NY市場サマリー(10日)ドル下落、利回り低下 ダウ878ドル安

<為替> ドルが下落した。トランプ米大統領が中国に対する関税引き上げを示唆したことを受け、貿易戦争による米経済への影響を巡る懸念が再燃した。

主要通貨に対するドル指数は0.4%安の98.99。それでも週間では、1.66%高と2024年9月以来最大の伸びとなる見込み。

トランプ大統領は10日、対中関税の大幅引き上げを検討していると警告し、月内に予定していた中国の習近平国家主席と会談する「理由はない」と発言。自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「中国がレアアース(希土類)に関連するあらゆる生産要素に輸出規制を課す計画という書簡を世界各国に送っている」と非難した。

トランプ氏の発言を受け、ユーロと円は対ドルで上昇。一方、豪ドルなど資源国通貨は下落した。

ドル/円は0.86%安の151.73円。ただ、週間では2.9%高と、上昇幅は24年9月以来の大きさになる見通し。自民党総裁に選出された高市氏の財政拡張路線を背景に、日銀による利上げ観測は後退している。

ユーロは0.38%高の1.1607ドル。週間では、フランスの政治的混乱を背景に、7月以来最大の下落幅を記録する見通し。

暗号資産(仮想通貨)のビットコインは2.98%安の11万7568ドル。

NY外為市場:

<債券> 国債利回りが数週間ぶりの低水準を付けた。トランプ大統領が対中関税の大幅引き上げを示唆したことを受け、安全資産とされる国債の買いが膨らんだ。

トランプ大統領は10日、中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げることを検討していると警告し、月内に予定していた中国の習近平国家主席と会談する「理由はない」と発言。中国がレアアース(希土類)に関連するあらゆる生産要素に輸出規制を課す計画という書簡を世界各国に送っていると批判した。

これを受け、報復的な貿易戦争が再開する可能性への懸念が広がり、10年債利回りは一時、9月中盤以来の低水準を付けた。

またこの日は、米連邦準備理事会(FRB)当局者の発言が相次いだ。米セントルイス地区連銀のムサレム総裁は10日、FRBには労働市場を支えるためにあともう1回の利下げを実施する余地があると述べた。一方、ウォラーFRB理事は、民間データが軒並み雇用市場の低迷を示し、追加利下げの根拠を裏付けているとしつつも、0.25%刻みの「慎重な」利下げを進めるべきという見解を示した。
政府機関の一時閉鎖により経済指標の発表が延期される中、ミシガン大学が発表した10月の消費者信頼感指数(速報値)は55.0と、9月確報値からほぼ横ばいで推移した。

取引終盤で、指標となる10年国債利回りは9.1ベーシスポイント(bp)低下の4.057%。一時、1カ月超ぶりの低水準を付けた。

30年債利回りは9.6bp低下の4.637%。取引序盤で一時、9月5日以来の低水準まで低下した。

2年債利回りは7.5bp低下の3.512%となった。

2・10年債の利回り格差は52.8bpと、前日の54.30bpから縮小した。

米金融・債券市場:

<株式> トランプ米大統領が中国に対する関税を大幅に引き上げることを検討していると警告したことを受け売り込まれ、主要3指数は急落して終了した。

トランプ大統領はこの日、中国がレアアース(希土類)に関連するあらゆる生産要素に輸出規制を課す計画という書簡を世界各国に送っているとし、中国が世界経済を「人質」に取ろうとしていると自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿。中国製品に対する関税の大幅な引き上げを検討するとしたほか、中国の習近平国家主席と会談する「理由はない」とした。
トランプ氏の投稿が突然だったため、市場は不意打ちを受けて動揺。すでに緊張が高まっている米中関係が悪化する恐れがあるとの懸念から主要3指数は急落した。ダウ工業株30種(.DJI), opens new tabは約878ドル下落して引けたほか、ナスダック総合(.IXIC), opens new tabは約3.5%安、S&P総合500種(.SPX), opens new tabは約2.7%安で終了。ナスダック総合とS&P総合500の1日の取引としての下落率は4月10日以来最大となる。
レアアースが懸案となっていることを背景にフィラデルフィア半導体株指数(.SOX), opens new tabは6.3%下落。市場の不安心理を映すCBOEボラティリティ指数 (.VIX), opens new tabは6月19日以来の高水準を付けた。
米市場上場の中国株は軒並み急落。中国電子商取引大手アリババ・グループ、中国の電子商取引大手、京東集団(JDドットコム)、格安電子商取引(EC)サイト「Temu(テム)」を展開する中国のPDDホールディングス(PDD.O), opens new tabは5.3─8.5%下落した。
このほか、米半導体大手クアルコム(QCOM.O), opens new tab は7.3%安。中国国家市場監督管理総局(SAMR)がクアルコムによるイスラエルの半導体メーカー、オートトークス買収を巡り、独占禁止法違反の疑いで調査を開始したと発表したことが嫌気された。

ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を4.36対1の比率で上回った。ナスダックでも4.93対1で値下がり銘柄が多かった。

米取引所の合算出来高は242億6000万株。直近20営業日の平均は201億5000万株。

米国株式市場:

<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物 相場は、米中貿易戦争再燃への懸念が浮上する中、反発した。中心限月12月物の清算値 (終値に相当)は前日比27.80ドル(0.70%)高の1オンス=4000.40ドル。週間では2.34%高だった。

NY貴金属:

<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米中の対立激化をめぐる懸念などを背景に売りが加速し、大幅続落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物は前日清算値(終値に相当)比2.61ドル(4.2 4%)安の1バレル=58.90ドルと、中心限月清算値ベースでは5月初旬以来約5カ月ぶりの安値水準となった。週間では3.25%安。12月物は2.55ドル安の58. 48ドル。

NYMEXエネルギー:

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