【日本市況】円下落、物価下振れリスクと日銀ハト派化-金利が急低下

1日の日本市場は円相場が対ドルで下落している。日本銀行が経済・物価の見通しを引き下げて、さらに下振れリスクが大きいと指摘したことで、利上げが先送りされるとの見方が強まった。債券相場は大幅高(金利は低下)。

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  円は1ドル=143円後半まで下落した。日銀は金融政策決定会合で政策金利の無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%程度で据え置いた。維持は2会合連続で事前の予想通り。同時に「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で2025年度、26年度の経済成長率(実質GDP)と消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しを下げた。さらにともに「下振れリスクの方が大きい」とした。

  米トランプ政権の関税政策の直撃を世界が受けた後で初の日銀会合は、米国を含む経済や物価の見通しが不透明になったことで政策が維持された。焦点の今後について日銀は経済・物価の下押し圧力をみており、昨年3月に転じた利上げ方針に逆風が吹いている。市場も利上げが容易ではないと予想している。

  みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは日銀会合結果について、トランプ関税による悪影響が展望レポートに考慮されたとみられ「ハト派的だ」と評価した。同時に追加利上げを検討する姿勢に変化が見られていないとし、9月会合での可能性が7月よりも一段と高まったと予想した。

日本市場の為替・債券・株式相場の動き-午後2時6分
  • 円相場は対ドルで一時ニューヨーク終値比0.6%安の143円96銭
  • 長期国債先物6月物は前日比52銭高の141円17銭
  • 新発10年債利回りは4.5ベーシスポイント(bp)低い1.265%に低下
  • 東証株価指数(TOPIX)は前日比0.4%高の2677.21
  • 日経平均株価は1.0%高の3万6395円40銭

為替

  東京外国為替市場の円相場は対ドルで下落。日銀がこの日の金融政策決定会合で政策据え置きを発表し、物価目標の実現時期を後ろ倒ししたことで、円を売る動きが強まっている。

  野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは日銀会合の結果について、26年度の経済・物価見通しの下方修正が比較的大きく、25、26年度の政策委員のリスクバランスのばらつきが下向きに変わり、「想定の範囲内でハト派的な結果だった」と述べた。

  同時に27年度のコアコアCPIは2.0%予想を出しており、この見通し通りなら利上げを続けるとのメッセージは変わってないと指摘した。「ゲームチェンジャーになるような内容はなく、あくまでも一時的な円下落だろう」と述べ、植田和男総裁会見もバランスの取れた発言に終始するとの見方を示した。

  また三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは、展望リポートなど全体的に前回までの利上げに向けた勢いの強さが消えている印象だと指摘。物価目標実現の時期について「思っていたよりはっきりと後ずれを示した格好だ」と述べ、日銀総裁会見を控えて1ドル=144円台を試す展開だとみる。

債券

  債券相場は大幅上昇。日銀が展望リポートで物価見通しを下方修正し、利上げのタイミングが後ろにずれ込むとの見方が広がり買いが優勢だ。

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「展望リポートはここまでハト派に傾くかなという印象」として「5年債利回りが大幅低下するように債券は買いで反応した」と述べた。ただ「目標達成時期は先送りになるが、利上げペースがそれで遅くなるかは分からない」と述べた。

  5年国債利回りは一時0.82%と6bp低下して4月16日以来の低水準を付けた。金融政策変更の影響を受けやすい2年国債利回りは5bp低い0.62%。

  オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場が織り込む年内の利上げ確率は4割弱(昨日は6割強)に低下した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは展望リポートについて、2%の物価目標の実現時期を1年先送りするなど市場が想定していたより「ハト派」な印象だと指摘した。

株式

  日経平均株価は午後に上げ幅を拡大している。日銀が政策金利の据え置きを発表し、為替がドル高・円安方向に振れたことを好感した。

  大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、展望リポートは貿易交渉の進展を見込むなど前提条件は悪くないにもかかわらず、物価は26年度に2%を下回るとあり「随所にハト派的な感じが見受けられる」と指摘した。

  「日銀が慎重な状況を強めるという感触は高まり、株式市場にとっては追い風」と話している。

  一方で金利の先高観の剥落(はくらく)から、銀行や保険などの金融株が下落した。決算失望で村田製作所株や東京エレクトロン株などの一部の値がさ株の売りも足かせになっている。東証株価指数(TOPIX)の上げは日経平均よりも小さくなっている。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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