AIについて履き違えている「3つの本質」 サム・アルトマンが漏らした“次に起こること”とは?
2024年9月に米OpenAIのo1が登場してから、AI業界は「考えるAI」の時代にシフトした。スケール則のコスパが悪くなり、巨額の資金を投入しモデルを大きくしても性能の大きな進化が得られなくなった。 GPT-4.5はGoogle Geminiに比べるとコスパが悪く、開発者の間で不評になり、GPT-5でもこの傾向が続くと「OpenAIのブランド力が崩壊する」とまで言われた。 一方でo1、o3といった「考えるAI」(リーズニングモデル)は評判がよく、OpenAIが開発したGPT-6は、国際数学オリンピックで金メダル相当の成績を達成するなど、「考える力」がさらに向上している。
基盤モデルの開発競争は、トップAI企業間でほぼ横並びになった。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン(Sam Altman)氏によれば、GPT-5も「Grok-4より少しよくなった程度」だったという。 アルトマン氏は「多少問題はあるけれど、どうか大目に見て。その代わりにいろいろな製品、機能を続けてリリースしていくので」と述べている。 基盤モデルの進化より注目すべきは、コンピューター操作エージェント「ChatGPT Agent」などの自律型エージェントの進化だ。ChatGPT Agentは、AI時代のOS的地位を狙う同社にとって最大の構想だが、今のところ使い勝手はイマイチ。どの程度進化するかに注目が集まっている。大きく進化すれば、ホワイトカラーの仕事内容や企業組織に大きな影響を与えると見られている。
OpenAIなどのトップAIラボは、複数の実験プロジェクトを同時並行で走らせている。アルトマン氏によれば、次にどのプロジェクトが成果を上げるのかは「誰にも分からない」という。 うまくいった実験プロジェクトを継続して機能や製品にすることでAIが進化する。アルトマン氏は「次に何が起こるのかなんて誰にも分かりません。私たちにも分かりません。賢そうな予測をする人がたくさんいますが、分かっている人は誰もいないと言っていいでしょう」と語る。 たまたまうまくいった実験プロジェクトの結果によって、社会が大きく変化する。直近でうまくいったプロジェクトは、国際数学オリンピックで金メダル相当の成績を収めたモデルだ。数学的な論理思考が大幅に向上したため、その応用範囲は広く、新しい物理法則の発見や創薬、材料開発などの研究を劇的に加速させる可能性がある。 AIの進化を無邪気に想定した未来予測をする人は後を絶たないが、例えば太陽光発電に関する新素材が発見されるだけで世の中が激変する可能性があり、今のAIの現状をベースにしたほとんどの未来予測は早かれ遅かれ無意味になる。 本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「AIの現状について理解してほしい3つのこと」(2025年8月4日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
湯川鶴章 AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。
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