AIブームの裏で広がる反発。アメリカでデータセンター嫌いが急増中
今、アメリカではデータセンターの建設ラッシュが続いています。
もちろん、それはアメリカだけの話ではありません。
日本でも各地で新設計画が進んでいます。千葉県での大型開発も話題になりましたし、東京タワー近くという超一等地にデータセンターが建設されると聞いたときは、「そこに建てるの?」と驚いた人も多かったのではないでしょうか。
そして、AIブームの最中とはいっても、データセンター建設については歓迎する声ばかりではありません。
日本でも景観や電力消費、災害リスクなどをめぐって、その賛否は分かれています。
そしてアメリカでは、その反対の声がここ数か月で一気に大きくなっているそうです。
9か月前は賛否半々だったのに、今は7割が反対
気候・エネルギー専門メディアHeatmapが実施した調査によると、自宅近くにデータセンターが建設されることに反対すると答えた人は71%に達しました。
特筆すべきは、その変化のスピードです。
9か月前の調査では、賛成43%、反対42%で意見はほぼ真っ二つでした。それが今では7割以上が反対です。調査レポートによると、世論は9か月で49ポイントも反対側へ動いたといいます。
AIへの期待が高まれば高まるほど、それを動かすデータセンターへの不満は大きくなっていったみたいです。
AIの恩恵よりも、電気代や水不足のほうが切実だった
理由はシンプルです。
データセンターは膨大な電力と水を消費します。
しかも建設地の多くは地方です。住民からは、電気料金の上昇や水不足、騒音、大気汚染への懸念が相次いでいます。最近の研究では、データセンター周辺で気温上昇が確認されたという報告も出ています。
AI企業にとっては未来への投資でも、そこで暮らす人たちにとっては毎月の請求書や生活環境の変化のほうが切実なんです。
それに、調査では若者の反発も目立ちました。18歳から34歳では8割が近隣への新設に反対しています。
その背景には雇用への不安もあります。
というのも、近年、アメリカではAIによる業務効率化を理由に採用を抑えたり、人員削減を進めたりする企業が増えています。特に影響を受けやすいのは新卒や若手人材です。
企業にとっては生産性向上でも、仕事を探す側にとっては話が別です。実際に、AIによってエントリーレベルの業務が自動化されるなか、「社会人になるためのとっかかりとなる仕事がなくなる」といった不安が広がっています。
住環境への懸念だけでなく将来への不安も、データセンターへの反発が高まっていることの背景にあるのです。
反発はすでに政治問題へ
こうした反発を受けて、AI業界も対応を急いでいます。
OpenAIのサム・アルトマンCEOやNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、AIによる大規模な雇用代替に慎重な姿勢を示しています。
Googleも今週、データセンターの水利用について新たな方針を発表しました。2030年までに使用量を上回る水を環境へ還元し、水の利用データも公開するとしています。
ただ、こうした取り組みで世論が変わるかはわかりません。
データセンターへの反発は、すでに政治の世界にも広がっています。各地では新規建設を一時停止する「モラトリアム」を求める動きも。
AIをめぐる議論は、これまで「便利か危険か」が中心でした。
でも、データセンター建設で問題とされているのは、これは少し違います。巨大な建物が建ち、大量の電気を使い、水を消費する。その影響は、地域社会の中に目に見える形で現れます。
AIそのものは便利でも、そのコストはどこかで誰かが負担しています。
電気代なのか、水資源なのか、雇用なのか。
アメリカで広がる反発は、AIへの拒否感というより、そのコストを誰が引き受けるのかという問いなのかもしれません。