トランクルーム膨張、今後5年で4割増 ビル1棟改装も
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人口減少によって多くの市場で縮小が見込まれる日本。そんな国内にあって右肩上がりで伸び、今後5年で4割以上も成長していく市場がある。それがトランクルームだ。
「トランクルーム市場の成長が続かない理由がない。特に都市部は今後も伸びていく」。市場拡大の追い風を受け、成長を続ける屋内型トランクルーム大手、キュラーズ(東京・品川)のスティーブ・スポーン社長は強気の発言を繰り返す。
キュラーズは、東京都のほか大阪府や愛知県、福岡県といった都市部を中心として計69店舗を展開する。収納ユニット数は4万1000室に上る。
創業は2001年。欧米で広がっていたトランクルーム事業を日本にも展開できないかと、日本で不動産の仕事をしていた創業者の米国人が立ち上げた会社だ。当時、日本でもオフィスビルの一部をトランクルームに改装するというビジネスは始まっていたが、キュラーズはこうした従来型とは少し異なり、ビル1棟を丸ごと購入し、改装するという手法を使ってきた。最近はトランクルームとして新築のビルを建てることもしている。
この結果、キュラーズの1店舗当たりの収納ユニット数は平均で約590室と同業他社と比べて多い。例えば、屋内型の分だけで言えばエリアリンクの「ハローストレージ」は約70室、加瀬倉庫(横浜市)の「加瀬のトランクルーム」も約70室となる。小さな店舗をたくさん出店する戦略ではできないが、規模が大きくなれば常駐スタッフを置いても採算が取りやすくなる。
スポーン社長は「ライバル店では提供できない追加サービスができるようになるし、セールスにもサービスにも対応できるようになる」と自信を見せる。常駐スタッフを置くことによって顧客の荷物の出し入れを代行するサービスなどを提供している。また店舗には無料駐車場を用意しているほか、無料のシャトルバスを出したり荷物を運んだりするサービスも充実させている。
キュラーズによると、23年の屋内外のトランクルームの市場規模は776億円。調査開始の08年から15年連続で伸びており、3倍近くに増加した。今後も成長し、5年後の28年には4割以上増える1112億円になると見込まれている。
背景にあるのは都市部への人口集中と不動産価格や賃料の高騰。国土交通省の統計によると、着工新設住宅の1戸当たり床面積の総平均は10年度から減少傾向だ。22年度は79.8平方メートルとなり、10年前と比べて1割程度狭くなった。さらに不動産情報サイトを運営するアットホーム(東京・大田)によると、例えば、24年9月時点で東京23区の単身向けマンションの平均賃料は9万4279円。22年から上昇基調にあり、15年1月時点と比べて15%以上値上がりした。
こうした中、収納スペースが不十分な狭小物件を選択し、割安なトランクルームを使うという生活スタイルが広がり始めている。ある会社員の40代男性は趣味で予備校のパンフレットを集めており、保管場所としてトランクルームを活用。「家に置き場がなくて困っていた。新たに部屋などを借りるよりは安く済むので助かっている」と話した。
またキュラーズが24年8月に実施したアンケートでは、東京都内の中小企業やスタートアップの34.2%がトランクルームを利用していると回答。19.1%が利用を検討しているとした。データの記録媒体や商品在庫・サンプル、常時使用することはないオフィス用品などを収納するニーズが高いという。
民間調査会社によると、キュラーズの23年12月期決算は売上高105億円。少なくとも直近は5期連続の増収で、右肩上がりの市場の中で拡大を続ける。一方で最終損益は5期連続の赤字になっており、23年12月期は1億6000万円の赤字となった。
キュラーズの石渡義崇最高財務責任者(CFO)は「特別目的会社(SPC)をつくり、店舗の所有と運営を分離するというスキームを使っている。その関係でキュラーズ自体は赤字になっているが、グループ全体で見れば利益は出ている」と説明。スポーン社長も「既存店は稼働率が高く、埋まってしまっている。年5店舗を目安に新規出店していく」との目標を掲げる。
少子高齢化や人口減少などに伴って国内市場が縮小し、多くの国内企業は海外に活路を見いだしている。そうした中でも、スポーン社長は「海外展開は考える必要がない。それをしないで済むだけのチャンスが日本国内にある」とする。数少ない国内の成長市場でチャンスをつかもうと動く。
(日経ビジネス 高城裕太)
[日経ビジネス電子版 2024年11月21日の記事を再構成]
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