ハルク・ホーガンが「MAGA」で見る夢、ビール事業で億万長者に

1980年代に人気を博した伝説的プロレスラーのハルク・ホーガン氏は今年7月、米大統領選に向けた共和党全国大会のステージに登壇。着ているシャツを引きちぎる名物パフォーマンスを披露し、トランプ前大統領を「ヒーローだ」と称賛した。

  翌日、ホーガン氏(71)の姿はとあるビーチバーにあった。全米の注目を再び浴びた機会を利用して、自身が立ち上げた最新の事業「リアル・アメリカン・ビール」を売り込むためだ。

   ホーガン氏がビール事業を開始したのは、共和党全国大会の1カ月前。ビール大手アンハイザー・ブッシュの主力ビール「バドライト」はトランスジェンダー俳優を広告に起用したことで保守層から反発を受けており、ビール市場には「参入のチャンス」があったと同氏は語る。

  過去数十年にわたって色々な商品を手掛けてきたホーガン氏は、今なお大ヒット商品を探し求めている。プロレスで多くを稼いだが、高額な慰謝料を払う離婚も経験した。これまでにエナジードリンク、レストラン、自身の名前を冠した電気グリルなど、数々の事業を立ち上げてきた。

  フロリダの自宅からズームでのインタビューに応じた同氏は「50歳までに億万長者になりたいと言っていたのに、そのチャンスを逃した」と語った。

共和党全国大会のステージに登壇したホーガン氏(7月)

  「リアル・アメリカン・ビール」が成功を収めるかどうかはまだ分からないが、トランプ氏からは支持を得ている。飲酒はしないと公言しているトランプ氏は9月、ソシャールメディア上で自身のフォロワーに対し、同ビールを「試してみよう!」と呼び掛けた。

  現在、同ビールは18の州で販売されており、ウォルマートの一部店舗でも取り扱いがある。これまで卸売業者に累計22万5000ケースを販売した。小売価格では約700万ドル(約10億7000万円)に相当する。ただ、ビール市場全体から見れば微々たる額だ。業界団体によると、昨年の米国のビール売上高は1170億ドルに上る。

  大統領選が目前に迫る中、「リアル・アメリカン・ビール」には課題がある。選挙終了後、ホーガン氏への注目がいつまで持つか、トランプ氏の支持者がどれだけ同ビールを買い続けるかだ。

  ホーガン氏のビール事業は、トランプ氏が掲げる「MAGA(米国を再び偉大に)」のスローガンを支持する層をターゲットに拡大する消費者経済の一部だ。

  「こうした連帯感だけでは、リピート購入は保証されない」。バンプ・ウィリアムズ・コンサルティングのデーブ・ウィリアムズ社長はこう語り、有名人であればブランド立ち上げ初期の販売と認知度の押し上げは期待できるが、それも一過性で終わることが多いと指摘。特に、資金力のある大手企業がマーケティングに力を入れるビール業界で「ゼロから新しいブランドを立ち上げ、持続的かつ繰り返し成功する道を見つけるのは難しい」と語った。

  スポットライトを浴びたチャンスを生かすべく、ホーガン氏は全米中のバーや小売店を精力的に回っている。同ビール事業はこれまでに投資家から600万ドルを調達したという。具体的な投資家の名前などは明らかになっていない。

「リアル・アメリカン・ビール」の箱にサインするホーガン氏

原題:Hulk Hogan Chases Billionaire Dream With Beer for MAGA Faithful(抜粋)

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