米金利5%超えは「リーマン前夜」の再来か?共通点と相違点を整理(窪田真之)
10月19日の日経平均は前週末比407円安の6万4,916円でした。米国のAI新興企業コアウィーブの信用不安に絡むショック余波が続いています。少し気になるのは「リーマンショック前」と似てきたという声があることです。確かにいくつか共通点があります。ただし私は「似ている」と思いません。その理由を説明します。
この記事の目次 [閉じる開く]リーマンショック前、2006年4月に米長期(10年)金利は一時5%を超えました。それから2年以上たった2008年9月にリーマンショックが起こっています。
今また、米長期金利が5%を超えてきたことから、リーマンショック前と同じような危機につながるリスクが警戒されています。
<NYダウと米長期(10年)金利推移:2004年1月~2026年10月(16日)>
出所:QUICKほか各種資料より楽天証券経済研究所作成
リーマンショックは、普通の景気後退と異なります。「世界景気後退と金融危機が同時に起こった」ことでショックが大きくなりました。その意味で特異です。
通常の循環的な景気後退だけならば、日経平均株価やダウ工業株30種平均(NYダウ)は高値から安値まで3割前後の下落で済むところです。ところが、リーマンショックは金融危機を伴うショックだったために5割を超える下落となりました。底値をつけた後、高値を回復するまでに長い年月を要しました。
リーマンショック前、さまざまな予兆が出ていた
リーマンショックが起こる1年以上前、2007年の半ばには、すでに金融危機の予兆がありました。米国のサブプライムローン(低信用の住宅ローン)を組み込んだ金融商品が世界中に販売されていましたが、その焦げ付きが増えてきました。そのため、サブプライムローンへの投資を膨らませていたファンドや金融機関の信用リスクが問題となり始めていました。
<NYダウと米長期金利:2005年末~2009年6月末>
2007年のころから、米サブプライムローン問題が波及して、いずれ米景気は後退期に向かうという声はありました。ただし、2007年時点では、世界景気は好調を維持していました。サブプライムローン問題で米景気が減速しても、ブリックス(ブラジル、ロシア、インド、中国)の高成長が続くので、世界景気は盤石という見方が主流でした。
2008年になると世界的なインフレが加速し、ハイパーインフレ懸念が取りざたされるようになりました。新興国では軒並みインフレ率が10%に迫りました。インフレによって消費が押しつぶされるリスクはさらに高まり、リーマン・ブラザーズなど巨大な金融機関の信用不安も高まっていました。
それでも、リーマン・ブラザーズは「大き過ぎてつぶせない」ため、「米国政府が支援するから大丈夫」という楽観論が主流でした。
結局2008年9月15日に、リーマン・ブラザーズの破綻が発表されると、世界的な金融危機と景気後退が同時に起こり、世界中の株が暴落しました。
このように、リーマンショックは2008年9月に起こりましたが、その予兆は2007年からあり、2008年にはそれが強まっていました。
リーマン前と今との比較
以下、リーマン前と現在の状況比較を挙げていきます。
【1】リーマン前は米住宅ローンブーム、今はAI投資ブーム
リーマン前:米国では住宅ローンブームが起こっていました。欧米の巨大金融機関が、こぞって米国のサブプライムローン債権を組み込んだ仕組み商品の販売や投資を拡大していました。
現在:米国のハイパースケーラーおよび新興のAI企業が巨額のAI投資を拡大しています。それに伴い、社債発行など資金調達を拡大しています。
【2】リーマン前、世界的な金利上昇とインフレ加速で、金融危機・景気失速の予兆が出た
リーマン前:最初に長期金利が5%を超えた2006年には、金融危機や景気失速など、何も予兆がありませんでした。2007年以降、金利、インフレ上昇による危機の予兆が現れました。
現在:コアウィーブ・ショックによって、AI投資の信用不安が現れました。ただし、ハイパースケーラーの財務、収益は健全で、2007年時点のような不安とはなっていません。
世界景気も好調です。世界的なインフレ上昇が、世界景気に与える影響が不安視されるものの、まだ2008年のころのようなハイパーインフレの懸念は出ていません。
結論として、今はまだ世界的な景気失速や金融危機のはっきりとした予兆はありません。すぐにリーマンショックのような危機が起こることはないと思います。
リーマン前にたとえると、今の不安は、2006年4月に長期金利が5%を超えたころと似ています。2006年には、世界景気も金融情勢もまだ良好で、NYダウは引き続き上昇基調を保っていました。危機の予兆が出てくるのは2007年からでした。
これを現在に当てはめるならば、今はまだはっきりした予兆はありません。2027年にかけて、世界景気失速や金融危機の予兆が強まるかどうかを、慎重にウオッチしていく必要があると思います。
これから、AI景気が失速して危機が起こらないと断定することはできません。起こると断定することもできません。ここから先、AI投資がどうなっていくか、しっかり見て判断する必要があります。
今すぐ弱気になるのは早すぎる
私は、AI投資はやや行き過ぎで、2027年にかけて減速する局面があると思います。それによって世界景気が減速することもあり得ます。ただし、それは普通の景気減速で、リーマンショックのようなバブル崩壊はないと予想しています。
ただし、未来のことは誰にも分かりません。もっとたくさんの手がかりが現れるまで、過度に弱気になるべきではないと思います。
私は日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。とはいえ、短期的なショックはいつでも起こりえるので、リスク管理は大切です。時間分散しながら、割安な日本株を買い増していくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。
3分でわかる!今日の投資戦略: 2026年10月19日:コアウィーブ・ショック続く。日本株は押し目買い好機(窪田真之)
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
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1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。住友銀行、住銀バンカース投資顧問、大和住銀投信投資顧問を経て2014年より現職。日本株ファンドマネージャー歴25年、2000億円以上の大規模運用で好実績をあげたスペシャリスト。
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