石垣島で八重山そば(沖縄そば)を小麦粉と豚骨から作るワークショップ

そもそもは西表島の友人に会いにいくという用事があり、それならば経由地である石垣島でもなにかしようと考えて、石垣島出身で京都にも拠点をもつライターの泡☆盛子さんに相談したところ、製麺ワークショップ(小麦粉から麺を作る会)をやらせてもらえることになった。

せっかく石垣島でやるのであれば、作るべきはやはり八重山そばだろう。11年前に当サイトのイベントで石垣島を訪れた際、『日本最南端の麺文化「八重山そば」』という記事を書いたが、そのネクストをやろうじゃないか。

そんな訳で石垣島に到着し、最初の食事はもちろん八重山そばだ。すっきりした鰹節と豚骨のスープ、断面の丸いストレートの茹で麺、具は細切りの豚肉とかまぼこと青ネギ。そうそう、こういう味だった。

南の島で食べる麺類はこうでなくちゃと指をパチンとさせたくなる味がした。

八重山そばとジューシー(炊き込みごはん)のセット。ジューシーから仄かにスパイシーな香りがしたのが不思議だった。 お好みでピパーチ(ヒハツモドキの実を粉にしたもので、ピパーズとかピパチとかヒバーチとか島胡椒とか表記は様々)とコーレーグース(泡盛に島唐辛子をつけたもの)を少し加えるのがお約束。

沖縄そばと八重山そばと宮古そばの違い

この記事を読む上の基礎知識として、沖縄そばと八重山そばと宮古そばの違いや共通点を書いておく。埼玉県民の私が書いているので本当に正しいのかは怪しいが。

まず麺だが、どのそばもかんすいの入った中華麺を製麺所で茹でて、油をまぶして冷ましたものが使われる。そばという名前だが粉は小麦粉100%で蕎麦粉は使われていない。中華そばとか汁そばと同じ文脈の「麺」という意味のそばなのだ。

麺の形状は、沖縄そばが太くて縮れた平麺、八重山そばが細いストレートの丸麺、宮古そばが細いストレートの平麺であることが多いが、あくまで傾向の範疇で絶対にそうという訳でもない。

麺はスーパーなどでダシ(スープ)と並んで売られており、家で作って食べることも多い。

石垣島で丸麺を始めて売り出したという金城製麺所の八重山そば。丸麺がスタンダードだが平麺もある。麺の形状に強いこだわりがあるお客さんも多いそうだ。

ダシは豚骨と鰹節のあっさり味が定番。沖縄そばのほうが比較的濃厚で、ラーメンに近い味の店が多いように思う。

ローカルスーパーでもマックスバリュでも「ダシ骨」と書かれた豚骨のぶつ切りが売られているので、このスープを家で作る人も多いのだろう。

具は青ネギが共通で、肉は豚の三枚肉(皮付きバラ肉)、本ソーキ(骨が固いスペアリブ)、軟骨ソーキ(骨ごと食べられる柔らかいスペアリブ)、テビチ(豚足)、赤身肉など、店によって様々。

デフォルトは沖縄そばが三枚肉、八重山そばが細切り赤身肉、宮古そばが厚切り赤身肉のイメージ。どのそばもかまぼこ(揚げた魚のすり身)がよく乗っている。

沖縄本島は飛行機の乗り換え以外でいったことがないため本場の沖縄そばの写真がないので、DEEokinawaの「トッピングがでかすぎる沖縄そば」を掲載。紅生姜の乗っている確率が高い。これは麺がちょっと細めかも。 超あっさりタイプだった「島そば一番地」の八重山そば。この店は細いストレートの平麺で、かまぼこは煮込まれいなかった。 宮古島の丸吉食堂で食べた昔ながらの宮古そばは、ストレートの平麺の下に具を隠して質素な料理に見せる伝統のスタイル。映え狙いの反対だ。 麺を持ち上げると、中から豚肉とかまぼこが出てきた。

長々と蘊蓄を書いてみたが、最近は各島同士や本土のラーメンとの融合が進んでいるようで定義することが難しくなっているようだ。茹で麺ではなく生麺を出す店もあるのだとか。

