「死んだンゴ」発の寄付の輪、基礎研究支援にも ノーベル賞の大隅良典さん「ありがたい」

大隅基礎科学創成財団には「対応が追い付かないほど」の寄付が殺到しているという

がんで亡くなった若い男性が遺(のこ)した「グエー死んだンゴ」というX(旧ツイッター)投稿を機に、がん研究拠点への寄付が広がりを見せている。SNS発の善意の輪は、がん研究のみならず、日本の科学技術を支える基礎研究の分野にまでおよび、大きなうねりとなっている。

1日180件超の申し込み

《朝、出勤して驚きました。この1日で180件を超えるご寄付のお申込みが…! 添えられた温かいコメントに胸がいっぱいです》

10月28日9時29分、大隅基礎科学創生財団(横浜)の公式Xにこんな投稿があった。

同財団はこの投稿内で、一般のXユーザーによる《「グエー死んだンゴ」から派生してノーベル賞受賞者の大隅良典先生が受賞金で設立した『大隅基礎科学創成財団』にも多くの寄付が!!》との投稿も引用。寄付が、がんで亡くなった若い男性が遺した「グエー死んだンゴ」のX投稿をきっかけに相次いだことを示唆した。

同財団は、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典・東京科学大栄誉教授を理事長とし、基礎研究の発展のために活動している。

「成仏してクレメンス」

寄付の波を起こすきっかけとなった「グエー死んだンゴ」の投稿は、がん闘病中の学生だとする「なかやま」名義のアカウントに10月14日に公開された。前日には「友人」が「なかやまは静かに息を引き取りました」と書き込んでおり、14日の投稿は生前に予約機能を使ったものだとみられる。最期までユーモアを交えて投稿した行動に多くのXユーザーが心を動かされ、「香典代わりに寄付した」とする報告がX上で相次いでいた。

財団のX投稿には《コメントはすべて大隅理事長にお伝えいたします》ともあり、それに呼応したXユーザーからの「香典代わり」の寄付の動きはさらに加速。翌29日、財団はX上で、《寄付件数が400件を超えていました》《科学の発展につなげることでお悔やみにかえたいです》《心より「成仏してクレメンス」と申し上げます》と、「死んだンゴ」に対する返答としてSNS上で使われるスラング(俗語)を用いて、「なかやま」さんを悼んだ。

個人からの寄付は、30日には前年1年間の2倍以上となる800件超、31日には1150件超に達したという。

支援受けにくい基礎研究

科学技術の原理や理論を解き明かす基礎研究は、「0から1を生み出し未来を築く大切な土台ですが、すぐに応用研究に結びつくものではなく、支援を得にくい現状もあります」と、同財団のSNS担当者は訴える。それだけに、思いがけないきっかけで多数の寄付が寄せられたことに、「これほど多くのご寄付と温かいコメントをいただいたことは、私たちにとって大きな励みとなります」と感謝した。

大隅さんも「私自身が新聞や書物を読んで知識を得るのが当然という世代であったが、インターネットというメディアで若い世代に財団の活動に賛同していただくのは大変ありがたい」とコメントを寄せた。

今回の動きに関しては、がん研究拠点のがん研究会(東京)には、10月17~21日の5日間で通常の半年分以上の件数の寄付が寄せられた。国立がん研究センター(東京)でも10月後半には寄付が大幅に増えたという。(田中万紀)

「グエー死んだンゴ」…がん患者最期の投稿きっかけ、研究拠点に寄付殺到

関連記事: