「がんは全員にかかわる」とバイデン氏 あふれる支援の声に感謝
画像提供, X/Joe Biden
アメリカのジョー・バイデン前大統領は19日、前立腺がんの診断を公表後に世界中から支援の声が寄せられたことに感謝し、「がんは私たち全員に影響する」とソーシャルメディアに書いた。バイデン氏の個人事務所は18日、悪性度の高い前立腺がんが骨に転移していると発表していた。
バイデン前大統領はソーシャルメディア「X」に、「がんは私たち全員に影響します。多くの皆さんと同じように、ジルと私は、壊れた場所でこそ自分たちは最も強いのだと学びました。愛情と支援で、私たちを元気にしてくれてありがとう」と書いた。愛猫ウィローを抱いた妻ジル氏と笑顔で寄り添う写真もあわせて投稿した。
バイデン氏の在任中の健康状態に触れた本が近く出版されることから、その内容が取りざたされている最中での、病状公表だった。
ドナルド・トランプ米大統領は、バイデン氏の診断を知りまずは「悲しい」と書いたものの、その後は、バイデン氏のスタッフが以前からバイデン氏の病気を知りながら隠していたのではないかと、証拠も示さずに疑問を口にした。
トランプ氏はホワイトハウスで19日、記者団を前に「ステージ9に到達するには長い時間がかかる。国民がもっと前に知らされなかったことに驚いている」、「ここまで危険な状態になるには、何年もかかるかもしれない」と述べ、「とても残念な気持ちだ。何があったのか、それを突き止めるべきだと思う」と呼びかけた。
ただし、がんが遅い段階で初めて診断されることは、まったくないわけではない。2014年にイギリスで行われた研究によると、イギリスで診断されたがんの46%が、すでに進行中の時期にみつかった。
バイデン氏の個人事務所によると、前大統領は先週、排尿に関する症状があり医師の診察を受けたところ、16日にがんと診断された。がんは悪性度が高く、がん組織の悪性度を検査で調べ点数化した「グリソンスコア」の等級10段階のうち9だという。英研究団体キャンサーリサーチUKによると、がん細胞が急速に転移する可能性があることを示す結果だという。
「悪性度の高い病状ではあるものの、がんはホルモン感受性のある種類なので、効果的な管理が可能になる」と、事務所は説明した。
前大統領の診断を受けて、バラク・オバマ元大統領やカマラ・ハリス前副大統領など大勢が、支援の言葉をバイデン氏に寄せた。
イギリス王室によると、チャールズ国王(76)はバイデン氏に手紙を書き、見舞いの言葉を伝えたという。国王はバイデン氏と何度も対面しており、国王自身も2024年にがんと診断されて以降、治療を受け続けている。
バイデン氏は2024年当時、国王に見舞いのメッセージを送った上で、「(国王の)診断を聞いたばかりで、心配している。できれば、話をするつもりだ」と述べていた。
一方、J・D・ヴァンス副大統領は19日、バイデン氏を「お大事に」といたわるコメントをしたものの、大統領在任中の健康状態について、アメリカ国民がはっきり把握できていたかどうか疑問だと発言した。
「前大統領に職務遂行能力があったのかどうか、私たちは正直に考える必要がある」と副大統領は記者団に述べた。
「(バイデン氏が)適切な健康上の結果を得てほしいと願うこととは切り離して、それが医師のせいだったのか側近のせいだったのか、前大統領がアメリカ国民のために良い仕事ができたとは思えないと認識できる」と、副大統領は話した。
ヴァンス氏はさらに、前大統領本人よりも周りにいた人々のせいだと思うと主張。「子供の遊びの話をしているんじゃない。健康でいてほしいと祈ることはできるが、仕事ができるだけの健康状態でないなら、その仕事をすべきではないと認識する必要がある」と述べた。
バイデン氏の健康状態については、今回の診断発表より先に、すでにアメリカで取りざたされており、側近たちがその状態悪化を隠していたとする20日出版の本の内容がこのところ話題になっていた。
「原罪:バイデン大統領の衰退と隠蔽、そして再出馬という悲惨な選択」という題のその本では、バイデン氏が昨年の資金調達パーティーで、世界的に有名なスター俳優で民主党を熱心に支援してきたジョージ・クルーニー氏がだれか分からなかったという内容が書かれている。また、側近たちがバイデン氏に車いすを使わせるかどうか話し合ったことも、本に含まれている。
現職の米大統領として最高齢だったバイデン氏は昨年7月、健康状態と高齢が不安視される中で、2024年大統領選から撤退を余儀なくされた。
それまで再選を目指していたバイデン氏は、共和党候補だったトランプ氏を相手にしたテレビ討論会で精彩を欠いたことから、民主党内の懸念が高まり、当時のハリス副大統領が民主党候補になった。