日米関税交渉は延長戦、「認識なお一致せず」と石破首相 トランプ氏と会談

 6月16日午後(日本時間17日)、カナダを訪問中の石破茂首相(写真)は、トランプ米大統領と会談し、日米関税協議についてパッケージとしての合意に至らず、今後の協議加速を両国の関係閣僚に指示することで一致した。同日、アルバータ州カナナスキスで撮影(2025年 ロイター/Amber Bracken)

[16日 ロイター] - カナダを訪問中の石破茂首相は16日午後(日本時間17日)、トランプ米大統領と会談し、焦点だった関税協議について合意に至らなかった。トップバッターとして4月から米国との交渉を始めた日本は担当閣僚同士の延長戦に入り、最も重視する25%の自動車関税など日本企業への負担は続くことになる。

日米両首脳は主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれたカナダ西部カナナスキスで約30分会談。石破首相は「今なお双方の認識が一致していない」と記者団に話し、協議加速を両国の関係閣僚に指示することで一致したことを明らかにした。

石破首相は「パッケージとしての合意に至らなかった」と説明したが、どの点が一致できていないかについては言及を避けた。日米双方の国益を実現するだけでなく、自動車など日本の「国益を守り抜くため、われわれとして努力を重ねるということに尽きる」と話した。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「自動車関税などの完全撤廃を求める日本側と、相互関税のみの協議を主張する米国側で当初から食い違っていた。イスラエル・イランが緊迫化する中でトランプ大統領として対日協議を急ぐ必要性に乏しく、予想通りの展開だ」と語る。

相互関税の一部を90日間停止する措置の期限が7月8日(米東部時間)に迫る中、石破首相は延長について議論が出たかどうかについて回答を控えた。合意時期については、「交渉はパッケージで最後の一瞬まで分からない」とし、「いつまでにと申し上げるのは困難」と語った。

在日米軍の駐留経費負担については議論しなかったという。

トランプ政権は4月から各国に一律10%の関税を課し、さらに国ごとに異なる税率を上乗せする相互関税を導入。その後、7月8日(米東部時間)まで90日間は10%を維持する暫定措置を発表した。また、分野別関税として自動車と同部品に25%、鉄鋼・アルミニウムに一律50%の税率を上乗せした。

日本にとって自動車は全産業の1割を雇用する基幹産業で、輸送用機器全体では国内総生産(GDP)の約3%を占める。野村総研の木内氏は3月、25%の追加関税で日本のGDPが0.2%程度低下すると試算した もっと見る
トヨタ自動車(7203.T), opens new tabは2026年3月期の業績見通しに4、5月分の関税の影響しか織り込んでいないが、それでも営業利益を1800億円下押しするとみている もっと見る 。マツダ(7261.T), opens new tabは関税で合理的な算定が困難として今年度の業績見通しを開示していない もっと見る

松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、「関税のかかる状態が長期化するとなると、業績への悪影響を織り込む局面に入ってくる」とみる。「7月にまとまらなければ先行き、業績予想の下方修正が意識されそうだ」と話す。

日本政府は4月中旬に赤沢亮正経済再生相をワシントンへ派遣。毎週末のように訪米し、事務レベル協議と並行してこれまで6回閣僚交渉を重ねていた。G7サミットで両国首脳が合意することを視野に入れていたが、「五里霧中」(赤沢氏)の状況が続いていた。

(竹本能文 取材協力:平田紀之)

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