190光年先・赤色矮星の連星で地球サイズの惑星を2つ発見 確認待ちの候補も1つ

ここで注目したいのは、惑星bと惑星候補の公転周期です。どちらも2日余りと近い値なのですが、これは同じ星を公転している場合に互いの公転軌道が非常に接近することを意味します。 研究チームがシミュレーションを行ったところ、惑星bと惑星候補がA星とB星のどちらを一緒に公転しているケースでも、惑星系は不安定であることがわかりました。 したがって、仮に惑星候補が実際に存在する惑星なのであれば、惑星bと同じ星を公転していない可能性が高いことになります。つまり、A星とB星はどちらも惑星を持つ可能性があるのです。


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また、惑星bと惑星cの公転周期の比は3:2に近く、重力を介した相互作用によって公転周期が整数比に近付く「軌道共鳴」が起きている可能性を研究チームは指摘しています。 軌道共鳴は木星の衛星どうしや海王星と太陽系外縁天体などの太陽系内の天体をはじめ、太陽系外惑星でも確認されている現象です。 研究チームはシミュレーション結果と公転周期の比をもとに、惑星bと惑星cがA星とB星のどちらか同じ星を公転していて、惑星候補はもう片方の星を公転している可能性が高いと考えています。

今回の発見における別の注目点として、2つの赤色矮星が近接していることがあげられます。 連星系で太陽系外惑星が見つかるのは、今回のTOI-2267が初めてではありません。連星をなす恒星の片方を公転している場合もあれば、2つの恒星がおさまる大きな軌道で両方を公転している場合(周連星惑星と呼ばれる)もあります。 惑星は若い星を取り囲むガスと塵(ダスト)でできた原始惑星系円盤で誕生するとされています。ただ、連星系では円盤の進化が妨げられたり、誕生した惑星が惑星系から放り出されてしまう可能性もあると考えられています。 研究チームによると、これまでの観測結果からは、星の間隔が数十~数百天文単位(※)以上離れていれば円盤が維持される、という予測を支持する結果が得られているといいます。ところが、研究チームが割り出したTOI-2267のA星とB星の間隔は、約8天文単位しかないのです。 近接した赤色矮星の連星系における惑星形成や軌道の力学的な挙動を調査する上で、TOI-2267は良い研究対象となるかもしれません。 ※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来する。8天文単位は太陽から木星まで(約5.2天文単位)よりも遠く、土星まで(約9.6天文単位)よりも近い距離。 なお、TOI-2267では、惑星が恒星の手前を横切る「トランジット」という現象を利用した観測手法「トランジット法」で惑星が検出されています。トランジット法については以下の関連記事をご参照ください。 研究チームはTOI-2267について、近接した連星系において両方の星を公転する惑星が、いずれもトランジットで発見された初の事例になるかもしれないと指摘しています。 ただし、前述の通りTOI-2267で確認された惑星はbとcの2つだけであり、惑星候補の1つは今後の追加観測で確認されるのを待っている段階です。 参考文献・出典 University of Liège - Three Earth-sized planets discovered in a compact binary system Zúñiga-Fernández et al. - Two warm Earth-sized exoplanets and an Earth-sized candidate in the M5V-M6V binary system TOI-2267 (Astronomy & Astrophysics)

sorae編集部

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