃は、8日夜から9日にかけてウクライナ全土を襲った過去最大規模の空爆に続くもの。前日の攻撃では、ドローン728機とミサイル13発がウクライナへ撃ち込まれた。 国連ウクライナ人権監視団(HRMMU)によると、ロシアは6月に前年同月の10倍にあたる「ミサイルおよび徘徊(はいかい)型」兵器による攻撃を行い、少なくとも16の地域とキーウで民間人が死傷した。 HRMMUのダニエル・ベル代表は「ウクライナ全土の民間人が、過去3年以上で最も深刻な苦しみに直面している」と述べ、「長距離ミサイルとドローンによる攻撃の急増が、前線から遠く離れた地域の民間人にも、死と破壊をもたらしている」と警告した。 ウクライナ国家非常事態庁(DSNS)によると、9日深夜には東部前線近くのコスチャンティニウカでロシアの空爆により3人が死亡した。 ゼレンスキー大統領は「ロシアは明らかにテロを強化している」と述べ、「制裁と圧力を加速させ、ロシアにその代償を感じさせなくてはならない。パートナー諸国は兵器製造と技術開発への投資を急ぐ必要がある」と訴えた。 ゼレンスキー氏は10日、迎撃ドローンと防空装備の追加資金についてパートナー諸国と協議すると述べた。 ロイター通信は9日夜、アメリカ政府が一時停止していた一部の兵器供与を再開したと報じた。それまでアメリカは数日、防空体制に不可欠な武器の輸送を停止していた。 今回の攻撃は、外交的打開の見通しがいかに遠のいているように見えるか、浮き彫りにしている。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は9日、「外交手段は尽きた」と述べた。ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官も、今週初めに同様の見解を示していた。 アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対していら立ちを募らせている様子で、「プーチンはこちらに、やたらとたわごとを投げてくる。彼はいつも我々に優しいが、それは結局、意味がないんだ」と8日、記者団に述べた。 ペスコフ氏は「トランプ氏の物言いはだいたい厳しい、かなり荒っぽい表現を使う。ロシア政府はこの件について比較的冷静だ」と述べた。 米ロ両首脳は定期的に連絡を取っているが、停戦に向けた具体的な進展には至っていない。トランプ氏はかつて「1日で停戦を実現できる」と述べていた。 トランプ政権は今年1月の就任以来、ロシア制裁を警告してきたが、これまでのところ実際の制裁は発動していない。 米連邦議会は現在、ロシア産の石油やガスを購入し続ける中国やインドなどの国々に制裁を科す超党派法案を審議中。トランプ氏はこれを支持するかもしれないと話している。 ウクライナを支援する諸国の関心は、ウクライナの防衛とロシアへの制裁強化に再び向けられており、欧州では新たな包括的制裁パッケージの策定が進められている。 ローマではウクライナ復興に関する2日間の会議が10日に始まり、77カ国の代表が参加している。対ロ制裁に加え、ウクライナの防空体制強化も議題となる可能性がある。 11日には、マルコ・ルビオ米国務長官がマレーシアで開催される首脳会議の場で、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相と会談する予定だ。 ロシアのプーチン大統領は、2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始した。 (英語記事 Deadly new Russian drone and missile attack hits Kyiv)
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