【論文発表】高齢者の慢性腎臓病に対する新しい治療薬(SGLT2阻害薬)の効果と安全性に関する研究について
テーマ:糖尿病
2025年1月に糖尿病内科まつだクリニックと県立リハビリテーション中央病院との共同研究により、「高齢者の慢性腎臓病に対する新しい治療薬の効果と安全性に関する研究」というテーマで論文を発表しました。論文タイトル:Comprehensive treatment with dapagliflozin in elderly chronic kidney disease patients: Clinical efficacy and impact on body composition投稿雑誌名:Journal of Diabetes and its Complications
アクセス先:https://doi.org/10.1016/j.jdiacomp.2025.108951
論文の目的
近年、慢性腎臓病(CKD)の治療薬として、SGLT2阻害薬の一種である「ダパグリフロジン」が注目されています。この薬は、血液中の糖分(ブドウ糖)を尿として体の外に出すことで効果を発揮します。しかし、この作用には以下のような懸念がありました
- 私たちの体は、食事と食事の間(特に夜間)にエネルギーが必要になると、筋肉を分解して糖分を作り出します
- 次の食事で糖分を取ると、分解された筋肉を作り直します
- この薬により多くの糖分が尿として失われると、体は必要な糖分を得るために、より多くの筋肉を分解するのではないか
- 特に高齢者は、もともと筋肉量が少ない傾向にあるため、この影響が心配されました
そこで私たちは、慢性腎臓病を併発した2型糖尿病を持つ高齢者12名(平均年齢76歳)を対象に、この新しい治療薬の効果と安全性を1年間かけて調査しました。特に、高齢者の筋肉への影響について重点的に調べました。
主な研究結果
1. 腎臓への効果
- 腎臓の働きを示す検査値(eGFR)は安定して維持
- 12名中7名で尿タンパクが改善
- 腎臓を守る効果が示唆されました
2. 肝臓への効果
- 肝機能を示す検査値(GOT、GPT)が改善
- 体の代謝機能が良くなる可能性が示されました
3. 体や筋肉への影響
- 体重 や体組成に大きな変化なし
- 握力は維持
- 椅子からの立ち上がりテストでは、むしろ動作が改善
4. 安全性について
- 重い副作用は見られませんでした
- 高齢の方でも安心して使える薬であることが分かりました
まとめ
この研究から、治療薬「ダパグリフロジン」は、高齢の慢性腎臓病を併発した2型糖尿病を持つ方に対して:
- 腎臓を守る効果が期待できる
- 筋肉への悪影響がない
- 安全に使用できる
ことが分かりました。特に、適度な運動や生活習慣の改善と組み合わせることで、より良い効果が期待できます。
※この研究結果は、個々の患者さんの状態によって異なる可能性があります。治療については、必ず担当医とご相談ください。
松田友和プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です
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