「性を買う側も尊厳を害されている」平口法相の発言に波紋。具体的な侵害内容には触れず

「性を買う男性の側も尊厳を害されている」という平口洋法務大臣の発言に、波紋が広がっている。

平口氏は11月26日に行われた衆院法務委員会で、売買春で売る側のみが処罰の対象になっている現在の法律のあり方について、共産党・本村伸子議員に尋ねられた。

現在の売春防止法は、「人としての尊厳を害す」などとして売春を禁じている。

一方、この法律は売る側を処罰の対象としており、買う側に対する罰則は設けられていない。

本村氏は「性売買では、誰の尊厳が害されるのか」と質問。

平口氏は、「(売買春は)それ自身で人間の尊厳を汚し、現在社会に認められている性道徳に著しく違反するものと説明をされており、少なくとも売春をする者の尊厳は害されるものと考えられる」と答えた。

本村氏が、「買われる女性の尊厳が害されているという理解でいいか」と確認すると、平口氏は、「通常は女性だが、相手方の男性も尊厳が害されると考えている」と回答した。

本村氏が「性を買う側の尊厳はどのように害されのか?」と追求すると、平口氏は「性を買う側の方の尊厳も害されるということ」と答えるにとどまり、具体的な内容については言及しなかった。

本村:性売買において誰の尊厳が害されるということなのか、伺いたいと思います。

平口:売春防止法制定時の所管部局担当者によれば、売春をし、またはその相手方となるという行為はそれ自身で人間の尊厳を汚し、現在社会に認められている性道徳に著しく違反するものと説明をされております。少なくとも売春をする者の尊厳は害されるものと考えられます。

本村:今大臣が言われたのは売春が人としての尊厳を害しというのは、買われる女性の尊厳が害されているという理解でよろしいですね?

平口:売春をし、またはその相手方となるという行為は、人間の尊厳を汚すということなんで、通常女性ですけれども、女性だけでなくて相手方の男性の方も尊厳が害されるというふうに考えております。

本村:性を買うものの尊厳が害されると言うことをおっしゃってるんですか?

本村:性を買う側のですね、尊厳はどのように害されるんでしょうか?買う側ですよ、買う側?

平口:性を買う側の方の尊厳も害されるということでございます。

この答弁について、SNSには「買う側の尊厳とはどのようなものなのか」「理解に苦しむ」などの声が投稿されている。

本村氏はこの後の質疑で、尊厳を害されている方である「買われる側」が処罰の対象となっているのはおかしいと思わないかについても質問した。

これに対し、平口氏は、売春を勧誘する行為などを処罰の対象にしているのは「売春の行為そのものの違法性に着目したものというよりも、そうした行為が社会で行われることによる風紀の乱れというようなものに着目したものであり、規制のあり方そのものについては必ずしも不合理なものではないと考えている」と述べた。

日本の売春防止法は売る側を処罰するが、買う側を罰するようにした国もある。

フランスでは2016年に、買う側を罰する「買春禁止法」が成立。売る側は処罰の対象ではなく「被害者」として保護されるようになった

一方日本でも、12歳のタイ国籍の少女が1カ月で60人以上を相手に性的なサービスをさせられる事件などをきっかけに、買う側を処分するための法整備を求める声が高まっている

高市首相は11月11日の衆院予算委員会で、買う側への処罰について、「必要な検討を行うことを(平口)法務大臣に指示する」と答弁した。

本村氏は26日の質疑で、平口氏の発言について「しっかりとした実態調査をして状況を把握していないために、そのようにおっしゃるのだと思う」と述べ、「実態を把握して、個人の尊厳を守る立場で法改正をしてほしい」と求めた。

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