性被害を訴えた女性「裁判であれば全て正当化されるのか」。語った捜査と裁判の問題点【復興ボランティア無罪判決】

20代の知人女性に対する不同意性交の罪に問われた復興ボランティア団体代表の男性(50代)の裁判で、前橋地裁は被告に無罪判決を言い渡した
この女性は、警察に相談してから捜査・裁判という一連の刑事手続きで、警察官や検察官、被告の弁護人からの無配慮な言動に苦しんだと話す。
判決前、ハフポスト日本版の取材に応じた女性は、「被害を訴えた人が安心して発言できる環境づくりをしてほしい」と求めた。
被告は、東日本大震災で2人の子どもと両親を亡くした。震災後、復興ボランティア団体を立ち上げ、追悼花火のイベント企画など団体の活動は大手新聞やテレビで報じられた。
2024年7月に群馬県太田市内のビジネスホテルで、ボランティアの一人である知人女性と二人で飲酒中、「ブラ外せ」などと繰り返し言い、性的行為を予想していなかった女性を恐怖・驚がくさせ、同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせて性交したとして、不同意性交の罪で起訴された。
2026年3月2日、前橋地裁の髙橋正幸裁判長は、「女性の証言は信用できず、女性が本件当時、被告人に恐怖・驚がくさせられたことにより被告人と性交をすることに同意しない意思を全うすることが困難な状態にあったと認めるには合理的な疑いが残る」と結論づけ、被告に無罪判決を言い渡した。

「なぜホテルの部屋を出ようとしなかったのですか」「被告人があなたのパンツを下げる時、あなたが腰を上げないと下がらなかったんじゃないですか」

「(事件当時)顔をひっぱたいてやろうとは思いませんでしたか」
被告の弁護人は、女性への反対尋問でこれらの質問を投げかけた。女性は裁判が結審した2025年12月の意見陳述で、弁護人の発言に言及し、「裁判で一番つらかったことは二次被害です」と裁判官たちに向けて述べた。
「性被害の尋問というのはこれほどに下品であり、被告人の防御という名目があれば被害者に何を言っても許されるのか。言葉の暴力で人が亡くなることもあるのに、裁判であれば全て正当化されるのか。様々な不信感でいっぱいでした」
女性は事件以降、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を受けている。「尊厳を取り戻し、前に進みたい」との思いから、被害者参加制度を使って自ら法廷で証言することを決意したという。しかし「証人尋問によって、もう人前に立ちたくない、死にたい気持ちになりました。私の人間性や人格をまるごと否定されたと感じています」と法廷で訴えた。
女性が訴えた捜査・裁判の問題点は、弁護人による法廷での発言だけではない。
群馬県警の相談窓口に電話をかけた際、男性の担当者から投げやりで威圧的な口調で対応され、「正当に扱ってもらえない」と感じて被害届を出すことを諦めそうになったという。
また最初に聴取を担当した検察官からは、好きな男性のタイプや交際歴について聞かれたほか、当時被告から男性器を挿入されたときの角度、感触まで尋ねられたという。女性は、「なぜそうした質問が必要なのかという説明も全くなく、事実確認よりも興味本位で聞かれているのではと感じました」と打ち明ける。
やっとの思いで声を上げたにも関わらず、本来守られるべき司法手続きの場で、再び尊厳を傷つけられる現状がある。
女性は、「被害届を出すまでにもいくつものハードルがありました。そのうえ被害を申告した後にもう一度自分が壊れる経験をしてしまうと、裁判に対しても後ろ向きになりかねません。捜査や裁判に関わる人には、被害を訴えた人が安心して発言できる環境づくりをしてほしいです」と求めた。
大阪地検の元検事正からの性被害を訴えている女性検事
の支援者たちでつくる「女性検事を支援する会」は、性犯罪被害者から見た捜査・裁判の問題点に関するアンケートを実施し、3月2日に結果を公表した
性被害の当事者からは、「(警察官から)『このような被害に遭わないように、日ごろから気をつけなさい。あなたにも落ち度があった』と説教された」「(検察官から)『自分から誘ったのでは?男を漁りに行ったんだろう』等の侮辱的なことを言われた」といった訴えが寄せられた。【取材・執筆=國﨑万智】

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