昔ながらを謳う店でもレシピは少しずつブラッシュアップされているだろうし、一般庶民が歴史を紡ぐ食文化は、きっとそういうものなのだろう。

製麺ワークショップのリハーサル

八重山そばを作る製麺ワークショップの会場は、石垣市公設市場という飲食店や土産物屋が入る建物の3階にある「あまくま座」。保育園跡地に昨年オープンした、映画×文化交流を目的としたコミュニティスペースとのこと。

石垣島に住む友人の泡さんが繋いでくれたのだが、映画上映をベースとしつつ、製麺ワークショップもやれば快楽亭ブラック師匠の高座もやるという、とても自由度の高い素敵な場所だった。

石垣市公設市場の3階に製麺ワークショップの会場となるあまくま座がある。 まさか快楽亭ブラック師匠と告知が並ぶ日が来るとは。

この場所で製麺ワークショップが行われるのはもちろん初めてなので、本番の前にリハーサルをして諸々のすり合わせを行う。

八重山そばの製麺部分はこちらが主導しつつ、スープや具に関しては泡さんが両親から受け継いだ作り方をベースとした。

「あまくま」は、沖縄の言葉で「あちらこちら」という意味だとか。このワークショップはまさにあまくまの文化交流。私にとっても学びが多い。

右が企画してくれた石垣島生まれの泡☆盛子さん、左は館長で新潟出身の佐藤真弓さん。 佐藤さんから「とりあえず一杯どうですか?」とウエルカム泡盛を勧められたが、初対面で緊張していたのでオリオンビールにしてもらった。

二人が用意してくれた食材や調理道具を使って、さぐりさぐり八重山そばを作っていく。本来は茹でた麺に油をまぶして冷ましたものを使うのだが、ワークショップでそれをやるのは大変過ぎるので生麺タイプとさせていただく。南の島で細かいことを気にしてはいけない。あまくま座スペシャルということで。

事前に家庭用製麺機を宅配便で送っておいたのだが、ほぼ鉄の塊なので検査時に怪しまれたのか、航空便ではなく船便になったことが来島直前に判明し(沖縄あるあるらしい)、急遽手荷物でパスタマシンを持ってきたのだが、こちらはオプションで購入した丸麺(スパゲティ)用の切り刃があるので、結果的に八重山そばっぽい形の麺を作ることができた。

肉は赤身肉を細切りにすると八重山そばらしくなるが、すっかり忘れていたので皮付きの三枚肉を用意してもらった。ダシ骨と呼ばれるぶつ切りの豚骨ミックスの存在に地域性を感じる。うちの近所でも売って欲しい。 三枚肉は下茹でするべきか迷ったが、手順の簡略化も兼ねて、ダシ骨と生から煮て1時間後に取り出して味付けすることにした。ダシ骨はこのままもう少し煮ておく。 一口サイズに切った三枚肉を、醤油、味醂、泡盛、黒糖、スープで煮込む。 鰹節は豚のスープに直接入れるのではなく、別の鍋で鰹出汁を煮出すことにした。ちなみに昆布を入れるか聞いたところ、泡さん曰く昆布は食べるものだから出汁用には使わないそうだ。 それぞれを濾して、豚と鰹の合わせスープが完成。ワークショップ形式なので味付けは各自が丼の中で行うスタイルとする。 製麺のリハーサルもする。小麦粉は金城製麺所から沖縄製粉の「さんにん」という沖縄そば用の粉(粗蛋白10.8%)を分けてもらった。かんすい少なめ、塩多めで八重山そばらしい生地を作る。 まったく使っていなかったスパゲティ用の切り刃が八重山そばのワークショップには最適だった。会場が粉だらけになるけれど、そこは諦めていただきたい。 かまぼこは煮込まずに細切りにした。 ネギは島ネギと呼ばれる細いもの。関東でお馴染みの太い長ネギはこちらだと育ちにくいのだろう。 諸々の用意ができたら麺を茹でる。 スープの味付けは石垣の塩や醤油でお好みの味に。味の素を入れると一気に店の味になる。

三人で作った生麺タイプのオリジナル八重山そばは、麺がツルッツルでとてもおいしかった。スープはすっきりしつつも物足りなさがない。「これでいい、いや、これがいい」という味だ。

