初の女性首相・高市氏、女性閣僚は2人止まり-「北欧並み」実現せず

日本で女性として初めて首相に就任した高市早苗氏だが、女性閣僚の指名は2人にとどめた。最近の岸田第2次改造内閣で記録した5人に比べると少ないが、財務相に初の女性を起用したことが目を引く。

  財務相に指名されたのは元財務官僚で、今月初めの自民党総裁選で高市氏の推薦人となった片山さつき参院議員だ。もう1人の女性閣僚は経済安保相に起用された小野田紀美参院議員。

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  高市氏は最近、閣僚の女性比率を北欧並みに引き上げたい意向を示していた。北欧では閣僚の半数近くを女性が占めることも珍しくなく、フィンランドでは現閣僚の19人のうち11人が女性だ。

  高市氏は今月初めの自民党集会で、女性という理由だけで閣僚に選ぶつもりはないとしつつ、能力があり、国に尽くす意欲のある女性を多数指名したいと述べていた。

  世界経済フォーラムによる最新のジェンダー・ギャップ指数で、日本は148カ国中118位。政治や経済への参加のスコアがとりわけ低かった。

  日本で女性閣僚が5人に上ったのは2001年が初めてで、それ以来この上限を更新していない。数十年にわたり進展がないことを浮き彫りにしており、直近の石破政権で女性閣僚はわずか2人だった。

  高市氏は社会観が保守的であるため、日本では男女平等の実現に先頭に立って取り組んでいる存在とは見なされていないことが多い。日本の皇族には男性が少ないが、高市氏は男系男子による皇位継承の維持を支持している。結婚後の夫婦別姓にも賛成していない。

  労働力人口の減少に見舞われる日本では近年、女性の労働参加率は改善した。だが、大幅な賃金格差は残る。2023年に行われた政府調査によると、男性の賃金を100とした場合の女性の賃金は74.8に過ぎなかった。

  早稲田大学の中林美恵子教授(政治学)は「女性の政治家が表舞台に立つのは象徴的で祝福すべきなのは確かだが、本当に重要なのは派手な見出しではなく、日本の女性の地位や社会生活が実際に変わるかどうかだ」と指摘。

  「夫婦別姓や男女間の賃金格差といった問題は、女性の仕事と私生活の交差点にある。高市氏がこれらの問題にどこまで力を注ぐかが本当の問題で、結局のところ、政権の優先順位ということになる」と続けた。

  政府の要職に女性を引き上げる上で問題の一つは、女性議員がそもそも少ないことだ。衆議院で女性議員の割合は約16%で、下院として考えた場合の世界平均の27%を大きく下回る。

  さらに、不安定な政治状況のなか政権を発足させた高市氏は、危機的状況の際には女性がトップに起用されやすくなるものの、地位は極めてぜい弱で、失敗の可能性も高いという「ガラスの崖」と呼ばれるリスクがある。欧州連合(EU)離脱方針を決定した直後に英国で首相となったメイ氏はまさにこの落とし穴にはまり、EU離脱を決着させることができないまま首相退陣を余儀なくされた。

原題:Japan PM Takaichi Picks Just Two Other Women as Cabinet Members(抜粋)

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