輸出4カ月連続減、アジア・欧州増で減少幅縮小

8月の対米貿易黒字は前年同月比で半減した。関税措置の影響で自動車や同部品が振るわず、輸出が大幅に減少したことが背景にある。

  財務省の17日の発表によると、輸出から輸入を差し引いた対米貿易収支は前年同月比50.5%減の3240億円の黒字となり、黒字幅は2023年1月(2781億円の黒字)以来の水準まで縮小した。対米輸出は13.8%減と21年2月(14.0%減)以来の落ち込み。5カ月連続のマイナスで、2桁台の減少幅となるのは4カ月連続。

  今回の結果は、24年度に9兆円に達していた対米貿易黒字が、関税措置により縮小しつつある状況を示している。トランプ米大統領は今年2月の日米首脳会談で、対日貿易赤字を解消したいと発言していた。

  SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、対米貿易黒字の縮小は関税の影響が背景にあると指摘。その上で「日米合意で自動車の輸出が持ち直しても、その他の品目が一律関税の影響を受け続ける」とし、当面は黒字幅が拡大傾向に反転することはないだろうと分析した。

  日米両国は7月、対米輸出の約3分の1を占める自動車と同部品に課せられていた25%の追加関税を見直し、既存税率と含めて15%とすることなどで合意。輸入品に一律に課す関税の引き下げと合わせて今月16日に発効した。合意に基づき、8月7日にさかのぼって適用される。

  日本自動車工業会の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は17日、関税交渉を担ってきた赤沢亮正経済再生相と面会。自動車関税が引き下げられたことで「自動車産業への壊滅的な影響が回避された」と述べた。一方、15%関税の影響は「決して小さいものではない」とも語った。

  自動車と同部品の8月の米国向け輸出は金額ベースでそれぞれ28.4%減と7.1%減、数量ベースでは9.5%減と1.1%減だった。

マイナス幅縮小

  日本の輸出は全体で0.1%減と4カ月連続のマイナス。アジア向けが1.7%増、欧州連合(EU)向けが5.5%増といずれも2カ月ぶりに増加に転じ、市場予想(2.0%減)より減少幅は小さかった。対中国は0.5%減と6カ月連続のマイナスだった。

  品目別では自動車(7.9%減)、鉄鋼(14.9%減)、自動車部品(12.6%減)が振るわなかった。

  関税による下押し圧力を受けながらも、日本経済は底堅さを示してきた。4-6月期の実質国内総生産(GDP)改定値は速報値から上方修正され、5四半期連続のプラス成長となった。先行き関税の悪影響の顕在化が警戒される中、輸出の回復は日本経済の持続的成長の鍵となる。

  農林中金総合研究所の南武志理事研究員は、米国向けの自動車輸出は弱いが、「数量ベースでの下落は金額ベースより抑えられている。コストをカットして関税に対応しようとしている」と分析。EU向けは伸びているが、ユーロに対する円安で輸出金額が膨らんでいると指摘した。

  8月の輸入は5.2%減(市場予想4.1%減)となり、貿易収支は2425億円の赤字となった。貿易赤字は2カ月連続。ドル・円の平均値は1ドル=147.73円と前年比2.1%の円高だった。

— 取材協力 Yoshiaki Nohara

(自工会会長のコメントなどを追加、対米貿易黒字を中心に再構成しました)

関連記事: