量子コンピューター最速で実現へ、28年稼働を予定-米サイクオンタム
- 商用規模のエラー耐性型量子コンピューターの3年後稼働開始目指す
- 量子コンピューターセンターにシカゴで年内に着工する-CEO
米スタートアップ企業サイクオンタムのジェレミー・オブライエン最高経営責任者(CEO)は、「量子力学」と呼ばれる物理学の理論を応用した次世代計算機、量子コンピューターをシカゴで3年後に実現する計画だ。厳しい開発競争でライバルに先んじる。
オブライエンCEOは21日、ブルームバーグのシカゴオフィスでのインタビューで、エラーが発生しても正しく動作するよう設計された商用規模のフォールトトレラント(エラー耐性型)量子コンピューターの開発を世界2カ所で進めており、シカゴでは2028年に稼働を開始できる見通しだと語った。
米イリノイ州のプリツカー知事(民主)がシカゴ南部で推進する量子マイクロエレクトロニクスパークで、量子コンピューターセンターに年内に着工する。28年というタイミングは米大統領選と重なり、トランプ大統領に対抗する勢力として存在感を高めるプリツカー氏の追い風になりそうだ。
量子コンピューターの情報基本単位「量子ビット」は従来のビット(0または1)と異なり、0と1の状態を同時に保つ「重ね合わせ」という状態を利用する。2進法の計算機と比べ、指数関数的に高い計算能力を持つとされ、現在は数日から数カ月、数年かかるような複雑な数理問題の解決が期待される。
オブライエン氏は量子コンピューターについて、「きょうできない問題を解決するというのでなく、それがなければ、永久に解決できない非常に重要な問題を解決できる」と述べた。サイクオンタムはシカゴの量子マイクロエレクトロニクスパークに10億9000万ドル(約1610億円)以上を投じ、量子コンピューターを開発すると昨年発表した。
オブライエン氏によれば、創薬や新型電池の開発、肥料の生産コスト抑制など、さまざまな産業分野での応用が想定される。三菱ケミカルグループやドイツの医薬品メーカー、ベーリンガーインゲルハイム、メルセデス・ベンツを含む潜在的ユーザーと協議しているとしながらも、シカゴの量子コンピューターを利用するかどうかは明らかにしていない。
原題:Chicago’s $1 Billion Quantum Computer Set to Go Live in 2028 (1)(抜粋)