石垣島で八重山そばを作るという長年の野望が叶い、すっかり満足してしまったのだが、そういえばこれはまだリハーサルなのだった。

普段は映画の上映をしている場所で手作りしたとは思えない出来栄えの八重山そば。 半分くらい食べたところで、泡さんお手製のコーレーグースとヒバーチを加えると、味がビシッと引き締まるんですよ。 ヒバーチの原材料はこの細長いイチゴみたいな実。ツタのように石垣によく生えている。 ところで公設市場1階の「ひとくち亭」には泡盛の飲み比べセットがあり、古酒(クースー)を頼んだら全部43度ですっかりヘロヘロになった。なかなか愉快な島だ。

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製麺ワークショップのリハーサルを無事に終えて西表島に渡ると、趣味で猟師をやっている友人がイノシシ猟に連れて行ってくれた。

西表島を含む南西諸島には、リュウキュウイノシシという本土のイノシシよりも小型の固有亜種がいるのだそうだ。この島での呼び方はカマイ。

イノシシ猟といっても犬や鉄砲を使うのではなく、けもの道に「くくり罠」を仕掛けて捕まえる方法で、事前にセットした場所を確認しに行く。

素人目にはまったくわからないけもの道に仕掛けられた罠をチェックしていく。

カマイが一匹も捕れないことも多いそうだが、この日は中型のオスが罠に掛かっていた。友人達はそのカマイを手際よく仕留めると、車で作業小屋へと運び、なんやかんやしつつテキパキと解体して、無駄なく食べられるよう処理していく。

家でゴロゴロしていたら絶対に目にすることのできない景色の連続に背筋が伸びる。はるばる西表島まで来て本当に良かった。

カマイは小型のイノシシなので、このサイズでも大人なのだそうだ。 肉を取った後の骨は全部ぶつ切りにされる。これがダシ骨の原点なのだろう。 内蔵は下茹でをしてしっかりと洗う。これを中身と呼ぶ。 貴重な肉を食べさせてもらった。全体が赤身で肉質がとても柔らかく、皮付きのまま焼くとコリコリしてうまい。 また別の日、宿泊先で出会った人から芸能発表会というイベントに誘われて訪れたら、テーブルの上に泡盛がデンと置かれていた。誘ってくれた方は出演者側なので客席側に知り合いが周りに誰もいない状況のためドキドキしたが、とても熱量の高い素晴らしい発表会だった。 発表会で出していただいたカマイ汁。これが祭のときに食べる西表島の味なのかと感動。

なんで急にカマイことリュウキュウイノシシの話になったかというと、友人からこのときのダシ骨と中身をいただいたので、製麺ワークショップで振舞うことにしたのである。

ちなみに豚の中身を使った汁を中身汁、中身を使ったそばは中身そばと呼び、沖縄では昔から愛されている。

となれば作ってみたいじゃないですか、カマイの中身そば。おそらく一生に一度のチャンスに違いない。

これは石垣島のキミ食堂で食べた中身そば。たくさんの干し椎茸と煮て、生姜を利かせるのがポイントらしい。大阪の西成などで食べられているホルモンうどんのルーツにようやくたどり着けた(こちらの記事)。

カマイの中身そばを作ろう

カマイのダシ骨と中身をお土産に石垣島へと舞い戻り、製麺ワークショップの本番へと挑む。

私の都合で開催されたのが水曜日の昼間という、どう考えても人の集まりにくい日程だったが、佐藤さんと泡さんの尽力によって満席になったようだ。

製麺ワークショップの準備と並行して、本来の予定には一切ないカマイの中身そば作りに挑戦する。ずいぶんとコントロールしづらい人だなと思われただろうが、こんな奇行を笑って許してくれた二人には感謝しかない。

平日の昼間、しかも離島での製麺ワークショップ開催という無茶。八重山そばなのに教えるのが埼玉県民だし。 中身そばの麺は、かんすいではなく古式に則って木灰を使う。 木杯のアルカリ成分が溶け出した上澄みで麺を打つと、うどんと中華麺の中間みたいに仕上がる。詳しくはこちら。 船便でようやく届いた家庭用製麺機で麺にする。 カマイのダシ骨にショウガとヒバーチの葉を入れて煮る。泡さん曰く、ヒバーチの葉は臭み消しによく使うそうだ。長ネギの青い部分みたいである。 翌日訪れた直売所にも商品こそなかったが「ピパーチの葉」というコーナーがあった。来島して最初に食べたジューシーのスパイス感はこれだったのかも。 下茹で済みの中身も生姜とヒバーチの葉と泡盛を入れてさらに茹でこぼす。 カマイのダシ骨のスープ、カマイの中身、干し椎茸とその戻し汁、鰹出汁、塩で仕上げていく。ここまですれば臭みはまったく感じられない。 木灰で打った麺と合わせて、もしかしたら西表島や石垣島で大昔に食べられていたかもしれない原始的な八重山そば、カマイの中身そばが完成。実にヒバーチの葉が良い仕事をしてくれていて、ちょっとだけ香るスパイシーな風味が絶妙。

