いよいよ日本でも「米国離れ」の兆し? 米国と中国のどちら側にもつかないが「当たり前」の時代に 弁護士・猿田佐世
トランプ大統領の二期目就任以降、世界で米国離れが加速している。東南アジア諸国はもとより、フランスも米中対立では中立のスタンスを表明。日本の日米同盟に対する姿勢はどうなるのか。シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」代表で、弁護士(日本・ニューヨーク州)の猿田佐世さんが寄稿した。 【図解】日本が取るべきプランBとは?米国への抱きつき戦略に代わるか * * * ついにフランスまで「米中どちらの側にもつかない」と明言した。 フランスのマクロン大統領は、5月30日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリア対話)で講演し、米中の「いずれかを選べば、世界の秩序を壊すことになる」「欧州とアジアが協力して自立のための連合、脅迫されないための連合を築くことを呼びかけたい」と訴えた。 トランプ大統領の二期目政権誕生以降、ウクライナ戦争について米国はウクライナへの支援を一時停止し、ロシア寄りの姿勢をとり続けている。また、欧州防衛は欧州に任せるとし、北大西洋条約機構(NATO)の最高司令官の地位から米国が退くことも検討していると報じられている。 これを受けた欧州では米国離れが著しい。私が5月末に夕食を共にした欧州議会議員(ドイツ)は、「兄貴(big brother)は去った」と筆者に述べた。 ■「米中いずれか選ばせるな(Don’t make us choose)」 フランスに先んずること5年以上前から、既に、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々は「米中いずれの側も取らない」と明確に意思表明してきた。ASEANでの政府関係者・有識者相手の世論調査(2025年)において「米中対立下でASEANはどう対応すべきか」との質問に「米中いずれかを選ばざるをえない」と答えたのはわずか6.1%。これに続く「米中いずれかを選ばねばならないとしたら、いずれを選ぶか」との問いでは、2020年以来毎年行なわれるこの調査において、24年には初めて中国を選ぶ回答者が過半を超え(中国50.5%、米国49.5%)、25年にはその差はさらに開いている(中国52.3%、米国47.7%)(以上、ISEAS - Yusof Ishak Institute)。 筆者は、この間、この「米中いずれか選ばせるな(Don’t make us choose)」というASEANの姿勢について、「日本も、中国との貿易なしには国がもたないのはASEAN同様だ」「なぜ日本は、もう少しだけでもバランスの取れた外交ができないのか」と訴え続けてきた。