マクロスコープ:高市政権の成長投資、人手不足が制約 物価押し上げ懸念も
[東京 19日 ロイター] - 第2次高市早苗政権の発足に伴い、積極財政と成長投資戦略が本格的に動き出す。政府は設備投資を経済成長の「エンジン」と位置付けるが、足元の現実は楽観を許さない。慢性的な人手不足と供給制約が障害となり、投資計画の達成を難しくしている。さらに、投資需要の拡大自体が中長期的に物価上昇圧力となり成長を削ぐリスクも警戒されている。
高市政権における重要な政策転換の本丸は「責任ある積極財政」だ──。首相は18日の会見で「主要国に比べて圧倒的に足りないのは国内投資。政府が一歩前に出て、さまざまなリスクを最小化する危機管理投資、先端技術を花開かせる成長投資により官民協調で投資を大胆に促していく」と強調した。
<計画に追いつけず>
設備投資を巡っては、企業の投資意欲と現場での実行の間の「ギャップ」が鮮明だ。日銀短観(12月調査)では、2025年度の設備投資計画(全規模・全産業)が前年度比8.9%増と高い伸びを示した一方、25年10─12月期の実質設備投資は前期比0.2%増にとどまり、民間予測(0.7%増)を大きく下回った。
企業活動における共通の課題は、深刻な人手不足だ。日銀短観の雇用人員判断(全規模・全産業)はマイナス38と、バブル期並みの不足超となっている。建設やエンジニア人材の枯渇は投資案件の遅延につながりやすく、高水準の投資計画も実行段階での「後ずれ」や「凍結」というリスクをはらむ。
<政策の効果不透明、副作用も>
こうした中、政権は即時償却を含む設備投資減税で企業の背中を押す構えだ。とりわけ投資の単価が大きく回収期間が長い分野では有効な政策とみられる。官邸筋は「設備投資の促進には税制が一番効く」と自信を示す。
もっとも、税制が「追加的な投資」を創出するかは不透明だ。将来の需要への確信が乏しい中では、計画の前倒しに寄与しても、ゼロから新たな能力増強投資を生む効果は限定的との見方は根強い。政府の「目利き」が不十分であれば、生産性の低い分野の温存につながるリスクもある。
製造業では、自動車や半導体などの輸出分野で競争力強化を意識した投資が続く見通しだが、これらは外需の不確実性に左右されやすい。また、経済安全保障の観点で国内に生産拠点を設けるのも供給網の再構築という側面が強く、日本全体の経済を活性化させるかは不透明だ。
一方、非製造業の場合は、人手不足への対応色が強い。宿泊・外食、物流、建設などでは労働力確保が経営課題となっており、省力化やデジタル化投資が進む。ただ、これらは需要拡大に備えた拡張投資というより、労働制約を補う性格が強い。
みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「省力化投資や研究開発投資が引き続きけん引役を担うだろうが、最終需要の顕著な拡大や人手不足の解消をなくして、本格的な能力増強投資の発現を期待することは難しい」との見方を示す。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「今後も深刻な人手不足が経済成長の足かせとなる」と話す。企業は省力化投資を中心に設備投資を継続していくとみられるものの、国内で生産能力の大幅な増強が図られることは想定しにくいと指摘。こうした状況下での財政措置は「実質成長率を大幅に引き上げることはなく、その効果のかなりの部分は、物価上昇圧力として顕在化する」と警鐘を鳴らす。
(杉山健太郎 編集:橋本浩)
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