行き当たりばったりで作った割には、とても完成度の高い一杯になったのではないだろうか。自分の中に様々な知識や経験が積み重なったからこそ辿り着いた一期一会の味。

こういう再現性のまったくない料理が大好きだ。

ちゃんとワークショップもやりました

ついついカマイの中身そば作りで盛り上がってしまったが、八重山そばを作るワークショップも無事に開催された。

参加者のほとんどが佐藤さんと泡さんの友人ということもあり、浮足立ちまくりの私の説明でもじっくりと聞いてもらえ、初めての製麺体験を楽しんでもらえたと思う。

麺作り、楽しいですよね!

初めて見る家庭用製麺機に興味津々の人を眺めるためにワークショップを開催しているといっても過言ではない。 ワークショップ用のスープは、カマイじゃなくて豚のダシ骨、三枚肉、赤身肉をたっぷりと使った。 八重山そばにするなら三枚肉はなくてもいいんだけど、大きな肉は人を笑顔にする力がある。 今回はかまぼこも三枚肉、細切りの赤身肉と一緒に甘じょっぱく煮た。 ものすごいチームワークで作業が進み、予想よりも早い時間で製麺作業が終了した。 各自が自分で食べる麺を打ち、その麺を茹で、スープの味を決めて、盛り付けをしていただく。この日のそばもうまかった。ダシに入れる肉が多かったのでちょっとラーメン寄りになったかな。

金城製麺所の金城秀信さんとのトークショー

この日はワークショップの後に二部として、カマイの中身そばを参加者に試食してもらいつつ、すぐ近くにある金城製麺所の三代目である金城秀信さんとトークをさせていただいた。

ずっと気になっていた八重山そばの特徴や沖縄そばとの違いをじっくりと伺う。なぜ茹で麺が愛されているのか、あっさり味の八重山そばは紅生姜を入れると味が負けてしまうためピパーチがちょうど良いとか、ごはんを添えるなら白飯よりも味のついているジューシーが合うとか、とても勉強になる会だった。客を呼んでのイベントとしては、ちょっとマニアックすぎたかもしれないが。

ちなみに金城製麺所では、事前に予約をすると茹でる前の生麺も購入できるそうで、後日泡さんが購入してその味に感動したそうだ。

11年前に八重山そばを調べたときに、お話を伺った金城さんと再びお会いできて感無量。 金城製麺謹製の八重山そばを、汁なしの「からそば」で試食。麺の茹で時間が本当に一瞬で驚いた。 皆様、ありがとうございました!

最後に余談。ワークショップの参加者に数年前まで東京に住んでいた方がいて、その人が石垣島に来る少し前に一度飲んだことがあるのだが、「今度、石垣島に引越すんです」という話をしたところ、「石垣島で八重山そばを作るワークショップをするのが夢なんですよ!」と私が熱く語ったそうだ。へー。

その話を聞くまですっかり失念していたが、そういえば確かに言った覚えがある。夢って叶うんですね。忘れていても。

石垣島での製麺ワークショップは大変おもしろく、石垣島も西表島もとても良いところだったので、早くも5月末(たぶん30日)に再びあまくま座にて第二回をやることになりそうです。みんな来てね。

ということで製麺機は石垣島に置いていきます!

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ 埼玉出身の玉置さんが石垣で八重山そばのワークショップをする。 その設定のおかしさを忘れるほどの情報量でした。沖縄そばと八重山そばの違い、とれたばかりのイノシシで中身汁から大阪のホルモンうどんにつながること。ジューシーのスパイス感も伏線回収されています。

しかし「大きな肉は人を笑顔にする力がある」の肉がでかすぎます。(林)


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そもそもは西表島の友人に会いにいくという用事があり、それならば経由地である石垣島でもなにかしようと考えて、石垣島出身で京都にも拠点をもつライターの泡☆盛子さんに相談したところ、製麺ワークショップ(小麦粉から麺を作る会)をやらせてもらえることになった。

