トランプ大統領の「お膝元」でも反乱…巨大AIデータセンター建設計画が、住民の猛反発で否決(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)
フロリダ州パームビーチ郡は、ドナルド・トランプ大統領の邸宅兼高級会員制クラブ「マー・ア・ラゴ」近郊で予定されていたAIデータセンターの建設計画を否決した。「プロジェクト・タンゴ」の名で知られるこの開発計画は、地域住民から猛烈な反発を受けていた。テック企業がデータセンターの建設競争を繰り広げるなか、全米各地のコミュニティがこれに抵抗する動きを見せている。 フロリダ州パームビーチにあるドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の邸宅兼高級会員制クラブ「マー・ア・ラゴ」から約20マイル(約32km)のロクサハッチー(Loxahatchee)では、巨大なAIデータセンター建設が計画されていた。パームビーチ郡当局は、長時間に及ぶ公聴会の末、7月15日夜遅くにその計画を否決した。 【全画像をみる】トランプ大統領の「お膝元」でも反乱…巨大AIデータセンター建設計画が、住民の猛反発で否決 パームビーチ郡政委員会(Palm Beach County Board of County Commissioners)は「プロジェクト・タンゴ」を5対1で否決した。背景にあったのは、地域のインフラに過剰な負担をかけ、周辺コミュニティに悪影響を及ぼすと主張する住民たちが、数カ月にわたって続けた組織的な反対運動だ。 今回の決定は、全米各地で過熱するAIデータセンターの建設競争をめぐって表面化した新たな対立の一例だ。 採決に先立ち行われた12時間に及ぶ公聴会には、「NO to Project Tango(プロジェクト・タンゴに反対)」と書かれた緑色のTシャツを着た住民が大挙して押し寄せ、会場を埋め尽くした。 このプロジェクトを手がける開発業者PBAホールディングス(PBA Holdings Inc.)は、ロクサハッチーですでに承認されていた開発計画の規模をほぼ2倍に拡大。100万平方フィート(約9万2900平米)を超えるデータセンター用地を含め、計約360万平方フィート(約33万4000平米)にする許可を郡に求めていた。 同社は、15日の公聴会に先立ち、住民の懸念に対応するため計画を修正したと説明していた。 公聴会の席上、PBAホールディングスのプロジェクトマネージャーは、施設が完成すれば、郡に年間5億6100万ドル(約914億4300万円、1ドル=163円)の固定資産税収入がもたらされるとの試算を示した。 それでもその計画は、水使用量や電力需要、騒音を懸念する地域住民からの激しい反発を招いた。住民たちは、建設予定地が住宅地や最寄りの小学校に近すぎる点も問題視していたのだ。 反対派の団体は、彼らが立ち上げたウェブサイト「NoToProjectTango.com」で次のように訴えている。 「このAIデータセンターは、勤勉に働いて納税してきたパームビーチ郡の住民とその家族、子どもたちの健康、福祉、安全を脅かすだけではない。サドルビュー小学校(Saddle View Elementary School)やアーデン(Arden)地区の住宅街からわずか1200フィート(約366m)以内の場所に建設されるという事実が、問題をより一層深刻にしている」 PBAホールディングスのプロジェクトマネージャー、アーニー・コックス(Ernie Cox)氏は、採決後、地元のNBC系列局に対し、今回の委員会の決定によって既存の承認内容が変わるわけではないと語った。記録によれば、すでに10万平方フィート(約9290平米)のデータセンター建屋2棟の建設は承認されている。 「既存のプロジェクトは予定通り進める。今回の採決はその計画には何の影響も及ぼさない」と、コックス氏は同局に語った。 なお、今回の委員会の決定は計画を永久に不許可としたわけではなく、開発事業者が計画を修正し、後日改めて申請し直す余地は残されている。 コックス氏はBusiness Insiderの取材に対し、開発事業者としてこの決定には「失望している」と語った。 「私たちは、今回の申請に関して求められたすべての条件を順守するという姿勢を改めて示し、綿密な技術調査や分析を通じて懸念事項に真摯に対応してきた」とコックス氏は述べた。 「この地域で高まり続ける重要なインフラ需要に応えるために尽力するという姿勢に変わりはない。今後の選択肢について時間をかけて検討していくつもりだ」 「プロジェクト・タンゴ」をめぐる攻防の背景には、AIの急速な普及によって全米でかつてない規模のデータセンター建設ブームが巻き起こっているという事情がある。 テック企業各社が新たな施設に巨額の資金を注ぎ込む一方で、環境破壊や地域経済への悪影響を懸念する地域コミュニティの反発は日増しに強まっている。 データセンターの動向を追う調査プロジェクト「データセンター・ウォッチ(Data Center Watch)」の記録によると、地域の反対によって延期または中止に追い込まれたデータセンター計画は、2026年第1四半期(1〜3月)だけで少なくとも75件に上り、その総事業費は推定1300億ドル(約21兆1900億円)となっている。 一方、全米各地の自治体では、データセンター開発の一時停止や全面禁止の動きが広がっている。ニューヨーク州のキャシー・ホークル(Kathy Hochul)知事は7月14日、州全域における大規模データセンター開発を一時停止する行政命令に署名した。個別の計画に対してではなく、州全域に対する停止命令は、アメリカ初のことだ。 トランプ氏は15日、自身のソーシャルメディア・Truth Socialで「ニューヨーク州はひどい決定を下した」とこの決定を非難した。 データセンターを「金のなる機械(Money Machines)」だとし、「データセンターは、誘致に成功した幸運な州やコミュニティにとって、計り知れない勝利をもたらすものだ。ニューヨーク州は直ちに政策を変更すべきだ」とトランプ大統領は主張した。
Natalie Musumeci