「日本の新幹線」は習近平にはマネできない…のぞみを毎時13本走らせる「世界最強インフラ」の真の実力(プレジデントオンライン)
日本の新幹線は海外からも高く評価されている。一体なぜか。鉄道ジャーナリストの東香名子さんは「中国の高速鉄道の惨状を見れば、いかに日本の旅客輸送システムが優れているかがよくわかる」という――。 【写真をみる】40人死亡事故で「証拠隠し」疑惑の中国の高速鉄道 ■1300人の乗客を乗せ、1秒の狂いなく走る 今年のゴールデンウィークも各地が大にぎわいだ。東京駅の新幹線ホームは、大きなスーツケースを引く家族連れや、久しぶりの帰省に胸を躍らせる人々で、活気に満ちあふれる。 2026年は最大12連休にもなる大型連休。4月24日から5月6日までの期間、東海道新幹線の予約数は153万席(4月9日時点)。これほど多くの人が移動するなか、私たちが当たり前のように享受している光景について、今一度考えてみたい。 わずか数分おきに、約1300人もの乗客を乗せた巨大な列車が、1秒の狂いもなくホームに滑り込み、そして静かに、かつ正確に目的地へと走り去っていく。この世界に類を見ない超高密度の運行こそが、巨大な移動需要を支える「心臓部」だ。 しかし、この「日本の当たり前」が、いかに異次元の完成度であるか。それを痛感させてくれるのが、海の向こうで「時限爆弾」と化している中国主導の高速鉄道計画だ。
■巨額の負債と「幽霊駅」の存在 中国の習近平政権が世界に誇示する「総延長5万キロ」の高速鉄道網。この数字は一見すると、驚異的な国家の発展を象徴しているように見える。しかし、その内実を覗けば、そこにあるのは「持続可能性」を完全に無視した、あまりに無謀な国家規模の自転車操業ともいえる。 運営主体である中国国家鉄路集団の債務総額は、実に約133兆円(約6兆1947億元)にも達していると日経新聞は報じた(2025年6月末時点)。日本の国家予算を上回るこの巨額負債は、もはや運賃収入で返済できるレベルをとうに超えている。 それどころか、毎日の収入のほとんどが借金の「利息の支払い」だけで消えていくという、出口のない迷路に迷い込んでいるのではないか。 「時限爆弾」ともいえる天文学的な額の負債。なぜ抱えることになったのか。それは、経済合理性を度外視し、党のメンツと政治的アピールのためだけに、需要のない過疎地にまで強引に線路を敷き続けたからとも言えそうだ。 その象徴が、中国全土に点在する「幽霊駅」だ。立派な駅舎を建設したものの、一度も列車が止まらない、あるいは利用者があまりに少なすぎて早々に閉鎖された駅のことを、俗にこう呼ぶ。 こうした幽霊駅は26カ所以上もあると、中国メディアの「中国経営報」により伝えられている。建設ありきのプロジェクトが生んだ、コンクリートの残骸。これこそが、利用者のニーズを置き去りにした「量」の追求のなれの果てだ。 ■幹部の死刑判決も出た腐敗した「鉄道省」 さらに、国家規模の鉄道プロジェクトは腐敗の温床でもある。過去に存在した鉄道省は政府内でも独立性が高く、不透明な資金の流れが利権供与や賄賂の温床となっていた。 鉄道相を歴任した人物は収賄罪に問われ、劉志軍は執行猶予つきの死刑判決に、後任の盛光祖には懲役15年の有罪判決が下った。なお鉄道省は2013年に解体され、中国国家鉄路集団として生まれ変わっている。 こうした透明性なき巨大インフラ投資は、システムを内側から腐らせ、結果として安全管理という鉄道の「一丁目一番地」さえも危うくしている。中国高速鉄道の建設をめぐっては、手抜き工事についての告発も出ているという報道も散見される。 「世界一の長さ」という看板を守るために、中国は今、国家全体の未来を担保に差し出している。「量」だけを追い求めた国の、避けられない危険な末路ともいえる。 こうした状況は中国国内だけにとどまらず、中国が手掛けたインドネシアの高速鉄道は、年間数百億円の赤字を垂れ流している。「走れば走るほど赤字」という不名誉な噂も聞かれる。 海外の鉄道の残念な話を聞くと、私たちが当たり前のように乗っている「日本の新幹線」がいかに素晴らしい異次元の存在であるか。まざまざと浮かび上がってくるのだ。