せっかく石垣島でやるのであれば、作るべきはやはり八重山そばだろう。11年前に当サイトのイベントで石垣島を訪れた際、『日本最南端の麺文化「八重山そば」』という記事を書いたが、そのネクストをやろうじゃないか。

そんな訳で石垣島に到着し、最初の食事はもちろん八重山そばだ。すっきりした鰹節と豚骨のスープ、断面の丸いストレートの茹で麺、具は細切りの豚肉とかまぼこと青ネギ。そうそう、こういう味だった。

南の島で食べる麺類はこうでなくちゃと指をパチンとさせたくなる味がした。

八重山そばとジューシー(炊き込みごはん)のセット。ジューシーから仄かにスパイシーな香りがしたのが不思議だった。 お好みでピパーチ(ヒハツモドキの実を粉にしたもので、ピパーズとかピパチとかヒバーチとか島胡椒とか表記は様々)とコーレーグース(泡盛に島唐辛子をつけたもの)を少し加えるのがお約束。

沖縄そばと八重山そばと宮古そばの違い

この記事を読む上の基礎知識として、沖縄そばと八重山そばと宮古そばの違いや共通点を書いておく。埼玉県民の私が書いているので本当に正しいのかは怪しいが。

まず麺だが、どのそばもかんすいの入った中華麺を製麺所で茹でて、油をまぶして冷ましたものが使われる。そばという名前だが粉は小麦粉100%で蕎麦粉は使われていない。中華そばとか汁そばと同じ文脈の「麺」という意味のそばなのだ。

麺の形状は、沖縄そばが太くて縮れた平麺、八重山そばが細いストレートの丸麺、宮古そばが細いストレートの平麺であることが多いが、あくまで傾向の範疇で絶対にそうという訳でもない。

麺はスーパーなどでダシ(スープ)と並んで売られており、家で作って食べることも多い。

石垣島で丸麺を始めて売り出したという金城製麺所の八重山そば。丸麺がスタンダードだが平麺もある。麺の形状に強いこだわりがあるお客さんも多いそうだ。

ダシは豚骨と鰹節のあっさり味が定番。沖縄そばのほうが比較的濃厚で、ラーメンに近い味の店が多いように思う。

ローカルスーパーでもマックスバリュでも「ダシ骨」と書かれた豚骨のぶつ切りが売られているので、このスープを家で作る人も多いのだろう。

具は青ネギが共通で、肉は豚の三枚肉(皮付きバラ肉)、本ソーキ(骨が固いスペアリブ)、軟骨ソーキ(骨ごと食べられる柔らかいスペアリブ)、テビチ(豚足)、赤身肉など、店によって様々。

デフォルトは沖縄そばが三枚肉、八重山そばが細切り赤身肉、宮古そばが厚切り赤身肉のイメージ。どのそばもかまぼこ(揚げた魚のすり身)がよく乗っている。

沖縄本島は飛行機の乗り換え以外でいったことがないため本場の沖縄そばの写真がないので、DEEokinawaの「トッピングがでかすぎる沖縄そば」を掲載。紅生姜の乗っている確率が高い。これは麺がちょっと細めかも。 超あっさりタイプだった「島そば一番地」の八重山そば。この店は細いストレートの平麺で、かまぼこは煮込まれいなかった。 宮古島の丸吉食堂で食べた昔ながらの宮古そばは、ストレートの平麺の下に具を隠して質素な料理に見せる伝統のスタイル。映え狙いの反対だ。 麺を持ち上げると、中から豚肉とかまぼこが出てきた。

長々と蘊蓄を書いてみたが、最近は各島同士や本土のラーメンとの融合が進んでいるようで定義することが難しくなっているようだ。茹で麺ではなく生麺を出す店もあるのだとか。

昔ながらを謳う店でもレシピは少しずつブラッシュアップされているだろうし、一般庶民が歴史を紡ぐ食文化は、きっとそういうものなのだろう。

製麺ワークショップのリハーサル

八重山そばを作る製麺ワークショップの会場は、石垣市公設市場という飲食店や土産物屋が入る建物の3階にある「あまくま座」。保育園跡地に昨年オープンした、映画×文化交流を目的としたコミュニティスペースとのこと。

石垣島に住む友人の泡さんが繋いでくれたのだが、映画上映をベースとしつつ、製麺ワークショップもやれば快楽亭ブラック師匠の高座もやるという、とても自由度の高い素敵な場所だった。

