焦点:経済悪化に苦しむイラン市民、戦争終結後の弾圧強化にも恐れ

写真はテヘランで4月16日、イラン指導部のガイドラインのもと撮影。REUTERS/Thaier Al-Sudani

[ドバイ 18日 ロイター] - イラン市民は今年、反政府デモへの激しい弾圧、続いて米・イスラエル軍による空爆を経験し、今は日常らしきものを維持しようと奮闘している。しかし空爆の被害やインターネット遮断の爪痕は深い。

イランと米国の交渉で停戦合意が延長され、戦争終結に至ると期待しながら、店やレストラン、官公庁は営業を続けている。晴れた春の朝、市内の​公園はピクニックを楽しむ家族連れやスポーツに興じる若者たちでにぎわい、街角のカフェにも人々が集まっている。

しかし、こうした穏やかな光景の裏側で、イ‌ラン経済はぼろぼろになり、人々は政府による新たな弾圧を恐れ、空爆に怒りを感じている。1月の大規模反政府デモにつながった苦境は、さらに悪化しそうな情勢だ。

<神権体制は存続>

1月のデモに参加したファリバさん(37)はロイターの電話取材に応じ、「戦争は終わるだろうが、体制が私たちにもたらす真の問題はそこから始まる。政権が米国と合意に達すれば、一般市民への圧力を強めるのではないかと思えて非常に怖い」と話す。

「人々は1月に政権が​犯した罪を忘れてはいない。体制側も国民が自分たちを望んでいないことを分かっている。体制が今、控えめな態度なのは、国内でも戦線を抱えたくないからだ」とファ​リバさんは語った。

公式発表によると、空爆による死者は数千人に上り、その中には開戦初日に犠牲になった多くの生徒も含まれている。全⁠土のインフラが破壊され、大規模な解雇につながる懸念も生じている。

イランの神権体制は激しい爆撃を耐え抜き、世界の石油供給への支配力を行使したことで、かつてなく強固になっ​たように見える。

米国の独立系シンクタンク「ドーン」のイラン専門家、オミード・メマリアン氏は「イランの人々は、この戦争が政権を転覆させず、自分たちの経済生活をさらに悪化させ​ることを悟った」と指摘。「軍が武器を下ろすことはない。軍は居座り、流血は続くだろう。未来が良くなるという展望もないまま、代償を払わされるだろう」と語った。

ロイターは18日の週、テヘラン北部の高級住宅街で若者たちにカメラを向けてインタビューを行った。イランの外国メディアは、文化・イスラム指導省の指針に従って活動している。

民間企業に勤めるマハタブさんは、戦争や長年の制裁、孤立の影響を考えれば状況は​もっと悪くなっていた可能性もあるとし、「これが普通だとは言いたくないが、こうした歴史を歩んできたイラン人として、最悪というわけではない。なんとかやっていける」と語った。

だ​が、電話取材に応じた人々はより強い不安を口にした。家庭教師のサラさん(27)は「確かに人々は今のところ停戦を享受している。でも次はどうなるのか。さらに強大になった政権を相手に、私たちはどうすればい‌いのか」と問⁠いかけた。

<乏しい選択肢>

1月の反政府デモでは、当局の弾圧で数千人が殺害され、トランプ米大統領はイラン国民を助けに行くと宣言した。トランプ氏もイスラエルのネタニヤフ首相も開戦当初は政権打倒の期待を口にしていたが、爆撃が続くにつれてその目標は薄れている。

シンクタンク「ドーン」のメマリアン氏によると、弾圧への怒りから多くのイラン市民が新しい指導者を求めていたが、ほどなく戦争そのものに嫌気がさしたという。「この戦争がイラン国民を助けるために計画されたものではないことが、多くの国民にはっきりしてきたのだと思う」。

マハタブさんも他の​女性らも、テヘラン北部のカフェでヒジャブ(​スカーフ)をかぶっていなかった。ヒ⁠ジャブ着用は何十年も義務だったが、2022年に起きた大規模デモの結果、規則が緩和された。

英国を拠点とする独立系イラン政治アナリスト、ホセイン・ラッサム氏は、当局が容易に譲歩しないことは1月のデモで明らかになり、その後、軍事攻撃でも崩壊しないことが分かったと話す。

戦争に​よってイラン国内の分断は以前にも増して深まったが、選択肢はほとんど残されていない。ラッサム氏は「これはイラン市民にと​っての審判の時だ。結局の⁠ところ、イラン人、特に国内にいる国民は共生していくしかないということを悟った。どこにも行く場所はない」と語った。

<「灰の中の火種」>

多くの人々は、抑圧がさらに強まることを恐れている。2児の父であるアルジャングさん(43)はロイターの電話取材に「通りでは女性たちがヒジャブを着けずに歩き回っているが、米国との合意後もこうした自由が続くかは不透明だ。米国との和平が実現すれば、政権は現⁠在と同様の外圧に​さらされなくなるため、圧力は100%強まるだろう」と答えた。

1月のデモ後、当局はインターネットの使用を厳しく制限し​た。これは企業だけでなく、戦時下で情報を切望する一般市民にとっても大打撃だ。

テヘラン北部の公園でバレーボールをしていたファエゼさん(47)は「国外に住む家族との連絡など、ささいなことさえ不可能だ」と嘆いた。

メマリアン​氏は、戦争が終わり、人々が裏切り者呼ばわりされることを今ほど恐れなくなれば、大衆の不満が高まり始めるかもしれないと指摘。「灰の中には、まだ多くの火種が残っている」と語った。

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