[社説]危機感を高め高齢化に克つ日本を
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2026年の日本は世界に例のない高齢化に危機感を高めて向き合う必要がある。人口の6人に1人が医療、介護のニーズが大きい75歳以上の後期高齢者となる。持続可能な「支え方」を見極め、改革を急がねばならない。
75歳以上の人口は25年12月時点で2135万人となり、20年比で263万人増えた。大阪市の人口に近い規模の後期高齢者が過去5年間で増えた計算になる。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると75歳以上人口は27年に2200万人台に乗った後は横ばい圏で推移するが、若年層の減少で総人口に占める割合はしだいに上昇していく。42年には人口の2割を突破する。
国連は65歳以上の人口比が7%を超えた国・地域を高齢化社会、14%超で高齢社会、21%超で超高齢社会と定義している。高齢化率29%の日本はこれらをはるかにしのぎ、「重老齢社会」とも呼ぶべき社会構造になっている。
人口の変化に押しつぶされずに活力ある日本を後世につなぐために、旧来の考え方にとらわれずに社会の再構築を急ぎたい。
最も重要なのは年齢による線引きをやめることだ。高齢者を一律に弱者として扱うのはやめ、能力のある人には社会を支える側に回ってもらう必要がある。
若年層が減る中で弱者を支える力を確保するには、この原則を追求すべきだが、政府や与野党の動きはあまりに鈍い。負担や給付の改革はその典型だ。
介護保険の自己負担には現役並み所得がある人に3割、所得が一定以上の人に2割を求める仕組みがあるが、9割超の人には最も軽い1割負担が適用されている。
2割負担の対象者は介護サービス利用者の約4%と、医療保険の約20%と比べても少ない。対象者を広げる議論は22年度から続いてきたが、高市早苗政権は25年末、結論を26年度に先送りした。先送りは実に4年連続である。
「能力に応じた負担」の考え方を徹底するには、所得だけでなく保有資産を勘案した負担のルールに改めることも必要だ。所得はわずかでも、株式などの資産を多く持つ高齢者は少なくないためだ。
高市政権は窓口負担割合など75歳以上の医療の負担に金融所得を反映するための法案を26年の通常国会に提出する方針だ。だが実現は改正法公布から4、5年後とかなり先になるうえ、あくまで所得ベースなので資産の評価額で勘案する仕組みにはならない。
資産勘案を実現するため、金融所得の反映を待たず、行政がマイナンバーで保有資産を確認できる仕組みづくりを急ぐべきだ。
健康寿命の延びを踏まえた改革も要る。入院医療の受診率は70歳以上の全年齢層で年々低下している。今の高齢者医療制度ができた08年度当時の水準と比べると、高齢者の健康状態は5歳ほど若返っているともいえるのだ。
高齢者の窓口負担が70〜74歳で原則2割、75歳以上で同1割に軽減されているのは医療ニーズの大きさが主な理由だが、健康状態が改善すれば前提は変わる。
2割負担、1割負担の対象年齢を5歳ずつ引き上げたり、すべての年齢で3割負担とし、高額医療には月額上限の設定で対応したりする改革に踏み込むときだ。
高齢者をきちんと支える体制もつくらねばならない。今後は寝たきりなどで手厚いケアが要る高齢者が増える。転倒などで救急車の出動要請も激増しかねない。
人工知能(AI)やセンサー、遠隔診療といったデジタル技術の進歩は目覚ましい。介護職員の処遇改善や外国人の活用など担い手確保の努力も必要だが、労働供給不足が強まる中で限界がある。デジタル化を進め、マンパワー依存から脱却して活路を得たい。
少子化対策もあきらめてはならない。若い世代を結婚や子育てから遠ざける壁は一日も早く壊すべきだ。「夫が働き、妻は家事・育児」という昭和の分業モデルに根ざした制度や慣習は廃止し、共働き共育てがしやすい職場や社会にしなければならない。
海図なき時代に必要なのは変える勇気だ。変化や摩擦を恐れて古いルールや慣習に固執していては人口危機には克(か)てない。改革を断行し、高齢化で日本の後を追う国々の手本となるべきだ。
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