TDK、シリコン負極電池の第3世代を25年度半ばに量産-迅速に開発
- 従来品比でエネルギー密度を15%改善、第1世代は23年に量産
- 開発スピード上げ続けることが競争力の源泉だと斎藤社長
スマートフォン向け小型電池で世界シェア首位のTDKは、負極材料にシリコンを使った電池の第3世代製品を2025年度の半ばに量産する計画だ。
斎藤昇社長が昨年12月のインタビューで、25年の夏から秋に第3世代の量産開始を目指して、「今、開発を継続している」と述べた。同社は23年にシリコン負極電池の第1世代を量産し、世代ごとにエネルギー効率を5%高め、第3世代は従来品に比べて15%改善するという。
米調査会社IDCによると、24年の世界スマホ出荷台数は低価格帯が好調で前年比6.2%増の見通しだが、25年以降は成長が鈍化し、23-28年の年平均成長率は2.6%にとどまる。TDKは、グラファイト(黒鉛)を使った従来型の電池に比べてエネルギー密度を向上させて薄くできる特性を生かし、成長が鈍化するスマホ市場においても高付加価値製品で需要を喚起する。
斎藤氏は同社の電池事業はスピード感が強みで、「量産のみならず開発のスピード感もしっかりと維持し、上げ続けていくことが競争力の一つの源泉だと思っている」と述べた。昨年はアジア地域でシリコン負極電池の顧客基盤と採用機種が増えたといい、今年も「ステップバイステップ」で広がるとみている。
ブルームバーグのデータによると、TDKは米アップルや韓国サムスン電子、中国の小米(シャオミ)に製品を供給する。
中型電池にも注力
TDKは2005年に香港の電池メーカー、アンプレックステクノロジー(ATL)を買収し、スマホ市場の拡大とともに収益を伸ばしてきた。小型電池を含むエナジー応用製品事業は24年4-9月期営業利益の約9割を占める稼ぎ頭となっている。
TDKは小型電池だけでなく、電動二輪車などに使われる中型電池にも注力する。斎藤氏はATLと中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が設立した合弁会社を通して「小型電池同様、ナンバーワンを取りにいくという方針は変わっていない」と述べた。
一方、EV向けの大型電池への投資や量産に対する考え方については、現時点でコメントすることはないとした。提携相手のCATLは、電気自動車(EV)向け電池で世界シェアで首位を走る。
関連記事