伊勢崎3人死亡事故1年、遺族ら「悲しみも苦しみも何も変わらない」…飲酒運転の被告から謝罪なし
群馬県伊勢崎市の国道17号で、飲酒運転のトラックに衝突された乗用車の家族3人が死亡した事故から、6日で1年となった。事故現場では遺族らが 冥福(めいふく) を祈り、県警は悲惨な事故の再発を防ごうと集中的に取り締まりを実施した。
事故現場を訪れた遺族(6日午後4時11分、群馬県伊勢崎市境上矢島で)=古賀章太郎撮影昨年5月6日の事故では、前橋市樋越町、会社員塚越寛人さん(当時26歳)と長男 湊斗(みなと) ちゃん(同2歳)、塚越さんの父で渋川市赤城町宮田、会社員の正宏さん(同53歳)が亡くなった。
この日は雨の中、塚越さんの妻や母親が現場を訪れた。2人は花を手向け、発生時刻の午後4時15分頃に手を合わせた。涙ぐみながら、供えられたジュースやおもちゃと、トラックが向かってきた方向を見つめた。
事故は大型連休の最終日に発生。トラックが中央分離帯を乗り越え、対向車線の乗用車2台に相次いで衝突し、塚越さんら3人が死亡するなどした。3人は埼玉県のゲームセンターに遊びに行った帰りだった。
湊斗ちゃんの写真を見つめる母親と赤ちゃん(4月25日、前橋市で)=古賀章太郎撮影「今でも、ふとした時に思い出す。悲しみも苦しみも当時から何も変わらない」。先月の取材で妻は、そう声を絞り出した。
事故の2か月後に生まれた赤ちゃんは、はうこともできるようになった。最近は湊斗ちゃんの写真をよく見つめているといい、「お兄ちゃんと認識しているのかも」。成長は心の支えだが、2人に見せたかったという思いもこみ上げる。「パパは絶対溺愛していたと思う。湊斗も優しいから遊んでくれたかな」
トラックを飲酒運転したなどとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われている吉岡町下野田、会社員鈴木吾郎被告(70)から謝罪はない。「幸せな日常を奪われた。一生許せないと思う」と語った。
訴因変更を訴え、その後に適用された「危険運転」を巡っては、適用要件を明確化するため、法制審議会(法相の諮問機関)の部会での議論が3月に始まった。ただ、法律が改正されても「自分は大丈夫と過信する人は事故を起こすのではないか」と不安は残る。「もう誰にも同じ思いをしてほしくない」。事故のない社会を願っている。