石垣市公設市場の3階に製麺ワークショップの会場となるあまくま座がある。 まさか快楽亭ブラック師匠と告知が並ぶ日が来るとは。

この場所で製麺ワークショップが行われるのはもちろん初めてなので、本番の前にリハーサルをして諸々のすり合わせを行う。

八重山そばの製麺部分はこちらが主導しつつ、スープや具に関しては泡さんが両親から受け継いだ作り方をベースとした。

「あまくま」は、沖縄の言葉で「あちらこちら」という意味だとか。このワークショップはまさにあまくまの文化交流。私にとっても学びが多い。

右が企画してくれた石垣島生まれの泡☆盛子さん、左は館長で新潟出身の佐藤真弓さん。 佐藤さんから「とりあえず一杯どうですか?」とウエルカム泡盛を勧められたが、初対面で緊張していたのでオリオンビールにしてもらった。

二人が用意してくれた食材や調理道具を使って、さぐりさぐり八重山そばを作っていく。本来は茹でた麺に油をまぶして冷ましたものを使うのだが、ワークショップでそれをやるのは大変過ぎるので生麺タイプとさせていただく。南の島で細かいことを気にしてはいけない。あまくま座スペシャルということで。

事前に家庭用製麺機を宅配便で送っておいたのだが、ほぼ鉄の塊なので検査時に怪しまれたのか、航空便ではなく船便になったことが来島直前に判明し(沖縄あるあるらしい)、急遽手荷物でパスタマシンを持ってきたのだが、こちらはオプションで購入した丸麺(スパゲティ)用の切り刃があるので、結果的に八重山そばっぽい形の麺を作ることができた。

肉は赤身肉を細切りにすると八重山そばらしくなるが、すっかり忘れていたので皮付きの三枚肉を用意してもらった。ダシ骨と呼ばれるぶつ切りの豚骨ミックスの存在に地域性を感じる。うちの近所でも売って欲しい。 三枚肉は下茹でするべきか迷ったが、手順の簡略化も兼ねて、ダシ骨と生から煮て1時間後に取り出して味付けすることにした。ダシ骨はこのままもう少し煮ておく。 一口サイズに切った三枚肉を、醤油、味醂、泡盛、黒糖、スープで煮込む。 鰹節は豚のスープに直接入れるのではなく、別の鍋で鰹出汁を煮出すことにした。ちなみに昆布を入れるか聞いたところ、泡さん曰く昆布は食べるものだから出汁用には使わないそうだ。 それぞれを濾して、豚と鰹の合わせスープが完成。ワークショップ形式なので味付けは各自が丼の中で行うスタイルとする。 製麺のリハーサルもする。小麦粉は金城製麺所から沖縄製粉の「さんにん」という沖縄そば用の粉(粗蛋白10.8%)を分けてもらった。かんすい少なめ、塩多めで八重山そばらしい生地を作る。 まったく使っていなかったスパゲティ用の切り刃が八重山そばのワークショップには最適だった。会場が粉だらけになるけれど、そこは諦めていただきたい。 かまぼこは煮込まずに細切りにした。 ネギは島ネギと呼ばれる細いもの。関東でお馴染みの太い長ネギはこちらだと育ちにくいのだろう。 諸々の用意ができたら麺を茹でる。 スープの味付けは石垣の塩や醤油でお好みの味に。味の素を入れると一気に店の味になる。

三人で作った生麺タイプのオリジナル八重山そばは、麺がツルッツルでとてもおいしかった。スープはすっきりしつつも物足りなさがない。「これでいい、いや、これがいい」という味だ。

石垣島で八重山そばを作るという長年の野望が叶い、すっかり満足してしまったのだが、そういえばこれはまだリハーサルなのだった。

普段は映画の上映をしている場所で手作りしたとは思えない出来栄えの八重山そば。 半分くらい食べたところで、泡さんお手製のコーレーグースとヒバーチを加えると、味がビシッと引き締まるんですよ。 ヒバーチの原材料はこの細長いイチゴみたいな実。ツタのように石垣によく生えている。 ところで公設市場1階の「ひとくち亭」には泡盛の飲み比べセットがあり、古酒(クースー)を頼んだら全部43度ですっかりヘロヘロになった。なかなか愉快な島だ。

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