ティム・クック、Apple退任へ。「ジョブズの影」を消すためにやめたこと、続けたこと
Appleのティム・クック氏が、ついにその職を退くことになりました。
クック氏の退任にあたり、改めて注目されているのが、彼がいかにして「ジョブズの影」を克服し、Appleに独自の魂を吹き込み続けたかという点です。
逆説的なことですが、クック氏は、「ジョブズ流のリーダーシップ・スタイルは忘れるように」という、ジョブズ氏自身が遺したアドバイスに従うことで、ジョブズ氏の精神を今もAppleの中で生かし続けています。
クック氏は3月8日に放映されたテレビ番組「CBSニュース サンデーモーニング」内のインタビューで、そう振り返っています。
ジョブズ氏はクック氏に、自分自身のスタイルでAppleを率いるよう求めた
自らが率いていたピクサー・アニメーション・スタジオが、ディズニーに買収されたあと、ジョブズ氏はあることに気付きました。
それは、ディズニーのチームが、「(創業者の)ウォルト・ディズニーだったら、自分たちが直面している状況にどう対処していただろう?」という疑問に答えを出そうとして、身動きが取れなくなる場面が多い、ということでした。
フォーチュン誌の記事によると、ジョブズ氏は、自らの後継者となるクック氏に、ディズニーのチームと同じようなプレッシャーを背負ってほしくなかったようです。
「私はこのアドバイスを、これからも決して忘れないでしょう。
そして、私にとっては本当に素晴らしい贈り物でした。
『スティーブならどうしていただろう?』という問いの重荷から、私を解放してくれたからです」と、クック氏はCBSテレビのインタビューで述べています。
私は、外野の言うことには気にせず、ひたすらに『自分なりのベストを尽くそう』と思いました。
それでも、2011年8月にCEOに就任して以来、クック氏は、ジョブズ氏のリーダーシップ・スタイルからいくつかの要素を受け継ぎ、今も維持しています。
「(ジョブズ氏は)コラボレーションこそ、素晴らしい結果を引き出すカギだというビジョンを抱いていました」と、クック氏は前述のインタビューで、聞き手の米CBSの記者、デビッド・ポーグ氏に語っています。
つまり、『1足す1は2ではなく、3にもなる』という考えです。アイデアは共有し、議論を重ねることで、さらに大きく、より良いものになる、と。
アイデアがひらめいたら、たとえ夜の10時でも仲間に電話をかけるほどコラボレーションを大事にしていれば、信じられないほど素晴らしいものがそこから生まれるはずだ、ということでした。
今なおAppleに息づく、議論とコラボレーションを重んじるジョブズ氏のビジョン
議論を重視するこうしたコンセプトは、ポーグ氏の近著『Apple: The First 50 Years』(原題)でも論じられています。
ポーグ氏によれば、ジョブズ氏はこれを、ドラム型の容器に石を入れて磨く機械、ロックタンブラーが、ゴツゴツした見栄えの悪い石を美しい石へと変える工程に喩えたとのことです。
この本によれば、ジョブズ氏は、「お互いにぶつかり合い、口論をし、時にケンカし、大声を上げたりもしながら一緒に働いていく中で、メンバーはお互いを磨き合い、アイデアも磨かれる」と語ったといいます。
この一節は、Business Insiderの過去記事でも紹介されています。
ミーティングで、参加者全員が自分のアイデアをメンバーと共有したなら、その場にいた人はみな、そこで達した最終的な結論に責任を持つことになります。
つまり、「決断を、誰もが自分のものとする」ということです。これは、Appleのマーケティング責任者だったフィル・シラー氏が、ポーグ氏に語ったことです。
クック氏は、CEOとして独自の道を切り開いていく中でも、ジョブズ氏から受け継いだ、コラボレーションと議論を重視するAppleの企業文化を守ってきたと、フォーチュン誌の記事は伝えています。
Appleの50年を振り返る
ジョブズの仕事術について学ぶ
Originally published by Inc. [原文]
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