セブン&アイ、30年度に営業総利益3.4兆円目指す-北米で1300店出店
セブン&アイ・ホールディングスのスティーブン・デイカス社長は6日、事業変革を含めた戦略について公表した。2030年度に営業総利益を24年度比26%増の約3兆4000億円に引き上げる計画だ。カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールが買収提案を撤回し、コンビニ事業に専念できる環境でいかに株価を向上させられるか、手腕が問われる。
発表資料によると、北米事業運営のセブンーイレブン・インク(SEI)傘下で、30年度までに約1300店を新規出店。ガソリン流通の上流にも投資して事業を拡大する。米国ではガソリンスタンドの併設店が多く、給油が主な来店動機となっている。国内では約1000店を純増させ、新しい店舗形態で変化の激しい顧客ニーズを取り込む。
アクティビスト(物言う株主)からの外圧やクシュタールからの買収提案に揺さぶられてきたセブン&アイにとって、市場の評価を得ることは喫緊の課題だ。現状のままでは、再び標的にされるリスクがつきまとう。
デイカス氏は戦略の実現により1株当たり利益(EPS)を30年度に約210円、投下資本利益率(ROIC)を12.6%とそれぞれ2.5倍程度引き上げるとした。この結果、クシュタールが提案した1株2600円は自力で達成できる述べた。現在の株価は2000円前後だ。
前社長を踏襲
主な事業戦略は食品を軸に成長を目指すもので、井阪隆一前社長の路線を踏襲している。
一方、30年度までに総額2兆円の自社株買いをするとした還元策は、3月の社長交代会見時にデイカス氏が打ち出した新たな施策だ。配当を合わせると、総額は2.8兆円になる。
自社株買いの原資は、26年下半期を目指す米国事業の新規株式公開(IPO)で調達する。短期的な株価向上策であることから、投資家からはクシュタールの撤退によって必要性が薄れており、完全子会社のまま成長させる方が良いとの見方も出ていた。
これに対しデイカス氏は、IPOによって米国での買収や成長投資に使える資金も増えると説明。予定通りに準備を進めるとした。
クシュタールに反論
説明会はクシュタールが7月に買収提案を撤回して以降、セブン幹部が初めて交渉について直接語る場にもなった。
デイカス氏はクシュタールが撤退した理由について、買収によって米国の独占禁止法に抵触する可能性が高く、規制をクリアする方法が難しかったことや前期の業績の悪化でプレッシャーがかかっていたのではないかと述べた。
セブンは交渉で独禁法の問題を解決する方法をクシュタールに繰り返し求めたものの、具体的な解決策は得られなかったと主張。「真剣に買収したいと考えるなら、テーブルに座って、問題点を一つ一つひも解く作業が必要」にも関わらず、クシュタールが日本で報道陣を前に一方的な主張を展開したことは「生産的ではなく、問題解決にならなかった」と批判した。