トランプ氏が議長を務める「平和評議会」とは 参加国など知っておくべきこと
トランプ米大統領=20日/Nathan Posner/Anadolu/Getty Images
(CNN) トランプ米大統領は、西側諸国を自身が議長を務める「平和評議会」に引き入れようと躍起になっている。これまでのところ支持を取り付けたのは、中東の君主ら、欧州最後の独裁者とされる人物、そして戦争犯罪容疑で指名手配されている少なくとも1人の指導者だ。
トランプ氏は、世界的な紛争の解決を目指すこの評議会に数十カ国を招待したが、その権限は、国連に取って代わる「可能性がある」というトランプ氏の発言とともに、米国の複数の同盟国に警戒感を与えている。
トランプ氏が無期限で議長を務める同評議会は当初、2年におよぶイスラエルとの戦闘で壊滅的な被害を受けたパレスチナ自治区ガザ地区の再建を監督する限定的な機関として構想された。しかしその後、世界中の紛争への対処に目的が拡大。招待状とともに送付された憲章草案はガザに言及すらしていない。
招待された国には、米国と敵対するロシア・中国のほか、長年抑圧的な体制を維持するベラルーシも含まれ、10億ドル(約1600億円)を拠出すると常任メンバーになる。欧州の同盟国や、湾岸諸国、旧ソ連構成国、さらにはローマ教皇までもが招待状を受け取っている。
しかし、スイス・ダボスで世界経済フォーラム年次総会にあわせて行われた設立署名式典に参加したのは、中東・アジア・南米を中心とした20カ国未満だった。これは米政府高官が今週初めに示した約35カ国との予測を大きく下回る。欧州指導者の姿は明らかにみられなかった。西欧諸国の中で参加したのは、欧州内でロシアと特に親密な国の一つであるハンガリーのみだった。
平和評議会とは?
トランプは当初、昨年9月に米国が仲介した20項目からなるガザ停戦計画の第2段階の一環として平和評議会を構想していた。
国連安全保障理事会は11月にこの計画を支持し、国際的な正当性を与え、評議会にはガザの非軍事化と再建を監督する権限が認められた。
しかしトランプには長期的な計画があった。CNNが入手した憲章草案によると、平和評議会は「紛争の影響を受けたり、脅威にさらされたりしている地域」における安定・平和・統治を促進する「国際機関」と定義されている。
トランプ氏は無期限に評議会の議長を務め、大統領2期目以降も留任するとみられる。
平和評議会は、トランプ氏の長女の夫であるクシュナー氏、ルビオ国務長官、ウィトコフ特使、ブレア元英首相らで構成される「創設理事会」の上位に位置する。
クシュナー氏は式典の冒頭で「平和はビジネス取引とは別物だ」と認めた。
しかし、高層ビルや、新しい道路、エネルギーインフラからなる未来像を示した一連のスライドは、別の展望をうかがわせた。
誰が応じたのか?
トランプ氏の招待を受け入れたのは、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、エジプト、カタール、バーレーン、パキスタン、トルコ、ハンガリー、モロッコ、コソボ、アルバニア、ブルガリア、アルゼンチン、パラグアイ。中央アジアのカザフスタン、モンゴル、ウズベキスタン、東南アジアのインドネシア、ベトナムも応じた。
イスラエルのネタニヤフ首相も参加する。ガザ理事会にトルコとカタールの当局者が含まれることに憤り、国際刑事裁判所からは逮捕状が出されているにもかかわらずだ。
米国が昨年仲介した和平合意に署名したアルメニアとアゼルバイジャンも参加に合意した。この合意により、米国は、同地域の重要な輸送路の独占開発権を得ることになった。
ベラルーシのルカシェンコ大統領も参加に合意した。「欧州最後の独裁者」と呼ばれることも多い同氏は、プーチン・ロシア大統領の重要な盟友だ。
トランプ氏は、プーチン氏が参加に合意したと主張。CNNに対して「物議を醸す人々も参加している」と語った。プーチン氏は、米国で凍結されているロシアの資産を10億ドルに充てることを検討しているが、決定についてはまだ確認していない。
トランプ氏が世界的な「ルールに基づく秩序」を破壊し、懲罰的な関税を課す姿勢を再三非難してきたカナダのカーニー首相は、条件付きで参加する意向だ。
誰が辞退したか?
参加・不参加の表明をしていない国もあれば、拒否した国もある。
英国はロシアの関与を懸念し、署名しないと表明した。
フランスとノルウェーは、平和評議会が国連とどのように連携して活動するかについての疑問などを理由として、参加を辞退した。
中国は招待を受けたことを認めたが、参加するかどうかは明らかにしていない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「いかなる評議会だとしてもロシアとともに参加することは考えにくい」と述べた。
イタリアのメローニ首相は参加に憲法上の問題が生じる可能性があると述べ、署名式典への出席を見送った。
懸念点は?
平和評議会は物議を醸している。
外交官や当局者、世界の指導者らは、評議会の拡大された権限や、トランプ氏の無期限の議長職のほか、国連の取り組みにもたらしうる損害について重大な懸念を表明している。
メンバー国の任期は3年で、その後は常任メンバーになるために10億ドルを支払う必要がある。米国当局者は、集められた資金についてガザの再建に充てられると説明しているが、こうした動きは汚職を招きやすいとの批判にさらされている。
トランプ氏はこの評議会が国連に取って代わる「可能性がある」と発言した。この発言は同評議会がトランプ氏にとって、80年前に国際平和を維持すべく設立された国連を凌駕(りょうが)するための手段になるのではないかとの懸念をさらに強めている。